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第四十二話 ユーカ様

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、チラッとだけ、前作のヒロイン、夕夏ちゃんが登場します。


未来の話では、夕夏ちゃんとの女子会を予定してはいるんですが、今日のところはまだ話もしない状態です。


それでは、どうぞ!

(何で、ルティアスが格好いいと思ってしまったのかしら?)



 わたくしを守ると言ったルティアスの目に、なぜか心臓がドクリと鳴ったのを感じたわたくしは、溢れんばかりの歓喜に見舞われた。

 守ることはあっても、守ってもらうことなどないと悟っていたわたくしは、きっと、ルティアスの言葉が嬉しかったのだと遅れて気づくとともに、いつもの素直じゃない言葉でルティアスを追い出してしまい、少しだけ後悔する。



(すみません、ルティアス)



 内心、ルティアスに謝罪をしながら待っていると、ルティアスはあっという間に不審者を無力化し、警備をしている者にその人物を預けていた。

 そうこうしているうちに、パレードの馬車が、わたくしの前の方まで差し掛かる。



(あっ……)



 馬車の中に見えたのは、二人の魔族男性と、その二人に守られるようにして微笑む黒髪の少女。その顔立ちは、明らかに日本人のそれで、わたくしはあまりの懐かしさに、一歩踏み出そうとして、すんでのところで留まる。



(本当に、日本人である確証はありませんわ)



 自分が転生したのだから、もしかしたら日本人が転移してくることもあるのかもしれない。そうは思っていても、確証までは持てない。



(……接点があれば、話を聞くこともできますが……無理ですわね)



 相手は、このヴァイラン魔国の王族。対して、わたくしは他国の追放された貴族令嬢。どう考えても、接点などないし、会えたとしても言葉を交わすことはできそうにない。



(諦めるしか、ありませんわね)



 そんなことを考えていると、一仕事終えたルティアスがこちらへと戻ってきていた。



「お待たせ、リリスさん。パレードは見れた?」


「えぇ、おかげさまで」



 言いながら、どうしても先程の少女のことが気になってしまう。



「その、どうだった?」


「何がですの?」



 少し上の空だったわたくしは、そんな要領をえないルティアスの問いかけに、問いを返す。



「いや、その……陛下方は、女性に結構人気があるから……」


「……そういえば、あのお二人が魔王陛下なのでしたわね」



 チラリと見えた二人の魔族。翡翠色の髪の魔族と灰色の髪の魔族が居たことは分かっているが、正直、黒髪の少女の方にすっかり気をとられて、よく見てはいない。



「残念ながら、そのお二人の顔は見ていませんわ。黒髪の少女は見えましたが」


「あ、あぁ、そっか。ユーカ様を見たんだね。ユーカ様、あれでも十八歳らしいよ」



 どこか安心したような表情になったルティアスに、ユーカ様の年齢を教えられ、わたくしは素直に驚く。



「そうですの?」



 てっきり、わたくしと同じくらいの年齢か、それより下かと思っていたものの、まさかの二つ年上であるという事実に、やはり日本人は童顔なのだと思ってしまう。



「その、可愛らしい方、ですわね」


「そうだね。それに、とてもお優しい方だよ」



 優しい表情でそう言ったルティアスに、なぜかわたくしはモヤッとする。ただ、それはきっと、その言葉に引っ掛かりがあったからだろう。



「ルティアスは、ユーカ様と話したことがありますの?」


「うん、僕は、ユーカ様を守る専属護衛でもあるからね」



 そんな言葉に、さらにモヤモヤが大きくなるものの、それを気のせいだと思い込み、わたくしは続けて問いかける。



「では、ルティアスはユーカ様と仲が良いんですの?」


「うん、そうだね。でも、僕としてはリリスさんとこそ、もっと仲良くなりたいんだけどね」



 そう言われると、途端に今までのモヤモヤが消え失せる。



(何だったのかしら?)



 疑問に思いながらも、わたくしは、もしかしたらユーカ様が日本人であるかどうかの確証が得られるかもしれないと希望を持つ。



「ユーカ様の顔立ちは、随分と珍しいもののように思えましたが、出身はどこなのでしょうか?」


「うーん、ごめんね。それは教えられないんだ」


「そう、ですの」




ユーカ様の髪の色は、この世界にないわけではない。ただ、黒は不吉な色とされ、人間の国では迫害の対象とされている。そのため、髪の色を話題に出すのは不味いと判断して顔の造詣に注目した問いかけをしたのだけれど、どうやら、言えないことであるらしい。



「それじゃあ、またお祭りを楽しもうか。花火までは時間があるし、まだ色々と食べたいでしょう?」


「そう、ですわね」



 知りたいことを知れなかった落胆はあるものの、今はお祭りを楽しむべきだろう。



「次は、チョコバナナに挑戦しますわ」


「う、うん、分かったよ」



 なぜか顔を赤くしたルティアスを疑問に思いながらも、わたくしは、意識を切り替えてお祭りに集中するのだった。

次回は、花火を見て、平和に……平和に終わるはず?


それでは、また!

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