泡立てって難しい
いつもお読み下さりありがとうございます。
そろそろケーキ関連のお話も終わりに近付きつつありますね。その後はとうとう時間は夜へ…。
うぅっ、結構重要な事が発覚する予定なので今から緊張状態です笑
一方、無事にエメラルド城へ戻ることが出来た結衣は、フローラにイーチゴを渡そうと彼女の部屋の前まで来ていた。部屋の前にはいつも変わらず衛兵が立っているので、結衣は彼らに声をかける。
「すみません、フローラ様はお部屋の中におられますか?」
「いや、こちらにはいらしていない。別の場所におられるのだろう」
「そうですか、では他をあたることにします。ありがとうございました」
軽く衛兵達に頭を下げて、結衣は次に調理場へと向かった。
すると中から声が聞こえてきて…
「フローラ様!お顔にクリームが!あ、フローラ様!泡立て方をもう少し速めるべきかと思われます!」
「顔のクリームなんて後で取れば良いわよーっ!もっと速くってどれ位かしら?」
調理台を取り囲むようにして、エプロン姿のフローラとコック帽を被った男性ーおそらく料理長だろうーがケーキ作りをしている。
どうやらフローラは泡立てがあまり得意ではないようで、調理台の上にはいくつか失敗した痕跡が見られた。
「フローラ様、やはり自分が泡立てますが…」
「駄目よ!今回はユイと私だけで作るのだもの!」
(あ、困ってるな料理長。確かに混ぜすぎても固くなるし、遅すぎてもゆるいだけだもんね。その辺りの加減が難しいんだよなぁ)
結衣が一人で、うんうんと頷いていると、フローラがこちらに気が付いた。
「あ、ユイ!お帰りなさい。どう?無事フルーティーで買えたかしら?」
「はいここに、最高級イーチゴ2籠買って参りました!…ところで姫様、泡立て大変そうですね」
周りには料理長や他のメイド達もいるため、口調は丁寧なままにした。
「そうなのよ、案外加減が難しくって…。ユイ、あなたもやってみる?これは私とユイで作るのだから、あなたがやってみる分には問題ないもの」
はいどうぞ、と場所を譲るフローラに了承し、結衣はメイドの一人からエプロンを受け取った。
料理長はといえば、また素人が一人増えたと頭を抱えている様子。
(ああ心配しないで料理長。私は素人ではありませんので!そりゃあプロには劣るけど、料理スキルはある方ですよ?)
カチャカチャカチャカチャと、調理場にボールと泡立て器のぶつかり合う、規則正しい音が響く。
やがて透明がかった卵白の色は次第に白色へと変化した。
「あとは角が立つくらいまで泡立てれば…よし、完成かな?」
出来具合を見てもらいたくて、結衣はボールを料理長に渡す。それを彼は真剣な表情で受け取り、
「…これは驚いた。まさか素人がアドバイスもなしに、一度で加減を成功させてしまうとは!!」
どうやら結衣の泡立てた卵白は、料理長から文句無しの合格点を貰えたらしい。
(正直めっちゃ腕疲れたけどね…。普段地球では電動の器具を使っていたから、手作業はやっぱキツいわ~)
「ユイ、あなた実は料理経験があったのかしら?!私なんて全然成功していないのに…悔しいわね」
フローラもまさか結衣が成功させるとは思ってもいなかったようで、その表情は言葉の通り悔しげだった。
「ご、ごめん姫様。姫様が成功させたい…ですもんね」
明らかに料理長はホッとしている表情だが、結衣の心は少し複雑だ。だがケーキをおやつに間に合うように作るには、そろそろ焼き始めないといけない。フローラはそれを察したのか、
「んーん、いいの。卵白はユイが作ってくれたものを使うことにするわ。私はさっき、クリームなら成功させられたからそれを使うことにする」
「え、でも…」
「これはユイと私で作るケーキなのよ?得意分野で担当を分担することも大切だわ。それにクラインには、より美味しいケーキを食べてもらいたいもの!」
(ほんとにフローラって良い子すぎるよ…。今度時間のあるときにでも、一緒に練習付き合おうかな。てか料理長…そんなに嬉しそうな顔をしない!!)
「分かった、また今度一緒に練習しよう?」
「えぇ、お願いするわねユイ先生?じゃあ料理長、次の指示をお願い」
こうしてケーキ作りは着々と進んでいき、それから数時間後。調理場周辺の城内には、美味しそうな匂いが漂っていた。
「最後にイーチゴをケーキに乗せて…ユイ、完成したわ!」
「はい!おめでとうございます姫様!お疲れ様でした」
おやつの時間は少々過ぎたが、無事にフローラ希望のイーチゴケーキは完成し、料理長共々、皆安堵の溜め息をついたのだった。
無事にイーチゴケーキを完成させたフローラと結衣。正直な話、泡立てって手作業でやるとめちゃくちゃ腕疲れるんですよほんと!!電動がある時代で良かったぁ(*´ω`*)