城門にてトラブル発生?!
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お使い編、お楽しみ頂ければ幸いです♪
「待て、そこのメイド」
「へ、私?」
今いる場所は、外へと続く城門の手前。両脇には門番達が控えており、城門を利用する人々の出入りを、順番に整備していた。
結衣も順番が来て、外に出るべく門をくぐろうとしたのだが…何故か門番の一人に呼び止められてしまった。
「そうだお前だ。お前、メイドだろう。メイドの出入りはそこじゃない、一つ横の脇の列だ。そこは貴族や商人などの客人用だぞ」
(げ、そんなこと知らないんですけど。教えてよ姫様、いや姫様も知るわけないか…。でも確かによく見るとこの列メイドいないや、代わりに城門脇の門番近くの列に、同じような格好の人がちらほらと見えるね)
「すみません、私最近メイドになったばかりで、知らなかったものですから」
「まぁ良い。そこの列で、名前と用件を言うように」
「分かりました」
列に並び直してしばらくすると、順番が来て門番に名前と用件を聞かれた。
「渡 結衣です、フローラ姫様の命によりお使いを頼まれております」
「ワタリ・ユイだと?そんな名前のメイドは記憶に無い。お前…怪しいな」
こちらを探るような目で見てくる門番に、内心少し焦り気味で返答する。
「いやいやいや、私最近なったばかりだからご存知ないだけではないですか?」
そう結衣が答えると、門番は勝ち誇ったような顔になり、
「何も知らないのが仇となったな怪しい奴め!俺はここに仕えるメイドの名前は全員暗記している。その上新しく入ったメイドならば、朝に必ず報告されるんだよ」
(何それすごっ!全員のメイドの名前暗記してるとかすごいな!ここのお城って、結構な人数のメイドさんいると思いますけど?!今更ながら良かったぁ、忍び込むときに抜け道知ってて…)
「いえ、あの…ですから」
「その上お前は更に馬鹿なミスを犯している!」
(なんか調子に乗って、探偵みたいな態度示してきたなこの人…。しかもビシッと指でこっちを差してるし)
「な、なんでしょうか」
「フローラ姫様は頼み事をする際に、普通のメイドに頼みはしない。なぜならフローラ姫様には、今や専属のメイドがいて、その方に頼むからだ!一介のメイドがフローラ姫様に直接頼まれることなど、あり得ないのだよ」
(あぁ…、その言葉の最後に、「分かったかね、ワト○ン君」という決まり文句まで浮かんで見えるよ…)
「ではお尋ねしますが、その専属メイドのお名前ご存知なのですか?」
「い、いや知らん。その方も最近専属メイドになったらしくてな、こちらまでまだ名前までは回ってきていない。だが!そんな我々のために、専属メイドのメイド服は普通のメイド服とは変えられているのだ。お前には関係のないことだろう!」
(なるほど。それが彼の判断基準なら、確かに今の私は見分けがつかないか。
うーん、どうすれば信じてもらえるかな…。これ以上目立つと、フローラの秘密のフルーツケーキ作りまでバレてしまいかねないし)
「その専属メイドというのが私なんですけど…あ、やはりその顔は信じてませんね?」
「ふん、当たり前だ。証拠があるならばまだしも…」
(証拠?証拠かぁーーーあっ!あるある、あるじゃん!!)
「これならどうです?!」
ばっと左腕を門番の顔の前に掲げて、その腕にはめられている“腕時計”を見せつけた。
「なっ!そ、それは専属メイドに贈られるという貴重な腕時計!ま、まさかお前、いやあなたは…」
驚き固まっている門番に、ニコッと微笑みながら、
「改めまして、フローラ姫様専属メイドの“渡 結衣”と申します。以後、どうぞお見知りおきを!」
自己紹介を終えた途端、門番の顔がサアーッと青ざめた。そしてものすごい勢いで頭を下げて、
「も、申し訳ありませんでしたーっ!」
大変慌てた様子で結衣に謝ってきた。
(いやいや、何もちょっと怪しまれた程度で、別に怒ったりしないから平気だよ?)
城下町におりる前から一波乱あった結衣でした。多分城下町でもただお使いするだけでは…終わらなさそうな予感です笑