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バーチャル美少女急上昇⤴ #4

 とある日。私とCちゃんはくつろいでいた。


 はー。

あのアスィから聞いた話さ、Cちゃんは本当だと思う?


「なら逆に。アスィが嘘を付くと思う?」


 思わないけどさー。付く意味ないし。

でもあれはないわ。


 言っとくけどさ。陰謀論ってのは一番つまらないものなんですよ。


「そうね」


 Cちゃんはバーチャル空間で髪を弄る。心底どうでもよさげだ。

うんまあ私からしても死ぬほどどうでもいいことだったんだけども。


「で、次の『おはようイドラ』はどうするの?NWはできなさそうだけど」


「いやNWのまま続けるよ?」


「……えっ?」


 Cちゃんは髪を弄る手を止める。

まあNWがその内デスゲーム化するとかそういうのじゃなかったし。そりゃ被る不利益はあるけど、NWバブルがバーチャル美少女界に訪れているというのにNWを配信できなくなるってのはかなり痛い。


「いや、そのことが本当ならあのゲームは危険。やめてイーちゃん」


「どうなろうと深層Web産のゲームやった時よりは酷くなりませんよ。無問題モーマンタイ


「……はぁ」


 Cちゃんはこれ以上は何を言っても無駄か、そう察してそっぽを向いた。

ごめんねCちゃん。心配してくれるのはありがたいんだけど、自分の身より人気が欲しいの私は。それに、人気にならなきゃCちゃんを人気にすることもできないし。


「……あぁ、マイさんとの動画上がってたよ」


「ほんと!?見ましょ見ましょ」


 私はバーチャル空間でCちゃんに寄りかかり、肩に手を回す。

離れようとするCちゃんを離れられないようにしながら、二人で見ることのできる大きさのウィンドウを投影した。

目線を私とは反対方向にやるCちゃん。だが表情は満更でもなさげだった。


「ほら見ますよー!」


「うぅ……」


 私達は先生のチャンネルから新着動画のサムネに触れた。


【       】

【   ▷   】

【       】


「おーっはよーございます!MutationなAI(エー・アイ)MAI(マイ)です!」


 マイさんことバーチャル美少女界の先生が真っ白な空間でこちらに向かって手を振る。

マイさんはバーチャル美少女初期組の中の初期……つまり特殊な例を除けば一番最初にバーチャル美少女をしていた人だ。いやAIか。AIって設定らしいし。

その為マイさんは尊敬の意を込めて他のバーチャル美少女から先生と呼ばれている。まあマイさんの人格者ぶりからそう呼ばれた、ってのもあるんだけど。


 そしてこの動画を再生しているということは、なんと私がそんなマイさんの動画に出演できたということを意味している。

まあ端役だけどね。


「さあ、今回もバーチャル美少女を紹介しますよー!」


 さて、タイトルからもう分かるだろうが先生のこの動画はバーチャル美少女の中でチャンネル登録者数が急上昇した、もしくはしそうなバーチャル美少女を紹介する動画だ。二ヶ月くらい前にバーチャル美少女ブームを受けて単発動画として作られた動画だが、人気が出たのでシリーズ化したらしい。


「今回の人気が急上昇しているorしそうなバーチャル美少女はこちら!」


 真っ白な空間に一枚の紙が投影される。

その中の“急上昇中”と書かれた側の方に私の名前があった。

へっ。ピックアップ枠かと思ったでしょ。残念本当に人気が急上昇してるんだなこれが。


 すぐさまCちゃんから「いや私はそう思ってないけど」との突っ込みを頂いた。


「じゃあ早速呼んじゃいますね!まず最初は――」


 この動画は完全にバーチャル美少女の紹介に特化している。

まああれだ。徹子の部屋みたいな感じ。いやちょっと違うか?


 私はとりあえずシークバーを私が登場する辺りの時間までかっ飛ばした。

いやまあ別に他のバーチャル美少女を見てもいいんだけどね。でも知らないバーチャル美少女をずっと見せられてもさ、反応に困るじゃん。

Cちゃんは「別に私は困りませんが」とか言ってるけども。


「――という訳で神々廻文かがまえふみちゃんでした!ありがとね~」


「はい。ありがとうございました」


 私の前に紹介されていたバーチャル美少女が白い空間から退出していく。

次が私の番だ。編集等は先生に全て任せたので、一体あのコラボがどう調理されたのかは今の私には全く分からない。やばい、ドキドキしてきたぞ……。


 一度VR空間上のセットが元の状態に戻される。質素なテーブルが中央にあって、それを挟む形で先生の椅子とゲストが座る椅子がある。というか前の人のセット樹海だったんだけど。何があったんだよ。


「それでは次、哲学系バーチャル美少女のイドラちゃん!どうぞ~」


「お兄ちゃん想う、故に私有り。こ、こんにちはー。イドラです」


 私がなんか普通な感じでVR空間に現れる。

うわやっば。こいつめっちゃ緊張してるじゃん。誰だよ。


「緊張しなくてもいいよー、ほら座って」


 私はマイさんに促されてゲストが座る椅子に座る。

ちなみに、弁明しておくと先生はチャンネル登録者数1000万人を越えている化物――いや物凄い人なのだ。その人の動画に出られる、というのは光栄以外の何者でもない。それに失言したら視聴者達から何言われるか分かんないし。いやそういう発言は先生が編集で無かったことにしてくれてるだろうけど。


「それじゃあこの子を紹介するね!」


「はい!」


 いやさ。そこははいじゃないよね。もっと面白いこと言えや。


 だが既に過ぎ去ってしまった過去を変えることはできない。そのまま画面の半分以上を占める形でスクリーンが現れ、そこに私の投稿してきた動画や生配信が写された。

残った下側の空間に私に関する情報やリスナーのSwitterの投稿等が表示されている。


 軽くそれらを流された後、動画を投影していたスクリーンは縮小して右上の方でワイプとして表示されるだけになった。

そしてここからが問題のトークだ。ほんと変なことは言うなよ私……!いや台本はあったけどさぁ。


「イドラちゃんは最近話題になり始めたバーチャル美少女なんです!ニャルちゃんとピニョちゃん、アスィちゃんとの四人ユニット――『機邪合哲』が凄い人気になったんですよね!」


 ――!ここからだ。正直この収録を行った時の私の記憶はない。緊張しすぎてたからだ。

貰った台本を読む限りこのタイミングで私の自由台詞ゾーンだが、果たして……。


「ええそれはもう。朝起きてBinitubeの私のチャンネル見たら動画の再生回数が阿呆みたいに増えてる上にチャンネル登録者数も滅茶苦茶増えてましたからね。驚き桃の木山椒の木ですよマジで。きっと私の動画がここまで人気になれたのも、ニャルさんピニョさんアスィさんCちゃん支えてくださった皆さんのおかげだと思ってます。あそれで、この動画で人気が出たおかげでこれまでに投稿してきた動画も日の目を浴びた――というよりはより多くの人から見られるようになって。それで他の動画もグンと再生数が伸びたんですよね。まあプレッシャーにもなるっちゃなるんですがそれでも嬉しかったことには変わりないです。特に命賭けて収録した動画がきっちり伸びてくれたのは本当に良かったです」


 馬鹿っ……!喋りすぎだボケ……!

命賭けて収録した動画の情報とか誰も要らんわ!


「へぇ……命賭けて収録した動画、ですか。気になりますね。どんな動画で?」


 先生ナイスセーブ!お前ほんとさぁ……。先生が拾ってくれなかったらどうなるか分からなかったんやぞお前。ちょっとは話す内容考えろよホントに。


「あの、少し前に話題になったSaddish Satanっていう深層Webで見つかったゲームあるじゃないですか。あれのオリジナル版を生配信したんですよ」


「オリジナル版を!それは凄かったですね……!」


「ええほんとに。文字通り死にかけましたから」


 どこも面白くねーよその洒落!

文字のインタビューだったらその後に一同:(笑)とか付けられるやつじゃん!


「なるほどー。ところで、イドラちゃんはよくファンの人から“ノー哲”って言われてるけど、これはなんでなの?」


「あーそれはですね。私が哲学系バーチャル美少女を名乗ってる割に放送に哲学要素が全くないからです。No哲学略してノー哲ですね。いや結構私は由々しき事態だと思ってるんですけど、ファンの方々にはなんか“哲学要素のない哲学系バーチャル美少女”っていう風に受け入れてもらって」


 そうそうその程度でいいんだよその程度で。

ちなみに私は配信の時に哲学ネタを挟める時でも結構自重している時がある。

それは哲学ネタを入れすぎるとリスナーがついて行けなくなる恐れがあるのと、『全く哲学の話しないけど振られたらそれっぽい話のできる変な奴』っていう風に見られている今のキャラを丁度良いと感じているからだ。

とと。そんな閑話はどうでも良いとして。


「そうだったんだね!でもそれ……大丈夫なのかな?」


「大丈夫ですよ」


 うわこいつめっちゃ食い気味に行くな。もっと先生の話大事にしろよ。

字幕に“(即答)”って付け足されてたから良いけどさー。相手が先生じゃなかったらどうなっていたことやら。


「それじゃあイドラちゃん、最後に何か言いたいことがあったらどうぞ!」


 ふぅー。

ようやくトークタイムが終わりにまで近づいてきた。

Cちゃんが「短くない?」とか言ってるけど、これは一度の動画で多数のバーチャル美少女を紹介しなければいけないために仕方のないことだ。

だって1バーチャル美少女辺り取れる時間1分30秒くらいだよ?

紹介してくれるだけでもありがたいって思わなきゃ。


 ……っと。そういえば最後に何か言える時間か今は。

頼むから変なことは言わないでくれよ……!


「えと……私はバーチャル美少女個人勢なんですが、実は私には私をサポートしてくれる友人Cっていう子がいて。まあちょくちょく配信に登場するから私を知ってる人の内半分くらいは知ってるとは思うんですが。そのCちゃんが最近遂にKwitterにデビューしたんですよ!まだ配信で触れてすらいないのであんまりフォロワーもつぶやきも少ないんですけど、良かったらこの機会に是非フォローしてください!というか私をフォローするより先にCちゃんをフォローしてください!ほんと私よりも含蓄があって面白い人なんで。ちなみに今の私の3Dモデルを作ってくれたのもCちゃんなんです!Cちゃんってトークが面白い上にモデルも作れて動画の編集もできちゃうっていう技術力もある物凄い人なんですよ!正直なんでCちゃんが独立してデビューしないのか不思議なくらいで。絶対私のサポート役、っていう地位に居ちゃってる――というか居させちゃってる?せいで燻ってる人だと思うんです!ですので、あの皆さんで是非是非Cちゃんを応援してあげてください!お願いします本当に!えっと名前はそのまま友人Cしーちゃん、IDは@Cchang_UGC。そして実は私Cちゃん単独の生配信もしくは誰かとのコラボっていうのを考えてて!その内Cちゃん自身の口から何か発表があると思うのでよろしくお願いします!」


 ……おおう。かなり予想と外れてたわ。

まじかー。そういうこと言っちゃってたかー。

ねぇCちゃん。……あれ?おーい、Cちゃーん?

ダメだ。Cちゃんが完全に機能停止してやがる。顔真っ赤っかだし。


「――はい、以上イドラちゃんでした。本人はあんまり触れてなかったけど、あの長広舌ちょうこうぜつも魅力の一つだよね!」


 オップス。やべぇ、私の長広舌について言われちゃってる。ほらー、緊張しすぎて喋りすぎなんだよお前ほんと。先生にも言われてんぞ。反省しろ反省!


「それじゃあ次のバーチャル美少女は――」


 ……。

というか。

尺完全に無視して喋ってたな、私。

そしてマイ先生はそれに合わせて動画時間を長くしてくれてたみたいだな。

…………私のコーナーだけ何故か2分近くあるじゃん。やべぇ。



バーチャル美少女急上昇⤴ #4

2,178,531 回視聴


MAI.Ch.

チャンネル登録者数 10,133,588人

 おーっはよーございます!マイです!

 今日も8人の急上昇したorしそうなバーチャル美少女を紹介しちゃいます!

 皆、急なオファーに承諾してくれてありがとね!


 前:https://www.binitube.com/watch?v=4Fg89DkInm

 次:まだだよ!


 今日紹介しちゃう8人とそのチャンネルはこちら!


 ☆急上昇中☆

 バーチャルメイド ♪マドレーヌ♪

 https://www.binitube.com/channel/UDBWcNf6WGghPfAbAehdJL4u


 神々かがまえ ふみ

 https://www.binitube.com/channel/UDMjQ_gTeEFw87MDXUWdV3y


 哲学系バーチャル美少女イドラ

 https://www.binitube.com/channel/UDS8WchnYKfXYAY_jmxQe_4P


 ツクモミカ

 https://www.binitube.com/channel/UDGedGaNV3J6Zmb_Ehh_jTF5



 ☆急上昇しそう☆

 不死原ふじわら 火鳥かとり

 https://www.binitube.com/channel/UD3CnMNriJxJP387dEaJjwSd


 旅。

 https://www.binitube.com/channel/UDKz4cdwXLcGHUCnbDTzEnQ6


 ふわわゆゆゆ

 https://www.binitube.com/channel/UDP_meC54FPcjTuyAYbtzkxu


 翠玉すいぎょく 瑪瑙めのう

 https://www.binitube.com/channel/UDMWs4QeFZVJuRSQDZxSnznc


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