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一度きりの鐘の音

題名にもサブタイトルを付けてみました♪

またちょこっとだけ変わるかもしれませんが、温かい目で見守って頂けると嬉しいです笑




「あ、もう一つ質問したいことが……」


結衣が再び質問をしようとした、そのとき。


ゴーン


突如聞こえたその鐘の音に、結衣の身体はビクッと、否応なく反応した。

開きかけた言葉を飲み込み、鐘の音に耳を傾ける。


……が、それ以上鐘が鳴ることはなかった。


「よし、12時の鐘も鳴ったことだし食べ始めるか」


「そうね、もうお腹ぺこぺこだわ。早く食べたい。あら、ユイどうしたの?そんなに真剣な顔をして」


夢とは違い、たった一回聞こえた鐘の音。

でもそれは確かに、あの夢で聞こえた鐘の音と一致していた。今聞かずして、いつ聞くというのだろうか。


「……ねぇ。今聞こえた鐘の音が、複数回鳴るときって、ある?」


「あるわよ?18時に三回、そして0時に六回鳴るわね」


「っ!!そ、そっか。真夜中の0時に六回、だね?……」


どう考えても、これがクラインの殺される時間に違いないだろうと結衣は思う。

ようするに今から最悪で約12時間後、クラインは何らかの原因で死亡してしまうということだ。


「ったく、どうしたんだユイ。顔色が悪いぜ?具合でも悪いのか?」


クラインの心配そうな声に大丈夫と返して、結衣は顔面に笑顔を貼り付ける。


(まだだ。まだ何も分かっていないうちから、クラインに危険を知らせることはできない)


フローラの時とは、状況が違い過ぎるのだ。

その上たとえ殺されると伝えても、きっとクラインは笑ってこう答えるに違いない。


“そんなの日常茶飯事だな。殺されはしない、倒すから”、と。


事実、そう言えるだけの環境に彼はいるし、倒せるだけの実力もあるから困りものだ。


今回は倒すことはできないというのに。

待ち受けている未来は、“死”というバッドエンドだけだというのに……。


「ほらユイ、食べましょ!」


フローラの笑顔に、結衣は今考えていた思いを払拭する。彼女の笑顔には、どんな不安も吹き消す作用でもあるのかもしれないと密かに思いながら。


(そうだよね、私はフローラをちゃんと救えた。

夢のバッドエンドは変えられると、そう証明したじゃない!マイナス思考は今はやめよう。とにかくまた、一から考え直せばいいだけだ)


「ーーーうん、いただきます!」


結衣の顔面に張り付けられた笑顔がいつの間にか、本物の笑顔へと変わっていることに気付き、クラインはフッと笑うのだった。









しかし、現実は厳しいもので……
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時は過ぎ去り23時。

今結衣は、自室で頭を抱えている。理由は明白、あっという間に問題の夜が訪れてしまったからだ。

窓から見た城下町はすっかりと闇に包まれて、夜が深くなって行くのが見て取れる。


「まっずーい。いや、どうすんのほんと!結局あの後色々考えてはみたけれど、死因が毒以外に思いつかないまま夜になっちゃったこの現実……」


そう、実際あの後クラインに、それとなぁく体調不良とか聞いてみたりもしたのだが、めちゃくちゃ万全と答えられてしまったのだ。

ちなみに持病も無いという。


(良いことですよ?健康なのは。これがいつもだったらね!……今は少しでも手掛かりが欲しいというのに、結局半日のほとんどを得るものないまま過ごしてしまった)


「……とにかく問題の時間が迫ったら、彼の部屋の近くまでは行ってみよう。何か分かるかもしれないしね」


考えるよりは行動派の結衣にとって、何もしないで問題の時間を過ごすよりは、何か行動していた方が落ち着くというものだ。


「フローラには絶対にバレないように行動しないと」


もし……もしもの話だが、仮にクラインを助けられなかったとしよう。

その時にフローラがそばにいたら?

彼女は夫の、クラインの不可解な死の目撃者となるだろう。


「ダメ、それだけは絶対に。彼女を悲しませるような行為を、敢えてとる必要はない」


それだけはしないと心に誓って、結衣は問題の時間まで、せめて心を落ち着かせるよう努めるのだった。



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