王室図書館
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時は過ぎ去り朝食後、食事の間にて。
結衣はフローラの専属メイドであるため、朝食も王族と取ることを許されていた。
食事の間を出ようとしていた結衣に、こっそりと王妃クラウディアが話しかけてくる。
「ユイ、この後の予定は何かあるかしら?私あなたともう少しお話してみたいのだけれど」
(え、王妃様と二人でお話?!一体何を話せば良いというの……せめてクラインか誰か一緒に来てくれればいいなぁ───って、もう誰もいないし!)
「わ、私は大丈夫ですが、王妃様の満足されるような話が出来ますかどうか……」
「そんなに大層に考えなくて良いのですよ?私はただ、新しくフローラの側に付く方と、女同士仲良くなりたいだけなのよ」
(マジですか。いや、親しみやすい人に越したことはないけれど……それともこれって何か試されてたり?!よ、よーし。とりあえず乗ってやろうじゃない!)
「分かりました。ではしばらく宜しくお願い致します、王妃様。どこか場所を変えられますか?」
仲良くなるといっても限度はある。
どんなに話しやすそうな人であっても相手は王妃。
メイドの結衣とは立場がまるで違うのだから、せめて礼儀と態度で、その区切りは示すべきなのだ。
「そうね、ではゆっくり話しやすい所に移動しましょうか。私本が大好きで、よく王室図書館に行くのだけれど、この時間なら静かであまり人も来ないですから、そこにしましょうか」
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(というわけで、やってきました王室図書館。
城内にこんな大きな書庫があったなんて、正直感動してます私!)
「凄い、これ全部異世界の本なんだ。どうしよう、興奮が止まらない!コンプリート精神が刺激されるっ!!」
結衣が一人で興奮していると、クラウディアが不思議そうな顔をした。
「どうかしたのですかユイ。もしかして、あなたも本がお好き?」
「はい!それはもう、大好きです!部活は図書部に入っていたくらい好きです!!」
「としょ……ぶ?それが何か分かりませんが、あなたも本好きだということは伝わって来ました。趣味が合って嬉しいわ」
クラウディアの一通り見て回りましょうという提案に即賛成して、結衣は気になった本を手に取りながら図書館の中を探検する。
本の種類は実に豊富で、歴史書をはじめ地方の特徴が書かれた本や生息する生物の本など、様々だった。
ただ一つ残念であったのは、なかなか魔女や魔術に関する本が置かれていないということだろうか。
先程から念入りに見てはいるのだが、今のところ一冊も見つけられていない。
「あの、王妃様。魔女や魔術に関する本はどこにあるのですか?さっきあのような話を聞いたので、つい気になってまして……」
「……あぁ、ごめんなさい。それらに関する本は存在しないのです。彼女達が遺すことをしなかった───いいえ、必要性を感じなかったのでしょうね。魔術を使える者なんて、彼女達しかいないのですから」
(あ、そうか。それもそうだよね、残念。
じゃあ王族の魔女や魔術に関する知識は……)
結衣がそう思っていると、その疑問を読み取ったかのようにクラウディアは話す。
「王族内での口伝と、一部は歴史書にも書かれています。あ、そういえば一冊だけ、それらしき本はあるのですよ」
そう言って彼女が取り出して来たのは、古びた一冊の本。他の本に比べて、だいぶ時間が経過しているようにもみえる。
「それは?」
「“光闇魔術書”と題名にあるので、魔女の本なのでしょうね」
「あれ、あるんですか?魔術書」
言われて見ると、たしかに本の題名にはそう書かれていた。
クラウディアは結衣に、中を開いてみるよう促してくる。パラパラと最初のページをめくってみると、予想外の内容が表れた。
「え……何これ、中身が白紙?!」
そう、その本の中身は白紙だった。
内容が一文字も書かれていないのだ。
「そうなのです。こんな奇妙な本はこれ一冊ですから、魔女の書いた本に違いはないのですが……」
何分白紙であるため、存在しないのと結局同じなのだとか。
結衣は何気なくパラパラとページをめくっていった。
何か元の世界に帰る方法などが見つかればいいといった願いを込めて。
「ん?……あれ」
本をめくる途中で、最後の方で手が止まる。
なぜならあるページの一部に、文字が書かれているのが結衣の目に飛び込んで来たからだ。
さらに結衣を驚かせたのはその内容。
聞き覚えのある内容に、思わず結衣はそのページを凝視していた。
“正夢……その魔術にかかった者は、不思議で悲しき夢を見る。その者は後に、その夢の内容を現実で目にすることになるだろう。その者、夢の内容を変えるべく奔走す。これは避けられない運命なり。そしてその者、正夢について他言を禁ず。破られし時……夢で死にゆく運命の者、呪いを受けてその場で死す”
まさにあの、不思議な声が教えてくれた自分の能力の内容と、見事に一致していたのだった。