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信じるか否か

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「こっちだユイ、ここなら誰にも聞かれない」


門番の辺りで集合した二人は、結衣の事情を聞くために、人気のないところへと場所を移した。

その間も結衣の表情は暗く、俯きながらクラインの少し後ろを歩いていた。


「で?一体お前は何を一人で抱えてるんだ。そろそろ俺にも話してもらえると助かるんだけどな」


「……うん、分かってる。でもーーークラインにとってはきっと、信じたくない内容だと思うから……」


俯き自分と目線を合わせようとしない結衣。だがその声からは、彼女の辛そうな、悲しげな表情が見て取れる。

クラインはなんとか彼女に、顔を上げて欲しかった。目を合わせて欲しいと思った。


「ユイ、ちゃんと俺の目を見ろ。俺が信じる信じないはお前が決める事じゃないーーー俺が、俺自身が決めることだ」


「でも……」


「あのな、悩み事ってのは一人で抱え込むものじゃねぇんだ。誰かに話せば気持ちも軽くなるーーーそれに、新たな解決策が見つかるかもしれないだろ?」


だから俺を信じて話せと、クラインは結衣を優しく励ます。その優しげな声は、俯いていた彼女の顔をゆっくりと上げさせ、ようやく結衣とクラインの目が合った。

先程の言葉が届いたからかは分からないが、その目には既に負の感情は宿っておらず、覚悟を決めたような、そんな目をしている。

クラインが内心ホッとしていると、結衣が静かに話し始めた。


「……事の始まりは、クラインが首筋にシュバインから傷を付けられたところから始まるの」


「そういえばユイは、この傷を見た途端に取り乱したんだもんな」


「うん、そうだね。だってそれは、クラインが呪術にかけられた証。それを止めることが出来なかったんだもの。取り乱したのは見逃して欲しいくらいだよ……」


結衣がハァとため息をつく。そんな結衣の肩をクラインは慌てて掴み、思わず叫んだ。


「今、“呪術”と言ったよな?!」


「う、うん。言ったよーーー分かってる、東の魔女クレアは封印されていて、呪術は使えるはずもない。そう言いたいんでしょう?」


「あ、あぁーーー悪い、先を続けてくれ」


何故か深く突っ込まずに先を促すクラインに首を傾げつつも、結衣は説明を続けた。


「呪術を完成させるためには、まだ傷を付けただけじゃ足りないの。その傷を付けた道具ーーーこれが呪具ねーーーが必要なんだって」


「じゃあユイがさっきから必死に探していたものって……」


「うん、呪具だよ」


なるほどな、とクラインは結衣の説明に納得したような表情をした。


(だがまだだ、まだ肝心の部分が聞けていない)


「それでユイ。その呪術が完成すると、俺はどうなるーーー知ってるんだろ?」


途端、彼女の表情が陰る。

その表情を見て、質問をしておきながらもクラインは、自分はなんて残酷な事を聞いているのだろうと思った。


彼女の表情で、だいたい自分がどうなるのかは予想出来る。それを本人に伝えなくてはならない彼女の気持ちを考えれば、聞かずとも察すれば済む話だろう。

だが……それでは駄目だとクラインは思う。


結衣の口から直接聞かなければ、彼女の心も軽くはならないに違いないと。

おそらく一番重く感じているだろう、自身の今後を……。


「クラインは……っ!!」


「大丈夫だ、だいたいの予想はついてる。落ち着いて言えばいいぜ」


覚悟を決めた瞳を向ければ、結衣は少し息を吸って再び口を開いた。


「クライン……は、クライン・アルベルトは今日の真夜中午前零時に……呪術によって、死んでしまうの!!」


「……そうか」


「ごめんっ!!クラインごめんね!私がもっと早くに気付いていれば……クラインはっ!!」


「ユイ」


「私が呪具を探し出せていればクラインが死ぬことには!!」


「ユイ!」


名前を呼ばれていたんだと結衣が気付いたときには、既にクラインの腕の中だった。

彼に謝り続ける彼女の身体を、クラインの腕が優しく抱きしめる。


「クライン?」


見上げれば、水色の瞳がこちらを静かに見つめていた。


「お前は諦めるのか?まだ生きている俺を前にして、お前は既に助からないと決めつけているのか?」


「ちがっ!!私だって諦めたくなんかない!」


「午前零時まであと約半日ある。その間ずっと俺が、絶望するだけで何もしない人間だと?」


「そんな事、思ってない!私にだってまだやれることがきっとあるはずだよ!」


そう答えた途端、クラインがフッと微笑んだ。


「なら下を向くなユイ。俺は最後まで諦めるつもりは毛頭無いぜ。お前も呪術を止めるために協力してくれるか?」


自身の死を知ってもなお、クラインは前向きな発言で彼女を励ます。

そんな彼の態度を見て結衣は、ゆっくり深呼吸を一つした。


(そうだよね、私また悲観的になってた。でもクラインはまだ、生きてるんだ。時間もまだある。私が諦める理由なんて、どこにも無いよ!)


結衣もクラインにニヤリと笑って、


「当たり前!」


「ユイ。俺の今後を伝えてくれて、ありがとう。俺はお前を信じるよ」


「うん、こちらこそ!信じてくれて、ありがとう!クライン」


(クライン、私頑張るから。もう諦めたりしないから……だからーーー)


「とりあえず、この状態から解放していただけると嬉しいです」


結衣が今の状態を指摘すると、クラインはあっという間に耳の先まで赤くなり……慌てて彼女の身体を解放した。


「あ……いやっ!!こ、これはっ!!自然な流れというかだな!深い意味とかねぇからな!俺はフローラ一筋だからな?!」


「はいはい、知ってます知ってます。というか自然な流れって……クラインって案外“たらし”なのかも。姫様頑張れなんとなく……」


結衣は思わずフローラのいそうな方角へと、合掌したのだった。

その様子にクラインは、


「つーか、どうしてお前はそんなに冷静なんだぁーっ!!普通逆だろこの場合!!」


「いや結構実はドキドキしてるんですけど、ここは顔に出さない方が、クラインいじれるかなぁって……アハッ」


「いつも通りに戻るの早ぇよ!!」


「気まずさ緩和の対策ですぅ!」



やっぱりいじると楽しいクラインです笑

ちょっとクラインさんは腕の中に抱いたりしちゃってますが、フローラ一筋なのは言うまでもありません♪

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