迫る制限時間(タイムリミット)
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とうとう今回から始まる夜の部。まもなく第3章も終盤です。
時刻は午後の17時半頃。結衣は与えられた自室で、これから取るべき行動を考えていた。
「あと30分で夕食かぁ。つまり、制限時間は残り約6時間…。それまでに何か対策を練らないとね」
とりあえずフローラ姫からの頼まれ事も無事完了した結衣は、朝から色々とありすぎたため一息つきたい衝動に駆られたが、そうもいかない。結衣にとっては、むしろこれからが本番なのである。
「きっと今頃はクラインも、喜んでケーキ食べてるんだろうなぁ。せっかくのサプライズケーキだし、2人きりにしてもらえると良いな!ふっ、いいねぇリア充は。私もいつか、恋愛とか出来るのかなぁ」
事実2人はラブラブで甘々な時間を過ごしているのだが、そんな事を結衣が知るはずもない。むしろ彼女は自身が呟いた“リア充”という言葉で、ふと現世の事を思い出していた。
(もしもあの夜に、こうして異世界に来る事もなく、あのまま高校生になっていたのなら、今頃は…。
奨学金か何かで昼は高校に通い、放課後は生活費を稼ぐためにバイトに明け暮れる。奨学金を貰う以上は、成績も優秀でなければならないだろうから、その勉強もして…。
そんな生活を送っていて、果たして友達は出来る?ううん、きっとそれは普通の人より何倍も、難しいことに違いない。だって私には、放課後に友達とどこかに遊びに行くお金も、余裕も無いんだから…)
「そう考えると、今のこのファンタジックな経験は、とても貴重な物なんだよね。ある意味今が私の青春時代だったりして!…いやなんかそれも悲しいな」
やや感傷的になる結衣だったが、決して本来の目的を忘れたわけではない。彼女の頭の中で、これから取るべき最善の行動が模索されていく。
「うん。やっぱり今行くべき場所なんて、あそこしかない!よし、少しでも魔女に関する情報を集めるべく…いざ王室図書館へ!!」
(前回も前々回も、知識や行動に関して困ったときに訪れると、必ず方針が定まった。次に自身が取るべき行動を明示してくれる、あの本)
「…不可解な点も多いけど、今頼るべき物なんてあれしか思いつかないよね。もう一度、見に行かなくちゃ!ーーーあの光闇魔術書を」
バタンと部屋を出た結衣は、王室図書館へと足を運ぶ。だが彼女は気付くことが出来なかった。彼女の部屋の近くにある柱の影にそっと身を潜め、結衣が出て行くと共にその姿を追う、怪しげな人影の存在にはーーー。
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「良かった。夕食前で忙しいからか、人もいないみたいだね。これであの本をまた調べられる」
(さすがに人がいる前で、白紙のはずの本の中を凝視しながら、パラパラとめくるのは出来れば避けたいからね)
何か手掛かりがあって欲しいと切に願いながら、結衣は光闇魔術書をめくる。1ページずつ慎重にめくっていくものの、特に読める箇所が増えてはいないと分かっただけだった。
「そういえば、最初に読んだときには読めなかった記述を、なぜ再び開いた時には読めたんだろう…あの時はそれどころじゃなかったから、特に気にならなかったけど、改めて考えると不可解だな」
だがその不可解な点に気付いたとしても、彼女にその答えをくれる者など存在しない。これを残した魔女は2人とも、今は封印されているのだから。
しばらく物思いに耽っていた結衣だったが、図書館の入り口の扉が開く音が聞こえた途端、慌てて本を閉じた。急いで光闇魔術書も元の位置に戻そうとしたものの、何故か靴音は入り口付近で止まることなく、むしろ近づいてくる。
(誰か来た!ま、まずい。なんか迷い無くこっちに向かってくる音がするんですけど?!戻しに行ってる時間がない!!)
覚悟を決めて結衣は、いかにも“手に取っただけですよ”風を装って、本棚の影から足音の主を待ち構えた。
(さぁ、来い!言い訳の準備はバッチリですよ!!)
図書館の中へとやってきた人物とは、一体誰なのか。そして、次回は結構重要な回になる予定です。来週月曜日に更新します!
過去執筆した中に、一つわざと小さく矛盾させている会話があるのですが…気付かれてはいないはず笑