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【覚醒せし邪神】NWをプレイ!Part1

「っ……!?これは一体……!?」


「これは。どういう……?」


 ある日の昼下がり。

私とCちゃんは私宛にやってきたメッセージに頭を悩ませていた。


 そのメッセージとは以下の通りだ。


『ニャルだ。今週の土曜日、世界標準時で午前三時からNWOの配信をもう一度する予定なのだが……その時はまた一緒にNWOをプレイできるだろうか?

オンラインゲームを一人で遊ぶ、というのも味気ないのでな。良い返事を期待しているぞ』


「……果たし状か何か?」


 明らか、邪神ニャルさんはチャンネル登録者数が既に25万弱はある圧倒的に格上の存在だ。

そんな存在がチャンネル登録者数2000ちょっとしかない私と「配信するから一緒に遊ぼう」と誘うだろうか?いや、誘わない。少なくとも私なら。


 うーんうーんと頭を悩ませる私。そんな時、Cちゃんがポンと手を叩いた。


「あ、分かりました。あの後イーちゃんの動画を見て「こやつ面白いなハハハ」ってなったんじゃないですか?」


「んな馬鹿な」


 確かに私は面白いかもしれない。いやそんな弱気でどうする私は滅茶苦茶面白いぞ。

とにかく、仮にそうして人のことを面白い奴だと思ったとしよう。

だけどCちゃん、ここで一旦相手の立場になってみるよ?

まず第一に、“コラボ”っていう物は基本「人とファンを共有し合う」ことに意味があるの。決して「この人とコラボしたら面白い動画が作れるだろうなー」なんて陽気な、ウキウキな気分で作るものじゃない。これは分かるでしょ?

それにコラボっていうのは下手すると自分のファンがコラボ相手のファンになって自分から離れる、って可能性だってある。登録者2000人ちょいの小物とコラボして、仮に面白い動画ができたとしてもその人の方にファンが流れていったらおしまいじゃん。そう考えれば少なくとも私とコラボするのは結果がプラスマイナスゼロどころかマイナスに傾くかも知れないって思うでしょ?

それに、私は企業が後ろについてるバーチャル美少女でもない。強い企業とコネを作るために今の内から仲良くなっておいて、あわよくばその企業の傘下に入ろうって考えなら分かるけど。


「……じゃあ、散々前回の放送でイーちゃんの痴態を見せたからイーちゃんの方に流れるファンはいないって考えた、という可能性は」


「うんにゃ、それもないと思う。だってそれならコラボする必要ないじゃん。「何てめぇまたこいつと放送してんだよハゲ」って荒れるだけでしょ」


「それもそうですね……」


「まあ考えたって分からないもんはしょうがないか。どの道受けなきゃこのチャンスは消えるし、じゃあ受けるしかないよね!」


 私はその果たし状に返事を送った。


【準備中……】

【準備完了!】


「おはようございます、お兄ちゃん」


『ふぁむ』

『ふぁむふぁむ』

『ふぁむ』


 私は隣に立っているニャルさんに目線を送る。

ニャルさんはそれにアイコンタクトで答えた。


「我が眷属共、待たせたな!邪神ニャルだ」


『うおおおおおおニャル様!!!』

『ニャル様ー!』

『食べてー!』


 ちょっと待って?なんか反応だいぶ違わない?

いや、私の方めっちゃ事務的な反応じゃん。酷くない?


『酷くねぇよノー哲』

『残当』

『しゃーなし』


「は?」


 私は静かにキレた。

あっちょっと!ニャルさんも笑わないでくださいよ!


「まあ、とりあえずエリアボスに挑む為に狩りでもするか。行くぞイドラ!」


 ……凄い。切り替えが早いというか――上手い。……やはり、この辺りの上手さは流石五新星と言うべきか。

私だったらもっとダラダラこの話続けてただろうし。見習わないとなぁ。


「はい!お姉ちゃん!」


「だから私は貴様の姉ではない!」



 *



 そして、楽しく狩りも終えて。私達はエリアボスに挑むことにした。


「……で、どうしてイドラは恋人達を連れてきてるんだ?」


「何かの役に立つかなって思って」


 一応何かに使えるかもしれないと思って、私は恋人達を連れてきていた。なんかトレインみたいになってる。


「いや民間人だぞ?」


「……大丈夫でしょう」


「遠い目をするな」


 ニャルさんは私にそう突っ込みながらも、エリアボスの居る空間へと入っていく。私は特に何もせず付いて行った。


 入った先はちょっとした空間だった。そして私達を待ち受けていた熊がグオオオと吠える。

……熊って吠えるの?


「お姉ちゃん、盾は任せました!」


「任された!」


 ニャルさんがヘイトを稼ぎに前に出る。

私はニャルさんをサポートするためにピクミン戦法を取ることにした。

連れてきた恋人達を熊にたからせる。


 次の瞬間、熊は手を振り回した。何人かのNPCが死んだ。


「ちょっ!?どういうことだイドラ!」


「え?NPCを武器にしただけですけど」


 ニャルさんは絶句する。


「なっ……NPCが可哀想とか思わないのか?」


「?」


 ニャルさんが何を言っているか分からない。ゲームは使えるものをなんでも使って攻略するものだ。

というかさ、ゲームに人情を持ってきたらダメなんですよそもそも。

ゲームはたかがゲーム。NPCはたかがNPC。されどはない。NPCが良いアイテム持ってて殺しても何もデメリットがなかったら殺してアイテムを分捕るですよね?そう思うのは当たり前のことですし。何もおかしくはないです。

確かにこのゲームはちょっとNPCが人間味帯びてるところはありますよ?あるけどさ、でもNPCじゃん。所詮サービス終了したら消える命。結局は電子的なものでは脳は構成できないんですよ。つまり中国語の部屋です。中国語が話せない人間だとしても、統一言語のマニュアルがあれば部屋の向こう側から中国語で話しかけられても中国語で返せますよね?発音とかそういう問題は置いておいて。このゲームのNPCはまるで生きているかのように振舞っています。ですがそこには現象の認識という行為が存在していないんですよ。与えられた入力からビッグデータを使って必要な情報を引き出し、言葉に“性格”という設定された味付けをして出力しているだけ。そこに意識が存在すると思えますか?私は思えない。だから普通のゲームでNPCに対して行ってることを延長しても何も問題はないんです。


『若干哲学っぽいことやめろ』

『どっちかって言うとノー哲の方が邪神で草』

『邪神(聖人)』

『おい、ボス戦しろよ』


 ……っと。今はエリアボス戦だったわ。危ない危ない。


「お姉ちゃん!今のうちに攻撃を!」


「今の長台詞で結構なNPCが死んだがな!」


 ニャルさんは熊に殴りかかった。

私はそれを支援するために攻撃力強化の曲を弾こうとした。だがその時だ。


「……?」


 私は妙な違和感を覚えた。

ここは小さな盆地のようになっている。私は熊から距離を取るために壁を背にするレベルにまで引いたのだが。

……何か。何か妙なものを覚えた。

そうだ。この感触は――某雪ゲーで覚えたものだ。体がガクッとなる感触。テクスチャが一部乱れてる。


 これは間違いない――物理演算が荒ぶる場所!


「うおおおおおおおおお!」


 私は全力でそこに体を擦り付け始めた。

いける。確実にここはバグの温床だ!


「どうしたイドラ!?」


「私、跳べそう!」


 私は体をテクスチャの乱れに、一部ポリゴンが設定されてない部分にめり込ませ、ジャンプして――飛んだ。


 これまで私が居た景色がどんどん小さくなっていく。

すると、上空から多くの現在居る場所と似たようなマップが見えた。なるほど、エリアボスと戦うマップはこの辺にまとめられてるのか。


 そのまま私は熊を目掛けて落下し、熊もろとも私は死んだ。


「イドラー!」


【配信は終了しました】



【覚醒せし邪神】NWをプレイ!Part1【と天使な邪神】

10,198 回視聴


イドラ

チャンネル登録者数 12,355人

 何が悪で何が善か。

 その境界線はあやふやなものである。

 いや、境界線すらないのかもしれない。

 少なくとも、その定義が決まることは未来永劫無いだろう。

 だが、たとえその定義が正しくなくとも自分なりの定義や範囲を持つことは必要だ。

 人格という柱を建てたいのなら、善悪を考えろ。


23 件のコメント▽

 邪神イドラ

  急に上に落ちた時は驚いたぞ!

  だが中々楽しかった。それにしてもよくあんなバグを発見したな……。

  何かコツでもあるのか?また今度教えてくれないか!

 ▲ 358

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