リーズベルト国の意向
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そして一方、ガールズトークの中心の話題となっている当人はと言えば……
「……は、ハックションッ!ーーーくそ、風邪か?」
結衣にフローラが待っていることを伝え、王妃と別れたクラインは、盛大なクシャミをしながら今日の最初の仕事をこなすために、ある場所へと向かっていた。
ちなみにクラインは既に姫の専属騎士ではなく、次期国王であるため、その仕事内容も一変……するかと思いきや、今のところその様子は見られない。
取りあえずしばらくは、国王に頼まれた仕事をこなすという形に落ち着きそうだ。
「……さてと、朝一番からこの仕事内容。あまり気乗りはしねぇが、国王命令ならやるしかねぇよな」
今朝ではなく、夜の謁見でクラインは、国王からある仕事を頼まれていた。
それは、シュバイン王子にリーズベルト側の意向を伝えるというもの。正直あの顔を朝から見たくは無いが、国王の命令なのだから仕方ない。
「それにしても、あそこまであっさりシュバインを見放すとはな。ほんとに家族かよ、あれ」
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ー夜の謁見にてー
結衣が謁見の間を去った後、国王に命じられていたシリウスは、ものの数分で謁見の間にリーズベルト国の王族を連れて来た。
リーズベルトの国王は国に残っているためいないが、第一王子と王妃、そして騎士らしき人が国王の前に横一列に並ぶ。
そっとクラインがアイヴァント国王を見上げてみれば、にこにこと微笑みを絶やさずにいた。
(うわ、不気味だあの笑顔。何考えてんだかまったく心の内が読めねぇ。少なくとも、自分の娘を殺そうとしてた奴の家族に向けるもんか?)
「……さて、こんな夜更けに集まってもらい感謝しますよ?リーズベルト国の方々よ」
「このような時間にお呼びとは、余程の事とお見受け致します。アイヴァント国王」
第一王子がアイヴァントに軽く一礼して、用件を話すよう、遠回しに頼む。
「そうですな。第一王子殿の言う通り、これは我が国にとって想定外の事態でしてなぁーーーそちらの第二王子であるシュバイン王子が、我が娘フローラに刺客を差し向けようとしていたみたいでね?これは結婚式の前に事情を伺わねばと、お呼びしたのですよ」
そうアイヴァントが言った途端、リーズベルト国の者達の顔が、サッと青ざめた。
だがさすがは次期国王。
第一王子はすぐに青ざめた顔を元に戻し、反撃を試みる。
「そ、それは何かの勘違いではございませんか?刺客を差し向けた首謀者が、シュバインに罪をなすりつけようとしているのかもしれません」
「なるほど?一理ありますな。……ですが第一王子殿、このような内容、確かめずに話すとでもお思いか?」
暗に“証拠があんだぞ、こっちには”と言われた第一王子は、一瞬悔しげな顔をした。
その表情を見て国王はさらに追い討ちをかけるように、畳みかける。
「それはそれは面白いほどよく自白してくれてね。いやはや、リーズベルト国では素晴らしい教育をしているようだ」
今度は暗に国王から、“自白したのお前の弟だよ?王族として、どうなのそれって”と言われ、第一王子の握りしめた手がわなわなと震える。
「さて、この件はリーズベルト国はどこまで知っておられるのかな?まさか自分の家族がやらかしたこと、何も知らないでは通りませんぞ」
王妃はただただ自分の息子の言葉を見守るだけで、口を開く気配は無い。
その息子はといえば、おそらく必死でこの状況の打開策を練っているのだろう。
しばらく謁見の間に、重々しい沈黙が続いた。
そして、その沈黙にクラインが嫌気がさした頃、第一王子が口を開く。
「……その首謀者とやらは、本当に第二王子でシュバインと名乗っているのですね?」
「あぁ、名乗っておるぞ。ここにいる二人の騎士もそれを証明してくれる」
そうだな?シリウス、クラインと名を呼ばれ、二人は第一王子に軽く頷き肯定した。
「……でしたら、その者は身分を偽り、勝手にリーズベルトの王族を名乗る不届き者でございます。どうかそちらのお好きなように処罰なさって下さい」
そう言った途端、その場にいた第一王子以外の全ての者の表情が凍りつく。
全ての者が、“何を言ってるんだこいつ”という目で第一王子を見ている。
「な、何を言ってるのです?」
「おや、母上はご自分が産まれた子供の数をお忘れですか?」
その言葉に、おそらく全員が理解した。
第一王子の言わんとしてる内容を。
「いいえ、いいえちゃんと覚えています」
「ではそれは“何人”ですか、母上」
「…………」
母にとって、こんなに残酷な瞬間はあるだろうか。
国のためとはいえ、我が子の存在を、一人否定しなければならないのだから。
あまりにも酷い発言に国王も、苦い顔になる。
「……第一王子殿、それは少々無理が過ぎるのではないか?」
「はて、何の事でしょうか。さぁ、母上お答え下さい!」
わずかな沈黙の後、ようやく王妃が口を開く。
その目は何かを諦めたかのように陰っていた。
「……一人、ですわ。私の子供は、今横にいる息子、ただ一人にございます」
国の保身のためとはいえ、王妃はシュバインを産んだ事実を、今否定した。
この世界にはDNA鑑定など存在しないのだから、母親が否定してしまえばそれを覆すのは容易ではない。
ようするにここに今、シュバイン・リーズベルトという王族は存在しなくなり、シュバインは家名の無い、ただのシュバインとなった。
事実上、これが彼のリーズベルト国王族からの廃嫡が決定した瞬間であったーーー。
明日から夏の間は更新の時間が不規則になりそうです汗
でも更新はなるべく毎日する予定なので、お待ち頂けると幸いです♪