第二十話 ちょっと積極的に(ルティアス視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回、ルティアス視点でお送りして参ります。
えぇ、タイトル通りにルティアスが行動します。
それでは、どうぞ!
肉や骨の回収を終えた頃には、太陽はすでに真上に昇っていた。どうやら、何時間かはここで作業を続けていたらしい。
「不要なものは売り払って、どこかで軽く食べますか?」
「うん、そうだね。さすがにお腹が空いたよ」
リリスさんの提案にうなずいた僕は、出していた解体道具をさっさと片付けて、リリスさんの元まで行く。
「そうだ、リリスさん、ちょっとじっとしてて」
「? はい」
そこで、僕は少し前のことを思い出して、フードを被ろうとしていたリリスさんを留める。
「ちゃんと消毒しとかないとねっ」
そう言って、僕は、リリスさんの頬に一つ、口づけを落とす。
「なっ、なななっ」
「さっ、それじゃあ、行こう」
ポンッと真っ赤になったリリスさんに満足しながら、僕はリリスさんにフードを被せて、手を繋ぐ。
……一生懸命スマートに振る舞ってはいるものの、内心はもう、ドッキドキのバックバクだ。
「~~~~っ、で、では、街まで戻りますわよっ。転移」
しばらく、僕の手を振り払おうとしていたリリスさんだったが、しっかり掴んで離さない僕に、リリスさんは諦めて転移してくれる。次の瞬間、僕達は、ドラグニル竜国の街に戻っていた。
「……屋台とレストランと、どちらが良いですか?」
「うーん、リリスさんのお勧めは?」
「それならば、屋台ですわね。あちらの方に屋台村と呼ばれる屋台が密集した場所がありますが、どれもこれも美味しいですわよ。もちろん、ハズレもありますが」
「なら、そこに行こう」
どうにか冷静を装っているらしいリリスさんに合わせて受け答えをすれば、リリスさんはそっと腕の力を抜く。
(でも、リリスさん? そっちは反対方向じゃないかな?)
自分で指し示したのとは反対の方向に向かおうとするリリスさんは、きっと、かなり混乱している。
さすがに途中で自分が間違った方向に進んでいることに気づいたリリスさんは、無言のまま、方向転換をして屋台村へと向かうのだった。
屋台村に着いた僕達は、良い匂いに誘われるままに、クラーケンのハサミ焼きや、ボアの串焼きなどを食べていると、あっという間にお腹が膨れる。バーサークピッグの肉や骨、牙などを換金してもらうために寄った冒険者ギルドでは、査定に時間がかかると言われ、ならば、その間に竜珠殿の結界を張ってしまおうという話になる。
「そろそろ行くぞ」
「うん、そうだね。また、デートしようね」
口調をぶっきらぼうなものへと変えたリリスさんの言葉にそう返せば、リリスさんは何もない場所でつまづきそうになる。
「っと、危ないよ」
「お、お前の、せいだっ」
フードで顔が見えないのが残念で仕方がない。きっと、今のリリスさんは、とんでもなく可愛い表情のはずだ。かくいう僕も、こんなに強気な態度でリリスさんへ接したことがなかったため、これが許される範囲なのか、不安は大いにある。
「僕、何かしちゃった?」
本当は、『デート』という言葉に反応したのだろうが、敢えて、それが分からないフリをしてごまかす。すると、リリスさんはプイッとそっぽを向いた。
「い、行くぞっ!」
「うんっ」
先ほどの口づけの後の反応といい、今といい、どうやら僕は、リリスさんに異性として意識してもらっているらしい。そのことが嬉しくて仕方ない僕は、前を歩くリリスさんをうっとりと見つめる。
「ルティアス、お前も、その……」
「? 何かな?」
ただ、竜珠殿に近づくと、リリスさんは何かを思い出したかのように足を止める。
「……何でもない」
「?」
何か、深刻な声だったような気はするものの、リリスさんは、その後、何度聞いても答えてはくれなかった。
「ちょっとぉ、僕を置いて二人でラブラブデートって、どういうことぉ?」
「っ、デートではない」
竜珠殿に戻るや否や、やってきたアルムはそう嘆き出す。僕は、そんなアルムに対して自慢げに胸を張る。
「むー、『絶対者』はそう思ってなくてもぉ、そいつは絶対、デートだって思ってるんだからぁっ! 『絶対者』っ、こんな奴に隙を見せちゃダメだよぉっ」
「隙は見せていない。何か攻撃を仕掛けられれば、すぐにでも対処できる」
「そういうことじゃないからぁっ。ねぇ、何かされたりしてないよねぇっ?」
微妙に噛み合わない会話を聞いて、僕もリリスさんの危機管理能力が心配になるものの、最後の質問で、リリスさんはピキリと固まる。
「っ、何されたのぉっ?」
「っ、何でもないっ! すぐに結界を張ってくるから、ここで待ってろっ」
そう言って、リリスさんは一人で走り出してしまう。そう、僕とアルムを置いて……。
その後、僕は根掘り葉掘りリリスさんに何をしたのか聞かれたが、とにかく黙秘を貫くのだった。
いやぁ、リア充爆発しろという感想が来そうな今日この頃。
まだそこまでいってないのに、リア充感がプンプンと……。
次回は、また別視点でのお話になるかと思います。
それでは、また!