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東海幽霊小話  作者: みつき
1/4

1話

 僕は明日、17歳の誕生日を迎える筈だった。しかし、それは叶わぬ事となった。

 今日で僕の生涯は終わってしまった。今、まさに燃え尽きようとしている。


 そう。僕は命を事故によって失ってしまった。僕だった体は16歳のまま灰となってしまう。

 泣き崩れる両親。焼けて消え去る僕の体。

 そして、それを眺めながらふわふわと浮いている今。

 これが噂に聞く“幽霊”と云うヤツなのか。妄想家の虚言程度に思っていたけれど、その証明を自らで体感するなんて思わなかった。

 僕を置いて時間の流れる世界を眺めると、そこには涙を流してくれるクラスメイトの姿もあった。


 ……嗚呼、終わったのか。


 基本的に日陰で生きていたので、人様に涙なんて流して貰えるとは思っていなかった。

 友達だって片手程度なのに、クラスメイトがこんなに沢山見送りに来てくれるなんて。

 僕如きには勿体無い景色。もう充分。


 さあ、天に召されてしまおう!

「あのー、すみません」


 さあ! 天からきらびやかな光が差し込み、僕を天国へ! GOGO HEAVEN!

「ちょっと良いですか。あの、聞いて」


 ふと、蚊の屁かと思う様な弱々しい声に気付き、そちらを見ると……素っ裸で羽根の生えた中年が空を飛んでいた。


 へ  へ  変  態  だ  ぁ  ぁ  !!





 変態はコホンと咳払いを一つすると、いやらしい爽やか風の笑顔で語り始めた。

「驚かれるのも無理はありません。皆様そうです。私は御覧の通り、天使です。そう、エンジェル★です」

 股間に汚らしい物体をブラ下げながら裸の中年が戯言をほざいている。これがロールプレイングゲームであれば迷わず『たたかう』のコマンドを選択するだろう。

「貴方様は此度、お亡くなりになられました。そこで、私がご案内に参上した次第です」

 己の状況すら冷静に把握できていないのに、この現状を理解できる筈もなく、ただただ心の『たたかう』コマンドを連打するのみだった。


 全裸の変態は僕の超警戒状態である般若の様な表情を一瞥し、やれやれと呟きながら何やら紙を取り出した。

 ……紙繋がりだが、コイツ禿げてる。



「えー、こんにちは★ 最近は気温差が激しい季節となりました。御身体御自愛くださいね。さて、この頃は団塊世代の方々が到来しているので、実は天国が満員状態です。申し訳ありませんが、現在お亡くなりになられた方は地縛っといていただけると助かります。と云うか、地縛っとけ。ごめんね。   神さまヨリ★

……って事です。神様からの有難いお手紙です」

 はぁぁぁぁぁ!? 何それ! 何それ! 死して尚も若者は虐げられますか!? そもそも地縛っとけって何!?

「……まあ、そんなこんなで貴方様がこれから地縛霊として住まう場所を選んでいただきます。お好きな場所をお試しいただき、ご希望の地縛る場所をお決めください」

 何と云ういい加減かつ適当なシステムなんだ! そんな雑な理由で天国へも行けず、地縛霊として存在するだなんて!

 呆れて項垂れると、下界には未だ泣き崩れる両親。そんな所で、僕は全裸の羽根生やした中年と何を話しているんだか……。

「ああもう、面倒臭いから早くしましょう」

 面倒臭いとは何だ! 人が悲しみ絶望していると云うのに!

「40秒で支度しな! グズは嫌いだよ!」


 ニァ たたかう

    じゅもん

    ぼうぎょ

    にげる


 取り敢えず、変態に殴り掛かった。だが、僕の会心の一撃は空振りに終わる。

「無駄です。死人となった貴方様は全ての存在に触れる事ができません」

 虚しく空を切る拳が、己の死を実感させる。ふざけた展開だが、これが現実なのか。よく見れば、僕の体が薄っすらと透けている。あと、頭には布きれ……手で引っ張ってみると、其処にはコントで見た事がある様な三角形の白い頭巾があった。

「さあさあ、さっさと地縛る場所を選びましょう! 私、早く帰って録画したドラマ観たいんです」

 汚物から解放されるにも、そうするべきなのか。諦めて、ここは従おう……。

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