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第二十七話 ヴァイラン魔国に戻って(ルティアス視点)

ブックマークや感想をありがとうございます。


今回は、ライナードがちょろっと出てきますよ。


それでは、どうぞ!

 リリスさんに頼られた。それが、その事実があまりにも嬉しくて、僕は超特急でヴァイラン魔国へと戻っていた。リリスさんから結界魔法と、時間停止を付与した亜空間に繋がる鞄と、かなりの大金を預かった僕は、五日の時をかけて、ようやくヴァイラン魔国へと辿り着く。



「やっと、着いた……」



 寝る間も惜しんで、魔法で身体強化をした状態で走り続けてきた僕は、ヴァイラン魔国へ入国した後、足がガクガクするのを我慢してどうにか進む。目的地は、市場だ。

 木造建築の暖かな雰囲気の建物が並ぶ中、僕はそこに、カラフルな布が飾られていることに気づく。



「……そういえば、そろそろ陛下の生誕祭だったっけ……」



 ヴァイラン魔国魔王陛下の生誕祭では、こうやってカラフルな布を家に飾る風習がある。元々は、ナギ・アキモトという名の初代魔王の片翼が、初代魔王の誕生日に、パッチワークで作ったテーブルクロスをプレゼントしたことから始まったと言われている。なぜ、テーブルクロスだったのかは不明だが、そこから、ヴァイラン魔国では魔王の生誕祭に布を飾るようになったそうだ。もちろん、そのほとんどはパッチワークで綺麗な柄のものが多い。



「これは、市場は混雑してるかな?」



 生誕祭は、文字通り祭りだ。普段以上に人通りが多いのは諦めるしかなさそうだった。


 足はもう、棒のような状態ではあったものの、とにかく僕は市場へと向かう。そして、味噌、醤油、みりん、料理酒、鰹節、昆布、米、ネギ、生姜、じゃがいも、にんじん、たまねぎ等々、とにかく色々な食材を買い漁る。

 ここ、ヴァイラン魔国では、片翼のためにいつでも好物を作れるようにしたいからという理由で、年中、どんな作物でも収穫できるようになっている。何でも、温度や湿度を管理できる魔法具が開発されたらしい。

 だから、旬の季節だとかを関係なしに、様々な食材を買い漁る。もちろん、旬のものはより多く買っておくことにするが……。



「マツタケ、シイタケ、シメジ、エリンギ、エノキダケ、ポルチーニダケ、ワライダケ、ヒトヨダケ……は、何で売ってるんだ?」


「ヒッヒッヒッ、ここは、薬師御用達のお店だよ」



 ポルチーニダケまでは良かった。しかし、ざっと見た限り、どちらかというと、ここには毒キノコ類が多いという事実に気づいて声に出すと、目の前の老女が不気味な笑い声を上げながら、真っ赤な目を爛々とさせて、ニヤリと笑う。



「しっ、失礼しましたっ!」



 どうやら場所を間違えたらしい。キノコが見えたから、キノコを売っている市だと思って見ていたものの、よくよく考えれば、この辺りは匂いも独特だ。ここでは、万が一があってはいけないため、とりあえず何も買わずに退散する。どうやら僕は、相当に疲れているらしい。



「ぬ? ルティアス? なぜここに居る?」


「あっ、ライナード」



 先程の店から少し離れると、僕は自分の同僚であり、失翼同士として慰めあっていた仲間に出会う。

 失翼というのは、魔族の中で稀に現れる、一生の間に一度も片翼と出会えない者のことだ。大体、四百歳を過ぎても片翼が見つからないとなれば、失翼だと言われるようになる。もちろん、四百歳を過ぎて見つかることもあるものの、それは本当に稀だ。僕は、そんな稀な現象を引き起こしたというわけだ。

 翡翠の髪にルビーの瞳、翡翠の角を持つちょっと強面の彼とは、そういえばリリスさんのところに行く前にちょっと会っただけで、その時もまともに話していなかったということを思い出す。



「片翼休暇中ではなかったか? 何かあったか? 力になれることはあるか?」



 普段、言葉の少ないライナードが、真剣な面持ちで自分を心配してくれるという事実に、僕は、自分がリリスさんという片翼を見つけて、浮かれていたことが少し恥ずかしくなる。僕だったら、まだ片翼が見つからない中、同じ失翼だと思っていたライナードに片翼が見つかって、冷静でいられるかと聞かれると、ちょっと自信がない。



「だ、大丈夫だよ。僕の片翼が、僕の料理を気に入ってくれてね。材料の調達のためにここに来たんだ」


「そうか……何事もなく、良かった。しかし、随分と疲れているようだが……?」


「えーっと、魔の森から、身体強化だけで五日間ほぼ走り続けて来たから、かなぁ?」



 そう言えば、僕より身長の高いライナードは、僕の首根っこをむんずと掴む。



「ラ、ライナード?」


「お前は休んでろ」



 そう言って、僕が持っていた買い物リストを取り上げたライナードは、それをじっと見た後、一つ頷く。



「買ってきてやる」


「えっ? いや、でも」


「もちろん、金は出せ。お前はしばらく休んで……ユーカ様に転移してもらえるよう頼んでおけ」



 ユーカ様に頼みに行くのは、すぐに済むことで、時間がかかるのはこの買い物だ。ライナードは、僕の体を気遣って、負担の大きい買い物を代わってくれるというのだろう。


 実を言うと、リリスさんに言った最短で五日というのは、ユーカ様に転移の協力を頼めた場合のことを指している。もちろん、ユーカ様は僕の主であるヴァイラン魔国魔王陛下の片翼であらせられるため、こんなことを頼みに行くのは気が引けるし、下手をすれば減給くらいの罰は受けかねない。しかし、リリスさんに早く会いたいのも事実で、直談判をしないという手はなかった。



「でも、仕事中じゃ……」


「休暇中だ。だから、お前はさっさと城に行け。それとも、運んだ方が良いのだろうか?」


「い、いや、城に行くよっ! 自分でっ! その……ありがとう。ライナード」


「うむ」



 ライナードの優しさに胸が熱くなりながら、僕は、リリスさんと結ばれたら、絶対にライナードに恩返しをしようと決意するのだった。

いやぁ、ライナード、男前ですね。


そして、とっても優しい。


彼は、次回作のヒーロー予定だったりします。


それでは、また!

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