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数多の英雄  作者: 湯水ふらめ
青葉巡編
9/10

4・治療の対価

uです

 スラムからの依頼を全て達成し、ギルドで報酬を貰う。


「あのー、大丈夫ですか?酷い顔ですよー、依頼、やっぱり失敗しちゃったんですか?」



 元気っ子の受付嬢が音声を下げるレベルの顔らしい、ひでーもんだ。


 デモ

  オンナヲミルタビ

  アノコウケイガ



「っ!ぅ」


 まて、我慢しろ。吐く訳には行かんぞ、人前で失礼極まりない


「フー、スゥー、フー・・・あー、すいませんね、ちょっと食べすぎたみたいで笑依頼は達成しましたよ、凄くないですか?全部ですよ全部、一人残らず救えたんです。皆がやれなかった依頼を1人で。自分しか出来ないかな、転職かな、なんて思ったりして、依頼数覚えてます?35個です、全部で35人ですよ、だから」


 アレハ、キニセズ


「あ・・・いや、うん、達成しました。処理をお願いします」


 報酬は全部合わせて銀貨6枚と銅貨15枚だった、人の命の値段・・・串焼き肉を200買えば無くなるような値段。それがスラムの人達が出せる精一杯の命の対価。


 あの二人はどんな気持ちだったろうか、誰にも助けられず、1人寂しく、薄暗い路地裏で・・・蘇生魔法は消費MP以外に死亡から3時間以内であることが必要だ。俺が必死にLvを上げてMPを届かせてもあの虫のたかった死体は起きない。ハッ、神の力っつってもそんなもんかよ。


 あろう事か、俺は力をくれた神すら非難した、最低だな・・・


 所詮凡人な俺なんかには無理なのかな、外面が強化されても中はなんにもかわっちゃいない。1つは虚勢で乗りきっても2つ目の死体でノックアウトだったわ。


 主人公なら、どうするんだろ。って、アイツらは死体もよく見ねーような有様か。超強い美少女に囲まれて、人外を切り裂くのがお仕事だもんな、それに、本当に仲間を守れる力がある。ついでに現実を見ずにいられる間の良さ?俺が主人公なら死体は犬にでも食われていたかな。


 ああ、頭がこんがらがって訳が分からなくなる、もう、寝よう、頭を整理してもらおう、今は何もしたくない・・・

  適当な宿に転がり込み、服も着替えベットに倒れ込む。意識は直ぐに落ちた。








 寝て起きて少しはスッキリした、なんてことは無く。ひたすら悪夢にうなされていて最悪の目覚めだ。内容は、まぁ、なんで助けてくれなかったんだって迫られる夢。


 どんだけ悩んだってあの2つの死体は何日も前からあったような様子で、つまりは俺が異世界に来る前に既に死んでいて、どうにもしようもない死だった。なにもできるはずがない、後悔してたって仕方ないに決まってるんだけど、俺がここに居る内に俺のいない所では俺がいれば助けれた様な人達が次々死んでるだろうし、俺が1人で馬鹿みたいに頑張ったって誰一人取りこぼさず助けるなんて無理に決まってるんだ。神に出会った今としてはそもそも神が生物に無限の寿命をさずけていないのだから当たり前だよなって思ったりもして、


 ・・・


「答えなんて出るはずも無いか・・・」


 華麗に解決出来る方法なんて無いしとにかく動くしかない、まだ序盤の序盤、最初の街だ、こんなとこでつまずいて歩みを辞めたらなんかもう確実にダメになる。後悔で死にそうになる。


 また、ギルドに顔を出して依頼を受けよう、緊急の奴。て、あ、そう言えば市民の依頼残ってたっけ、やらないと・・・



 道すがら依頼の場所により魔法をかけていく。スラムの時はあまりにも対象の様子が悲惨だったり、道中死体見たりで欠片も余裕がなかったけど、今周りの反応を伺ってみると大層驚いている。

 やはり俺の魔法は異常な力を持っている、理不尽を打ち破るにはこれ以上ないぐらいの力だ。持っているのが凡人だと言うことを除けば世界に影響を与えかねない危険な力でもある、下手に名を売って権力者に目をつけられてもいい事なんて無いだろう。何か、考えなきゃ・・・


「市民からの治療依頼、3件達成しました、処理をお願いします」


 昨日の人とは違う受付嬢に報告をする、報酬は銀貨5枚ずつ。3件しかしていないと言うのに、スラムの時の倍以上のお金を貰った。スラムの住人とそこらの市民ですら、天と地の差があるようだ。


「今日、新たに15件の治療系依頼が来ています、多分貴方の噂が広がったんでしょうね、受けます?パラケイアさん」


 パラケイア?問うと、癒しの女神の名前らしい。昨日の今日でそんなに噂が広がってるのか・・・てか、神様の名前を俺なんかに付けるのはちょっと勿体ないというかなんというか。でもまぁ、認められた感じがして悪い気はしない。


 もちろん依頼は受ける。諸々の事を行動に移すには、先立つものが必要なのだ。


 スラムで14件、市民か1件。まぁ、市民を治したのは今日だしスラムでの事はよく分かってないんだろう。


 今日も起きるのが遅かった為、人は少なく落ち着いて行動出来た。まず近くの市民の依頼を軽く済ませる。あぁ、死にかかわるほどの病の筈なのに、感覚が麻痺してきてるな。死んでなきゃどうでもいいみたいで、少し自分が怖い。


 スラムももちろん行く、しかし今日は昨日のスラムや、市民の依頼なんか目じゃないぐらいに患者の容態が酷かった、もう身体中から腐臭がしていたり、蛆が沸いていたり、死に体の人達ばかり・・・視覚に訴えてくるこの精神攻撃は割とダメージが大きく吐きかけた、なんとか我慢してリペアとリカバリーをかけたけど。そんな状態でも何事もなかったかのように復活する俺の神聖魔法はやはり神の力なのだろう。


 そう言えばどうでも良いが、この世界は顔面偏差値がクッソ高いらしい。思い返せば昨日のスラムの人達も、街ゆく人もレベルが高い。今も腐りかけの人が起き上がるとモデルかという程の美人で目を剥いた。その程度は普通の事らしい、モブ顔には厳しい世界だぜ、


 そんな事を考える余裕も、戻って来た。やっぱり動くしかないのだ、うじうじ悩むよりこっちのが遥かに生産的だし、自分の気持ちも満たされる。


 あ、お礼の気持ちだけで結構です、虫のスープは仕舞って貰えますか・・・


 と言うか、これが主食なのか、これが。やはり、貧富の差は俺如きではどうしようもない程に拡がっているようで。まぁ、生きて行けてるなら良いと斬り捨てるしかないのか。常にこの街に滞在するつもりは無い、この人も俺が去った途端また病にかかり死ぬかもしれない。それは、人間としての当たり前だ。部分的に覆す力はあっても所詮俺も人間、無理なものは無理。割り切らねばならない。


 依頼を終え、早くもルーティーンになった報告をする。報酬は、あれ?


「私・・・?」


 なんぞこれ、報酬が私?何それ美味しいの、え?人身売買?捕まるんじゃね、誰だよコレ。おい。いや。


「あー、奴隷になってそれを報酬とするみたいですねー、一応アリですよ、規則では」


 え、マジで?いやでもそれって、えぇ。せっかく整った脳がかき乱されるんだけど




 どうやら俺は、まだこの世界を理解しきれていなかったらしい。えぇ・・・

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