真の忠誠心とは
新たにブックマーク登録して下さった方々、ありがとうございます♪またまたやる気倍増です!
「姫様、お待たせしてごめんなさい」
食事の間へと繋がる扉を開けると、案の定そこには既にフローラが一人座ってこちらを見ていた。
「大丈夫よ、私も今来たところだもの。それにまだクラインも来ていないしね。お父様とシリウスは、何か用事があって一緒に食べられないみたい」
「そうなのですね、ちなみにクラインも用事で来れないとの伝言が」
周りには給仕係達がまだ食事を運ぼうと控えているので、結衣は口調を丁寧なままにした。
「そうなの、じゃあお昼はユイと二人きりね!これはちょうど良いかもしれないわ…」
フローラの正面の席に着いた結衣に向かって、フローラは呟いた。そんな彼女を見て結衣は、苦笑いを浮かべるしかない。
(うーん、どう考えてもこれは“あの件”について話したそうにしているな姫様…。あれがその場の思い付きで、忘れてくれてればと少し期待したんだけどなぁ。ムリそうな予感)
「ワア、姫様と二人、ウレシイナァ…」
「さぁ皆さん、食事を運んでくれるかしら。それが終わったら下がっていいわ」
周りに控える給仕係達に向かって、フローラがよく通る声で指示を出した。
それに答えるように彼らはフローラに一礼し、次々と皿をテーブルの上に並べ、部屋を立ち去る。
その姿を見て結衣は思わず、
「フローラってやっぱり王族なんだよねーーー今までで一番、フローラの王族らしい一面を見た気がするよ…」
その呟いた結衣の言葉が届いたのか、フローラがこちらを向いて、ニコリと微笑む。
「ウフフ、そうかしら。私だって次期王妃だもの、ちゃんとするときはするのよ?」
そう、彼女は生まれたときから既に王族。クラインのように、途中から王族になったわけではない。普段は砕けた態度で隠されてはいるけれど、身体に染み着いている王族としての礼節と、時折見せる彼女の威厳が、それを十分に証明していた。
「そうだよね、ごめん。それに下の者にも高ぶることなく、理不尽な態度もせずに接するところがフローラの魅力の一つだもんね!」
結衣の謝罪とほめ言葉に、フローラは顔を輝かせる。
「ありがとう!ユイにそう言って貰えるのはとても嬉しいことだわ。でもねユイ、下の者が上の者に真に誓う忠誠心は、決して権力をかざすことでは生まれない。お互いを尊重し、信頼し合って初めて生まれるものだと私は思うの」
その言葉を聞いて結衣は、改めてフローラの凄さを実感した。生まれたときから“王族”という特別な地位に座し、常に国民の頂点に立つ存在だったはずの彼女。
そんな立場にいて、下の者に対し蔑むような態度を取らないことだけでも奇跡だと言うのに、その上もうこの年齢で、“真の忠誠心”について的確に理解しているのだ。
これを驚かずして、何を驚くと言うのか。
「ねぇ、フローラ」
「どうしたの?ユイ」
「私、その考えすごく好き。それにフローラは、必ず良い王妃になると思うよーーーううん。“思う”じゃない、“必ず”!!」
自信満々に言い切る結衣の姿に、一瞬呆気にとられたような顔をした後、フローラは恥ずかしそうにして、“ありがとう”と呟いた。
こうして初めての二人きりの食事は、先程までのクラインとの様々な感情を、少しの間忘れさせてくれるほどの和やかな雰囲気の中、進められたのだった。
普段は砕けた態度でも、彼女は王族。
ちゃんと次期王妃様なのだということを、実感させられた結衣でした。