第十一話 そして冒頭に…
ブックマークや感想、評価をありがとうございます。
今回は、やっと、最初のお話に繋がりました。
それでは、どうぞ!
(本当に、調子が狂いますわ)
何を言っても幸せそうに微笑むルティアスを見ていると、わたくしがバカみたいに思えてくる。
予想外に姿を見られるというアクシデントや、それを全部夢だと思われていたなんてこともあったけれど、とりあえずはお説教だと、なぜか顔を赤くしているルティアスをギンッと睨む。
「なぜ、あの闇の神級魔法など使ったのですか?」
どうして使えるのかは、この際どうでも良い。知りたいのは、なぜ、顔も分からない上、会えば罵倒を繰り返すような女を守ろうと思ったのかだ。
「うん? だって、僕はリリスさんを愛してるから」
「そんなに簡単なことではありませんわよねっ!? あの魔法がどんなものなのかくらい知っているでしょうっ!」
代償がどんなものになるのかは分からない。けれど、それがとんでもないものだということくらいは分かる。
ニッコニッコと笑顔を浮かべながらわたくしを見るルティアスに、わたくしは苛立ちが隠せない。
「うん、この魔法は愛の魔法で、闇魔法が扱える魔族は、大抵覚えてる魔法だよ」
「そういうことを言ってるんじゃありませんのっ!」
と、反論して、直後、違和感に眉をひそめる。
「『闇魔法が扱える魔族』が、『大抵覚えてる魔法』……? まさか、魔族には代償が発生しませんの?」
けれど、それはおかしい。代償がないというのならば、あの刻印が現れた意味が分からない。
「ううん、代償はあるよ? でもね、僕ら魔族がこの魔法を使う時は、愛する片翼を守るためなんだ。だから、誰も後悔なんてしないんだよ。たとえ、片翼からの口づけが得られずに、代償を払うことになろうとも」
(また、『片翼』ですの?)
幾度となく聞く片翼という言葉に、わたくしの苛立ちはピークに達する。
(わたくしが、愛される存在であるはずなんてないっ)
「いい加減にしてくださいましっ! そんなにわたくしをからかって楽しいですか?」
「っ、そんなことないっ! ごめん、まさか、リリスさんがそんな風に思ってるとは思わなくて……でも、僕はからかってるつもりはないよ。本当に、リリスさんのことを愛してるんだ」
わたくしの言葉に、ルティアスは食いぎみに反論する。そのあまりにも真剣な表情に、わたくしは一瞬、言葉に詰まるものの、キッと睨み返す。
「そのような言葉、信じられませんわっ」
「僕は、リリスさんのためなら何だってする。信用してもらえるまで、ずっと、ずっと、信用してもらえたら、もっと、僕はリリスさんのために、僕の命を使うよ」
真剣な表情でとんでもない宣言をしてきたルティアスに、わたくしはいよいよ混乱する。
「本当に、何でもするつもり、ですの?」
「うんっ、もちろんっ!」
そして、その後のわたくしは、血迷っていたとしか思えない。おもむろに立ち上がり、『なら……』と言葉を続けたわたくしは、その後、永遠の黒歴史となる宣言をしてしまう。
「感謝なさい。貴方は、わたくしの下僕にしてあげますわっ」
そう告げた直後、ルティアスはパァッと瞳を輝かせる。
「うんっ、下僕にしてくださいっ!」
間髪を入れずに答えるルティアスに、わたくしは一瞬呆けて、自分が宣言したその言葉と、ルティアスの言葉を冷静に思い返して、とにかく嫌悪の表情を作る。
「貴方にはっ、プライドというものがありませんのっ!?」
「リリスさんのためなら、そんなもの、ウルフにでもくれてやるよっ。これから、よろしくね。ご主人様っ」
目をキラキラとさせながら即答するルティアスに、わたくしは、そのまま一歩後退る。
そもそもは、ルティアスに諦めてもらうための言葉だったのに、こんなことになるなんて予想外もいいところだ。
「あ、貴方に『ご主人様』などと呼ばれたくはありませんわっ」
「じゃあ、お嬢様? それとも、リリス様? あっ、リリス様って、何か良いかも」
なぜか恍惚とした表情を見せたルティアスに、わたくしは得体の知れない悪寒を感じてブルリと震える。
「こんなはずじゃ、ありませんでしたのに……」
その後、わたくしは必死の反論の後、何とか元の『リリスさん』呼びに戻してもらうことにはなったのだけれど……余計な労力を使ったような気がしてならない。
「じゃあリリスさん、何か命令はある?」
「ありませんわ……」
精神的に疲れたわたくしは、とりあえず、明日の潜入に向けて、少しでも休むことにするのだった。
次回は、多分???視点のお話になると思います。
ちょこちょこレイリン王国の状態も入れないとなぁと思っていますので、少しだけ、お付き合いください。
それでは、また!