牢屋での出来事ーシュバイン視点ー
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そして今回はシュバイン視点でストーリーが書かれております。結衣の方はまた後日更新時に♪
ー牢屋最奥部にてー
今はまだ、太陽も昇っていないほどの早朝。
静寂が辺りを包み込み、鉄格子の窓から聞こえてくるのはただの鳥のさえずりで、自分を助けに来たという声は未だ聞こえて来ない。
「くそ、兄上達は一体何をしておられるのだ?!…まさかまだ私のこの悲惨な状況を知らないという事は無いだろうな!」
(昨夜は一睡もしていない。…環境が悪すぎて出来なかったというのもあるが、私は助けを待っているのだ。
助けが来たときに、肝心の私が寝ていて気付かなかったという訳にはいかないのだから)
襲い来る睡魔を誤魔化すために、シュバインは壁を足蹴にする。
ガッガッガッ
「くそっ、こうしてあの忌々しい奴を蹴ることが出来ればどんなに良いだろうな!!」
ガッガッガッガッ
シュバインは、自らの胸中に溜まり続ける憎悪をぶつけるかのように、ひたすら壁を蹴った。
ガッガッガッガッガッガッ
「くそ、くそ、くそっ!」
まるで壊れた機械のように、目には憎悪を宿らせて、足の痛みも気にせず壁を蹴るシュバインの姿は、端から見ればとても一国の王子の姿とは思えないに違いない。
その時だった。鉄格子の隙間から、何かが彼の頭の上に落ちてきたのは。
パサリと音を立てて床に落ちた“それ”を、シュバインは慌てて拾う。
遂に自分を誰かが助けに来たのだ、そう彼は思ったのだ。
「…手紙?」
中を開いて手紙を読む。
書かれている文字の特徴はリーズベルト王家の者では無く、誰か見知らぬ者の特徴だった。
“もしお前がクライン・アルベルトへの復讐を望むならば、お前の中に膨らみ続けるその憎悪。復讐のために役立てよ。”
そのような物騒な前述から始まって、その後には復讐のためにやるべき事が箇条書きで記されている。
1.復讐心を抱きつつ、武器を作れ。
その際鉄格子の隙間を通り抜けられる大きさであること。
2.対象者がやってきたならば、その者の身体に1の武器で傷を刻め。
3.その者の血の付いたその武器を、鉄格子の隙間から投げ捨てろ。それが呪具となる。あとは時が対象を殺す。
手紙の内容はそれが全てだった。
そして奇妙な事にその手紙は、シュバインが読み終えた直後、スウッと空気に溶け込むかのように消えて無くなったのだ。
だがその奇妙な現象にシュバインは、驚くどころか喜んだ。なぜならば…
「ふっ、ハッハッハー!!そうか、知らなかったぞ!私には何て心強い味方が付いているのだ!」
なぜならその手紙の最後には、こう記されていたからだ。
“闇に愛されし東の者”、と…。
その闇の魔女クレアを連想させる書き方と、先程起きた奇妙な現象。この二つが彼に、この手紙の内容が決して偽りではないと告げている。
魔術など、封印状態にあるはずの物がなぜ今使われているのかなどという、浮かんで当然のはずの疑問は、“クラインへの復讐”という言葉で霧散した。
早朝にも関わらず思わず叫んだシュバインに、“うるせーぞ新入り!!”と叫ぶ他の囚人の声など、今の彼には届いていない。
「待っていろ、クライン・アルベルト。必ずお前の恐怖した顔を、私の前にさらけ出してやる!」
そう呟き武器を作り始めたシュバインの口元には、自然と笑みがこぼれていたのだった…。
とうとう闇の魔術が使われ始めました。まだクレアは姿を見せていませんが…。頑張れ結衣、たとえ特殊能力が無くても、作者は君の味方だよ!!