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次に向かうべき場所は?

本編お待たせしました!

閑話~シリウス・アルベルト~編は、また後日掲載予定です♪

結衣がクラインの首筋に傷があるのを確認し、取り乱してから数分が過ぎた。

今二人は互いに向かい合うような形でソファーに座り、結衣の淹れた紅茶を黙々と飲んでいる。

だがその唯一の間を繋ぐための紅茶も、まもなく無くなろうとしていた。


(気まずい。ものすごーく気まずい空気が、今部屋中に漂っておりますです、はい。

いやまぁね、こんな空気にしたのは私ですけれども!否定はしませんけどね?!)


チラッとクラインの方を結衣が見ると、バチリと目線が合ってしまった。


「………」


「………」


数秒目を合わせてすぐに、互いにバッと目をそらす。


(なんかこのやりとりどこかで見た事あるような…。あ、分かった。くっついたばかりのカップル達って、こんな感じだった気がする。

……余計に気まずくなったわ!!


それにしてもどうしよう、クラインの首筋にはすでに傷があったのだから、呪術の第一段階はクリアされているわけだ。確か次にやることと言えば…)


光闇魔術書に書かれていた呪術の手順を、結衣は順に思い出す。


「そうだ!呪具さえ手に渡らなければ、まだ防げるかもしれない!!」


「…は?」


「あ…アハハ」


まだ助けられるかもしれないという可能性に気がついた結衣は、その可能性を思わず声に出してしまった。

気付いたときにはもはや後の祭り。目の前には怪訝そうな表情をしたクラインが、説明求むと座っている。


「おいユイお前、今何て言った?」


「アハハと笑いましたが何か?」


「…分かっててはぐらかすなよ。その前だ、俺には“呪具”と聞こえたんだけどな!」


案の定クラインは誤魔化されてはくれないようで、納得の行く説明をするまでしつこそうな雰囲気だ。


「…ごめんクライン、今は説明してる場合じゃない。事態は一刻を争うんだよ!!必ず後で説明する。だからお願い…今は、その傷を付けられた場所を教えて?!」


(早くしないと、呪具が回収されてしまう。その前に私が回収しないといけないんだ)


「…それは、先程の涙と関係があるのか?」


「え…?あ、あるよ。関係大ありだけどどうして?」


そう言った途端、クラインの表情が和らいだ。


「なら仕方ねぇな。説明は後回しでもいいぜ?」


「ほ、ほんと?ほんとにいいの?!」


(正直了承が得られるとは思ってなかったから、驚きだ。最悪クラインの信用を失ってでも、この部屋を飛び出して行く覚悟もしていたのだけれど…)


「ユイ、さっき自分が何について泣いていたか覚えてるか?お前は俺の傷を見て、理由はよく分からねぇけど、俺の事に関して泣いてた。その事に関係するんだろ?」


「うん」


結衣の肯定にクラインはフッと笑って、


「ならーーー俺のために何かしようとしてくれているユイの頼みを、俺が聞かない訳にはいかねぇじゃねぇか」


「あ…」


「ただし、後でちゃんと説明しろよ?」


「うん、うん、うん!クライン、ありがとう!…それにしてもそんなセリフ言われたら、私でもちょっと揺らぐよ心が」


「は?何言ってんだ」


「無意識ですか、そーですか…ハハ、フローラも苦労しそうだなぁ」


一人笑っている結衣に、クラインは怪訝そうな表情だ。

こうして結衣が笑顔になった頃にはもう、二人の間の気まずさは無くなっていた。



「んで?俺が傷を付けられた場所を聞きたいのか?」


「そう、一刻も早くそこに行かないといけないの!」


クラインは少し躊躇った後、


「…俺がさっきまでいたのは、この城にある牢屋の最奥部。シュバインの所だ」


「っ!!じゃあシュバインがクラインを殺そうと?…確かにそれなら、呪術に必要な動機も殺る気も十分だ。なら早速そこに行かなくちゃ!!じゃ、クラインありがとねー」


「待て待て待て」


バッとソファーから立ち上がって、今にも駆けて行きそうな結衣の腕をクラインがガシッと掴んだ。


「何クライン、急いでるんだってば」


「なんで一人で行こうとしてんだ。牢屋の前には門番がいるから、お前だけじゃ入れねぇぞ?それに…」


「それに?」


まったく分かっていない彼女の様子に、クラインはハァと溜め息をついて、


「あのな、危険な場所だとどうして思いつかないんだ!鉄格子で阻まれているとはいえ、中にいるのは罪人ばかりだ。しかもそんな場所に女が一人で来ればどうなるか…想像出来んだろ?」


「あーうー、それは確かにそうかもだけど…」


彼の言い分はもっともである。そんな簡単な事にも気付かないほど、結衣も焦っているのだが…。


「クラインもしかして…心配してくれてるの?」


「なっ!当たり前の事言っただけだろ!!心配なんて別にしてねぇ…」


「ふーん、してくれてないのかぁ」


「…訳でもないけどな!あぁ分かった分かった、一緒に行けばいんだろ?!」


(よし、言質頂きましたぁ~。何だかんだ言ってもクラインって口は悪いけど根は優しいんだよね。

フローラもそんな所に惚れちゃったのかなぁ)


「うん、ありがとうクライン!」


こうして2人は部屋を出て、牢屋の方へと歩き始めたのだった。



お読みいただきありがとうございます♪

今回はちょっと優しいクラインが書けた…かな?と思っております!

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