表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東海幽霊小話  作者: みつき
4/4

4話

 ……あれ?



「無理ですよ? 生体エネルギーはもう無いので肉体的変化を齎す事はありません。精神体となった今、意識だけなんです。声に至っては念です」

 勃って! 勃つのよクララ!!

「いやもう貴方様の下品さには反吐が出そうですが、諦めてください。見守る事と、ぅぁぅぁ呻く位しかできません。それが地縛霊です。もう、死んでるんです」

 絶望に打ちひしがれながらも、取り敢えず早乙女さんをガン見しておく。

「いやいやマジ執念パネェですね変態童貞マジ卍」

 変態に変態の称号を頂いた屈辱も、今の僕にはどうだって良かった。流れぬ涙を、手で拭えぬ涙を、ただ流す事しかできなかった。


「……次の場所、行きますか?」

 もう良い。もう充分。もう其処の道端で良いっす。適当で良いっす。




 ――あれから幾月経ったのか。否、幾年だろうか。


 変態の天使が傷付いた僕へ丁寧に言葉を紡いでいたけれど、届かなかった。響かなかった。

 だって、結局はただの地縛霊。もう終わった存在。何も出来ない。

 決して不甲斐無い下腹部に絶望したからではない。余りにも無力な自分の状況を認識して、それに絶望したのだ。


 早乙女さんの家の外にある電柱の下。其処が僕の永遠の場所。

 ここに居ると時折通り過ぎる彼女を見る事ができる。永遠の中で訪れる唯一の幸せ。あと、たまに犬に吠えられる。


 僕の人生なんて、永遠なんて、この程度が丁度良いんだ。嗚呼、排気ガスが充満する様な道端だけれど、空だけは綺麗だ。そして、早乙女さんも綺麗だ。

 社会人になったであろうか、スーツを身に着ける彼女が気早に家を出る。仕事に遅れそうなのか、そんな慌てている彼女も綺麗だ。

 すると突然、道の向こうからトラックが爆走してくる。霊的な何かしらのアレなコレで分かるのだが、あれは居眠り運転だウン間違いない!

 彼女が、早乙女さんが危ない!! 早乙女さんも時間を気にしてか、トラックには気付いていない。


 僕が、僕がどげんかせんとイカン! 死人だけに死語はお手の物だッ!!

『早乙女ざん゛ん゛ん゛!!!! あ゛ぶない゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!』

「ヒィ! 何!? だ、誰!?」

 僕の呻き声に慌てる彼女。頼む、気付いて逃げてくれ!!

「喝ッ!!」


 早乙女さんが不可思議な印を結ぶと、何処かで聞いた事のある叫びを放った。

 急速に干上がる水の様に、僕の体が消えて行く。

「私、ネトゲではヒーラー固定なの!」

 なるほど。何を言っているのか分からん。


 まあ、最期に早乙女さんを守る事ができたのが幸いだっt「まだ居る!? 喝ッ!!」




 ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ