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第六十六話 一時の幸せ(エルヴィス視点)

ブックマークや評価、感想をありがとうございます。


今回は、ざまぁの手前までのお話です。


物足りないかもしれませんが、とりあえずどうぞ!

 父上が病に倒れたこと、今日から自分が父の代わりに政治を取り仕切ること、かつて、父上が『絶対者』を生死にかかわらず捕縛するよう告げた内容を撤回し、『絶対者』に父上の病気を治してほしいことを国民の前で告げてから、一月が経った。

 ホーリーを牢屋から出し、妃として迎え入れることを貴族達の前で発表してからも一月だ。今は、私の取り巻きであり、学園時代のホーリーの友人でもあった宰相子息と兵団長子息、ジスト公爵家子息とともに、体調を崩したホーリーを見舞いに行っていた。



「ホーリー、大丈夫か?」


「エルヴィス様、に、リオン様、ロッシュ様、ダルト様?」



 そうそうたる顔ぶれを前に、ホーリーはその愛らしい顔を困惑に歪ませたが、すぐに『大丈夫です』と答えてくれる。



「そろそろ医師が来る。何かほしいものはないか?」


「いえ、その……今は、匂いで気分が悪くなるみたいで、あまりほしいものはないです」



 その答えに、花束を持ってきていた宰相子息、リオンと兵団長子息、ロッシュが眉をハの字にする。



「そうでしたか。では、香りの強い花もダメですね」


「えっと、すみません」


「果物を持ってきたんだが……無理か?」


「果物なら、食べられそうです」



 落ち込むリオンと顔を輝かせるロッシュ。



「僕は、可愛いぬいぐるみを持ってきました。これなら、大丈夫ですよね?」


「はい、ありがとうございます」



 ただ、最初に受け取った贈り物は、ダルトの持ってきたクマのぬいぐるみだった。ぬいぐるみはそこそこ大きく、ホーリーが抱き締められるほどもある。



「失礼します。医師の方がいらっしゃいました」


「通せ」



 まだ、ろくに話してもいなかったが、まずはホーリーの状態を診てもらうことが優先だ。医師がホーリーにいくつか質問をしている間、私達は全員がやきもきする。



「ふぅむ、なるほど」


「ホーリーは、大丈夫なのか?」



 そう問いかけてみれば、医師はホーリーが苦しんでいるというのに笑顔を見せる。



「おめでとうございます。妊娠ですよ」


「っ!?」



 その言葉に、私は思わず呆然とする。



「おめでとうございます。エルヴィス様」


「おめでとうございますっ」


「おめでとうございます」



 リオン、ロッシュ、ダルトから祝いの言葉をもらって、私は初めて、その事実を理解し始める。



「エルヴィス様?」


「あぁ、私達の子だ。良かった。良くやった。ホーリー」


「はいっ。男の子ですかね? それとも、女の子?」


「どちらにしても、可愛い子供であることに間違いない」



 喜びに溢れていた私は、直後慌ただしい廊下を誰かが駆ける音に振り向くことになる。



「国王陛下の容態が悪化しました! どうぞ、こちらへっ!」



 そこに来ていたのは、宰相。そして、報告された言葉は、待ちに待った父上の容態悪化の報告。一月もの間、父上は夢でうなされながら、毎日をどうにか生き長らえてきたものの、とうとう、その日がやってきたらしい。長くはないと宣告されておきながら、ここまで待たされたことにはヒヤヒヤしたものの、『絶対者』なる冒険者が見つかることもなく、全てが終わろうとしている。



「分かった。すぐに向かう」



 父上が死ねば、正真正銘、私は国王となり、この国で思う存分ホーリーを愛せる。税もさらに重くすることが可能となるし、そうなれば、もっと贅沢ができる。

 ホーリーや他の面々にはこの場に残って休んでおくように告げて、私は早足で父上の元へと向かう。



「父上の状態は?」



 ホーリーを診たのとは別の医師が父上の側に控える中、私はまず、それを問いかける。



「呼吸が乱れておいでです。最近は食も細く、体力もない状態でしたので……今夜辺りには……」


「そうか……」



 夢でも見ているのか、父上は寝言で『レイア』という名前を何度も呼ぶ。



(確か、リリスの実の母親だったか?)



 彼女と父上の関係は知らない。しかし、もしかしたら、二人に何かしらの関係があったからこそ、私はリリスの婚約者にされたのかもしれなかった。



(忌々しい。しかし、リリスはさすがにどこかでのたれ死んだのだろうな。ここまで報告が来ないとなれば、そうでなければおかしい)



 自分の婚約者として、まるで相応しくなかったリリスを思い出し、私は顔を歪める。と、それを宰相は、苦しむ父上の様子を見てのものだと思ったらしく、この部屋から離れる提案をしてくる。



「いや、このままここに居る」



 そうして私は、父上が息を引き取るその時まで、ずっと傍らで待ち続けた。ようやく、私の時代が来るのだと心を浮き立たせながら待って、その瞬間がやってきた時には、頬が緩みそうになるのを抑える必要があるほどだった。


 こうして、私は、名実ともにレイリン王国国王となり……後に、愚王として名を馳せることとなる。

明日はいよいよ、エルヴィス達への復讐です。


それでは、また!

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