フローラからのご褒美は?
新たに感想を書いて下さった方、本当にありがとうございます!とても嬉しいですし、もの凄く執筆の励みになります。
今回はちょっと(?)甘々な回にしてみました。
スイーツ編、ラストです!
場面は変わってクラインの部屋。
国王・シリウスと別れたクラインは、自室に戻って書類の整理をしていた。すると扉を叩く音が聞こえ、
「クラインいるかしら?ちょっと渡したい物があるのだけれど…」
「いるぞ、今開ける!」
その声を聞いた途端クラインは、ガバッと書類から顔を上げ、急ぎ足で扉へと向かった。
(フローラの声だ!渡したい物って何だろう。気になるな)
ガチャッと音を立てて扉を開けば、そこには給仕が使っているワゴンを押している、にこにこ顔のフローラが姿を見せた。
「ごめんなさい、お仕事中だったかしら?」
「いや、大丈夫だ。それよりもどうしたんだ?というよりも…そのワゴンの上のケーキが、もの凄く気になるな。まぁ、とりあえず部屋入れよ」
クラインがワゴンの上に目を向けてみれば、そこには美味しそうなイーチゴのホールケーキが乗っている。フローラとクラインはお互い向かい合うような形で、部屋にあるソファに座った。
「実はね私、午後からユイに手伝ってもらってケーキを焼いていたの。えっと、その…それでね、私が焼いたケーキを、一番にクラインに食べてもらいたいなって思ったのーーー」
照れながらそう言って笑うフローラの姿は、クラインの心臓の鼓動を高鳴らせるのに十分だった。
(や、やばいもの凄くかわいい!もしかしてこれが国王の言っていたご褒美ってやつか?!)
「フローラがこれを、俺のために?ーーー嬉しい。早速食べても構わないか?」
「もちろんよ。このイーチゴもユイが果物屋フルーティーで買ってくれた物だから、とても美味しいはずよ」
ワゴンからフローラがお皿とフォークを取って、ホールケーキを包丁で切り分ける。それを待つクラインの顔をチラリと見たフローラは、
(ふふっ、まるでご飯を目の前にした子犬みたいな顔してる。すっごくかわいい!また貴重なクラインの表情を見ることが出来たわ!)
そう思い、微笑むのだった。
「はい、美味しいと良いのだけれど」
「お前が作ってくれたものが、不味い訳がない」
パクッと一口ケーキを口に運べば、イーチゴの甘みとクリームの甘みが口一杯に広がる。
「うん、旨いな!これはいくらでも食べられるな」
「ふふっ、本当?それは嬉しいわ、良かった!」
クラインの好評に、フローラもとても満足そうな表情だ。その表情を見たクラインは、
(これって俺へのご褒美…なんだよな。だったらもう少し欲を言ってもーーー)
「なぁフローラ」
「なぁに?」
フローラが首を傾げると、クラインはポリポリと頬をかいて、照れくさそうにしながら、
「あーー、その何つーか…食べさせてくれねぇか?お前が、嫌じゃ…なければ」
「っ!」
言われた途端、フローラの頬が真っ赤に染まる。
(え、え、え?!どうしよう、今もの凄いことを頼まれた気がするわ!)
「嫌…か?」
「そんなわけないじゃない!!ーーーや、やらせて頂いても良いかしら。いえ、やりたいの!」
その返事を聞いた途端、クラインがフローラの真横に座った。息がかかるほどに近いその距離が、より一層フローラの顔を染め上げる。フォークで一口大のケーキを刺し、目を閉じて口を軽くあけたクラインの口元へと、そろそろと持って行く。
パクッとケーキを口に入れて、しばらくクラインはもぐもぐと口を動かし、
「うん、今のが一番旨かった。もっと食べたくなるーーーほら、お前も食べてみろよ」
お返しとばかりにクラインも、フローラの口元にケーキを運んだ。真っ赤になりながらもフローラはそれを拒むことなく受け入れ、
「ーーーほんとだ、美味しいわね…ちょっと恥ずかしいけれど」
もぐもぐと幸せそうにしながらそう言うと、突然クラインの顔が近付いて…
「んっ」
彼女の口元を、クラインが軽く舐めとる。フローラはその直後に一瞬、唇に暖かい感触を感じた。その暖かさはまるで包み込むかのように優しげで、とても心地良い。恥ずかしいけれど、ずっとしていたいようなーーー不思議な気持ち。
「ーーークリーム、付いてたぞ」
「っほんと…ずるいわよね、クラインは」
暖かな空気が、夕暮れの部屋を包み込む。クラインにとってそれは、この後自身に起こるであろう出来事の内容を、少しの間でも忘れさせてくれる物だったに違いない。
(フローラーーー俺は決してお前を、一人にはしない)
クラインはそう心に誓いながら、目の前で嬉しくも恥ずかしそうにしているフローラを、優しげな表情で見つめるのだった。
色々な意味で甘々な回…にしてみましたが。
うん、はい…正直言って、ものすっごく難しい!経験値0の作者には高いハードルでございます笑
恋愛物を書いておられる作者様方を、改めて尊敬した今日この頃でした。