表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/167

魔女の嘲笑

新たにブックマーク登録して下さった方、ありがとうございます!

そして、今回は記念すべき100話目♪

ここまで執筆してこれたのも、読んで下さる方あってこそだと思います。本当に感謝感激です!

それに伴って特別バージョンでお送り…することはなく、重要回の最中なので本編続きになります!

結衣の頭の中で、先程のクラインの言葉が反芻はんすうする。彼にはもう自身の姿が“結衣”ではなく“魔女”として見えているのだと、その言葉から伺えた。


(ダメだ…どうしよう。クラインは完全に私を魔女だと思ってる。どうしてもっと早くこの違和感に気付くことが出来なかったの?!時間はいっぱいあったのにっ!!)


「クライン…あなたと初めて会ったその日から、私はずーっと私のままだよ!!」


「…もう良い、それ以上言うな。ハッ、馬鹿だな俺も。今のお前に尋ねたところで、答えるのは魔女だってのに」


「っ!!」


もう何を答えた所で、その言葉は全て魔女の物だと思われる。この最悪な状態を覆すような案は、今の彼女には浮かんでこない。

途方に暮れる彼女を見ながら、クラインはゆっくりと目を伏せた。


(もう良い。もうこれ以上、ユイの声で…顔で…話されるのは我慢出来ねぇ!聞きたい事はまだあるし、これをおこなってユイがどうなるのかも分からない。けど、これだけは分かる。このまま見逃してしまえば、いずれフローラが悲しむことになる。それだけは、絶対に嫌だ!せめて……せめて俺自身の手でーーー)


「悪いな、俺はお前のどうなるのか分からない今後よりも、フローラの悲しみの少ない未来を選ぶ」


「え、どういう……」


結衣が言葉の意味を尋ねようとした途端、クラインは下ろしていた右手をゆっくりと持ち上げ、静かに彼女を指差した。先程から聞こえる図書館の窓を叩く風の音が、やけにうるさく感じられる。


「く、クライン……?」


「最後にフローラに何か……いや、何でもねぇ」


その何か覚悟を決めたような表情は、結衣に危機感を抱かせた。その動作を見て何故だか結衣は、国王の以前の言葉を思い出していた。それは、魔女についての情報を聞き出すことが出来た時の言葉。




“その封印方法は至ってシンプル。魔女だと思った相手を指差しこう言えばいい”


“姿暴かれし○○の魔女よ”





「姿暴かれし東の魔女よ」




思い出したのとほぼ同時。クラインの唇がそれとまったく同じ言葉を紡ぎ始める。


(うそ、ちょっとこれって封印の!!まずい、クラインが私にそれをしてしまったら!!)


「待ってクラインそれはやっちゃダメーーっ!!」


結衣は慌ててクラインの口をふさごうと手を伸ばすが、クラインの方が早かった。


「“永久とわに眠れ”」


(え、私の身体が淡く光って……)


その言葉と共に、図書館の中が眩しい程の光に包まれる。


「うわっ」


「眩しいっ!!」


その光に耐えられなくて思わず2人は目を瞑った。

そしてその後にやってきたのは恐ろしい程の静寂。先程まで聞こえていたはずのうるさい風の音も、今は怖いくらいに聞こえない。まるで時が止まってしまったかのような静けさに、結衣には目を開けるのが恐ろしく感じられた。


「く、クライン……?」


目を閉じたまま結衣は、恐る恐る彼の名を呼ぶ。

だが期待していた彼の声は、数分待っても聞こえてこない。変わらぬ静けさだけが、結衣の恐怖を駆り立てる。


「目の前に、いる……よね?いるなら返事して、お願い!!」


それでもやはり、クラインからの返事はなかった。


(もし目を開けて、クラインがいなかったら…ううん、それ以前に目を開けたら別の場所ってこともあるよねーーー目の前に、魔女とかいたらどうしよう…)


国王は彼女に言った。この封印方法は魔女である者に使えば封印されるが、それ以外の者に誤って使えば……。


使った方は存在をこの世界から抹消され、魔女の元へと飛ばされると。そして、飛ばされた者の事を覚えているのは、使われた者のみなのだと。


(落ち着いて、深呼吸して冷静にならなきゃ。今は慌てるよりも状況把握が優先だよね)


すぅーっと一呼吸した後で、結衣はゆっくりと目を開ける。


「っ!!」


結衣の目の前に映し出された景色は先程とほぼ変わっておらず、ここが王室図書館なのだと教えてくれた。

だが、“ほぼ”だ。一つだけ変わったこと、一番変わって欲しくなかったこと。それはーーー




「……どこ?ねぇ、いるならお願い出て来てよ!!返事してよ!クライーーンっ!!」


結衣の悲痛な叫び声が、図書館内にこだまする。

そう、先程まで彼女の目の前に立っていた存在ーーーこの国の次期国王であるクラインは、王室図書館から忽然と姿を消していたのだった…。

結衣の脳裏を、ある国王の言葉がかすめる。


“我々はこれを……”


「“魔女の……嘲笑”」


“……と呼んでいる”


文字通り、まるでクイズの不正解者を嘲笑あざわらうかのような内容であるペナルティーの発動を、予感させられた結衣だったーーー


とうとう魔女の嘲笑らしき状況に陥る結衣とクライン。クラインは一体どうなったのでしょうか。

次回月曜日に投稿予定です。お楽しみに♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ