白紙の本
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「ユイ?どうかしたのですか?さっきから、微動だにしていませんけれど……」
クラウディアの心配する声に我に返った結衣は思わず、白紙じゃないページがあると声に出しかけた。
だが言おうとしてはたと気付く。
そんなページがあるのならば、すでに知られていないはずがないということに。
その上読めるページに書かれている内容が、自分の能力に関するものだということも気にかかる。
(よし、とりあえず一応再度確認しよう)
「あ……えーと、いえ何でも無いです。それにしてもこの本って、ほんとに“全ページ”白紙何ですね。どうしてこんな誰も読めない本を、彼女達は残したんでしょうか」
「ーーーそうね。その本の内容が読める人なんて、魔女くらいですもの。真実は魔女のみぞ知るというところね」
(あーやっぱり、この内容が読める人は魔女だけなのか……ということは、この本は一見全ページ白紙の本である、と────あれ?いやでもそれっておかしくありません?だって私は魔女じゃないよ?!魔女じゃないけど、一部読めちゃってるよ?!)
読めることを知られたら、どうなってしまうのか。
嫌な予感がしながら結衣は王妃に尋ねてみる。
「……ちなみにこれ、読める人が現れたらどうなさるおつもりですか?」
「変な質問ですね。そんなこと、決まっています。読める人など現れるとは思えませんが、もし現れたとしたら……その人は間違いなく魔女であり、封印が解かれた証拠です。国は全勢力を持って、その人を封印するでしょう」
ようするに、この本が読める=魔女で、バレたら問答無用で再封印するということだ。
(……あっぶなーっ!!封印されるところだったよ私!!言うの思いとどまって良かったぁ。セーフセーフ!!ボロ出さないうちに、話題をこの本から変えよう)
「そ、そういえば魔女というのは、いつ頃に存在したのですか?」
本の状態からして、かなり古いことは推測できる。
「そうですね、封印されて、まもなくちょうど400年だったはずですわ」
「そんなに経つのですか?!なるほど、確かにそれだけの時間が経過していたら、封印が解ける可能性を恐れるのも仕方ないですね」
「えぇ、その通りなのです。民を守るのが我々の責務。にもかかわらず、情けないですわね……」
(ちょっ、落ち込まないで王妃様?!気まずい、気まずいよ?この空気!!)
静かな図書館の空気がやけに重くなった、ちょうどそのとき。
図書館の扉が開いて、クラインが中に入ってきた。
「あ、こんな所にいたのかユイ。フローラがお前と、もっと話がしたいって探してたぜ?────って、王妃様も一緒におられるし。まさかユイが何か失礼を?!」
(私が失礼をした前提かいっ!クライン、あなたは私に失礼じゃないですかねぇ?!)
「いいえ、ユイはとっても礼儀正しい方でしたよ?私がお話に誘ったのです。それよりもクライン、私はもうあなたに、“王妃”と呼ぶより相応しい呼ばれ方があると思うのですけれど?」
指摘を受けたクラインは少し恥ずかしいのか、顔を赤くする。
「すみません。は、義母上」
その呼び方に満足したのかクラウディアは頷いた。
「フローラが待っているのでしょう?ならば私との談話は、今はここまでにしましょうか。考えることが同じだなんて、さすがは私の娘ですね」
「はい、お付き合い下さりありがとうございました。では王妃様、失礼させて頂きます」
手に持っていた例の本を王妃に託し、結衣は一礼する。
「あぁ、この本を見せてもらってたのか。こんな白紙で何の本なのかも分からないやつ、見ても面白く無かっただろ。まぁこんな本、珍しくはあるけどな」
「うん、確かに珍しいね。それで、フローラは部屋に?」
「あぁ、部屋で待ってるぜ」
フローラの居場所を聞いた結衣は、再度二人に一礼し、今度こそ王室図書館をあとにしたのだった。