牢屋へと続く扉の前で
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「見えたぞ、あそこが牢屋の入り口だ。ほら、門番もいるだろ?」
廊下をしばらく歩くと見えてきた扉を指差して、クラインは結衣に教えた。
そんな二人の歩いてくる姿を認めて門番はビシッと姿勢を正し、
「お疲れ様でございます、クライン様!何か追加の用件がおありですか?」
「あぁ、ちょっとシュバインに聞きそびれたことがあったからな。もう一度通してもらってもいいか?」
クラインの問い掛けに肯定した門番は、次にチラリと結衣の方を見る。
(まぁそりゃ気になるよね、“牢屋の前に何故メイド?”って。何だこいつ、と門番さんの目が言ってます)
「ところでクライン様、そちらのメイドは…」
「あぁ、彼女はフローラの専属メイドだ。彼女も中に通してもらえると助かる」
「…は、メイドを牢屋に、ですか?失礼ですがクライン様。そちらの方は専属メイドとはいえ一般人でしかも女性ではございませんか?理由も無く牢屋に入れるわけには…」
(う…否定できないな。
確かに専属メイドという称号はあるけれど、別にそれは貴族と同等の身分とか価値を示すものではない。あくまで私は一般people、ただフローラの行くところならどこにでも入ることが出来るだけ。
この人の言い分ももっともなのだ。
でもそこはもうちょっと何というか…融通を…ねぇ?)
「悪いんだがこれは内密の用件だから理由は言えねぇんだけど…駄目か?」
「いえ、勿論入れて差し上げたいのはやまやまなのですが、責任が…」
(あぁそっか、この人は私を入れて何か問題が起きたときに、責任追及されるのが嫌なんだ。
…確かに何も起きないとは保証出来ないのが悲しい。ようするに、保身のためだね)
「…気持ちは分かるけどな、まぁ駄目だろうとは思ったぜ」
「申し訳ありません…ですがクライン様はシュバインの所に行かれるのですよね?」
「あぁ、そうだけどそれがどうかしたか?」
「その方を牢屋に入れることは独断では承諾出来ませんが、シュバインの声ならば聞ける場所はございます。そちらの出入り口でしたら、お開け致しますよ」
(何か思い付いた様子の門番さん。その言葉を聞いたクラインも、なるほど確かにと頷いていた。どうやら理解してないのは私だけみたい)
「クライン様、どういう意味ですか?」
「実はシュバインが投獄されている場所にはちょっとした小窓が付いているんだけどな。あ、もちろん逃げられるような高さでも大きさでもねぇんだけど」
「あ、なるほど声と姿くらいは見えるんですね!」
「そういう事だ」
(ちなみにその小窓がある場所に外から行くには、牢屋入り口の近くにある扉からしか行くしか方法はなく、その扉の鍵も門番が持っているのだとか。
で、今回は特別に私のためにそちらの扉を開けてくれるってことかな)
結衣が納得していると、門番がふいに彼女の方を見て、
「このくらいしか協力出来ず申し訳ありません。ですがあのような牢に何の耐性もない女性が行かれるのは、自分としても心配なのです」
「え…あ、はい。そうですよね、分かってます」
(あれ?もしかして門番さん、自分の保身のためじゃなくて、心配してくれてるのかな私を。
案外優しい門番さんなのかもしれないね!)
「では、フローラ姫専属メイドの…」
「結衣です、渡 結衣」
結衣が名乗ると、門番さんはにっこり笑って、
「ではユイ殿はこちらからどうぞ」
外へと続く扉の鍵を開けてくれたのだった。
実は結衣のためを思ってくれていた門番さん。
名前も付いてないモブキャラですが、ちゃんと騎士精神は持ってます。さすがは城に仕える兵士!