国王と専属メイド
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ー国王の執務室にてー
「あれ、フローラがいる」
「あらユイ、城内見学は順調?今ちょうどお父様に、新しく専属騎士をつけるのかについて伺っていたところよ」
執務室の扉を開けた途端、予想外の人物がそこにいて、クラインも結衣も驚いた。
(新しい専属騎士と聞いて、クラインの顔が少し不機嫌になったように感じるのは、私の気のせいでしょうかね)
「……あぁ、その件もあったな。というか専属騎士が途中で変わるなんてこと、俺が言うのもなんだが、前代未聞じゃねぇか?」
クラインの言葉に、国王も頷く。
「そうだな、前例の無いことではある。だが今後、無しというわけにもいかんだろう」
「……分かってますよ」
(あ、嫉妬してる?これは嫉妬してますなクラインさん!まぁ気持ちは分からなくもないけどさ)
「まぁその話はまた改めて場を設けるとしよう。して、二人は何の用かな?クラインは想像が付くが……」
国王の言葉にクラインは軽く頷き、言葉を返す。
「はい、任務終了の報告をしに参りました」
「……ネズミの反応はどうだった?」
「チューチューとそれはもう、喚いてましたよ。檻から出せとうるさかったです」
(ネズミ?何の話だろう。会話についていけないけれど、多分それで良いんだよね。“ネズミ”ってどう考えても誰かの比喩だし)
きっと自分かフローラに聞かせたくない話なのだろうと、結衣は察する。
こういうときは、深く詮索しない方がいいだろう。
「そうか、分かった。それでユイは何の用かな?」
「あ、いえ私は国王様に用というより、ただクラインに魔女の封印について聞きたいことがありまして。そうしたら話はここで聞くと言われたものですから」
彼女の言葉に付け加えるようにして、クラインも激しく同意する。
「こいつ、廊下でいきなり聞いてきたんですよ?!さすがにマズいんで、こっちに連れてきたんです」
「なるほどな、理由は分かった。だがなユイよ、今朝も話した通り、封印に関する情報は無闇に王族以外には漏らせんのだよ。理由は話しただろう?」
「そうですね、理解はしています」
(分かってますよアイヴァント国王。この件に関しては、絶対に私には話さないということは……でもこればかりはこっちも譲れないんだよね)
魔女の封印が弱まっている、もしくは解けているかもしれないなんて、理由も言えない結衣が言っても、絶対に誰も信じてはくれない。
しかしもし、正夢という魔術だけでなく、その夢の内容にも魔女が関わることが出来るようになってしまったら?
一般人の彼女には、打つ手が無くなる。
結衣にとっては、それが一番恐ろしいのだ。
だから結衣も、簡単に引き下がるわけにはいかないのだ。
「……国王様、この部屋にはフローラ様がおられますね!」
「ん?あ、あぁそうだな。それがどうかしたのかい?」
「そして私はフローラ様の専属メイド。この部屋にいることになんの問題もありません。そうですね?」
(王族三人が私を見て、“こいついきなり何言ってんの?”という顔をしているけれど、気にしない気にしない!)
国王も結衣の意図が読めなくて、怪訝そうにしている。
「そうだな、別段問題はないが?」
「では、今からここで“たまたま”魔女の封印に関することをどなたかがお話ししても、私がこの部屋を出て行く理由にはなりませんよね!」
(会話の最後は笑顔も忘れてはいけない。はーい、笑って笑って私の顔~!)
にこやかぁな笑顔で結衣が国王にそう言いきると、フローラとクラインがビクッと反応した。
ちなみに結衣の言いたいことを理解した国王は、笑顔の彼女に笑顔で返してくる。
(さすがは国王。動じないな……)
「……確かに一理あるなぁ、ワタリ・ユイ。だがそれは、あくまで我々が“たまたま”話をする前提。しないという場合もあるぞ?なにせ“たまたま”なのだからな」
(そっちがその気なら、こっちだって動じませんよ、国王様?)
にこやかな笑顔は維持したまま、結衣は“そうですねぇ”などと余裕を見せてみる。
「…………」
にこにこにこ。
「……もうよい、わしが負けるとしよう。このまま黙っておっても、ここを動いてくれはしなさそうだしな」
「ありがとうございます、アイヴァント国王様!!」
「……お主、専属メイドにはもったいなかったかもしれんなーーーさてフローラとクラインよ、魔女の封印の話でもするとしようか」
「ユイ、お前すげぇなーーーはい、義父上」
「ふふっ、さすがはユイね!ーーーえぇ、お父様」
明かされる魔女の封印方法とは、果たしてーーー。