悪夢は再び始まって……
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ー結衣の夢の中ー
ふと気がつくと、私は見覚えのある部屋にいた。
窓から見える景色は暗く、ただ月明かりだけが輝いて、今が夜だと教えてくれる。
『ここは……クラインの部屋?』
くるりと部屋を見渡すと、ベットで眠る人影が目に留まった。
そっとベットに近づいて、その人影を覗き込む。
金色の髪と、王子様みたいな整った顔をした彼が、私の目の前で静かに眠っているのが分かる。
『やっぱりクラインの部屋だ。え……と、これはもしかしなくても夢、だよね?』
だって夢でもなければ、こんなに近づいたら警戒心の強いクラインが起きないわけがない。
そもそも私自身、起きてここまで来た記憶がない。
『でもなぜこんな夢を?私は現世に帰るはずなのに。何だろう、この嫌なデジャヴは……だって、この展開はまるで……』
その先を言う勇気は、残念ながら私にはなかった。
代わりに心のどこかが叫び、警鐘を鳴らしている。
この状況はまるで初めて見た、あのファンタジックで、でもバッドエンドな夢のようだと─────
その警鐘は私の中で次第に大きくなっていき……
ゴーン
不意に聞こえた鐘の音に、私の肩がビクリと跳ねる。
「ぐっ」
その鐘の音が聞こえた直後、突然苦しむ声がした。
その声はベットの中から聞こえてくる。
『クライン?!』
ゴーン
また一つ、鐘の音が聞こえた。
「ぐぅっ……くはっ」
クラインの苦しむ声が、より強くなったように聞こえる。
ゴーン
「あ……あぁぁ、い、息がっ!!」
苦しさに目が覚めたのか、クラインの水色の瞳が露わになる。
ゴーン
『クライン!どうしたの?!一体何がっ!』
私の必死の叫び声はおろか、クラインには私の姿すら見えないようだった。
それもそのはず、ここは私の夢の中なのだから。
ゴーン
鐘の音が聞こえる度に苦しみが強くなっているのか、整った顔から死相が見えた。
空を掴むように、伸ばされた右手を握ろうと手を伸ばすが、触れることすら叶わずにただ、すり抜けてしまうだけ。
『クライン!しっかりして!!お願い、誰か!!この状況を誰か気づいて!!』
助けも呼べない。かといって、助けられるわけでもない。
手を握ることさえ出来ずに、今の私は……
あまりにも、無力だった───────。
ゴーン
この鐘の音は、一体何回目の鐘か。
もはやそれすら分からない。
「ぐっ、はっ……かはっ……───────」
クラインの苦しむ声が、急に途切れた。
その後に訪れた静寂が、私の恐怖を駆り立てる。
『く、クライン?ねぇ、お願い……返事してよ、クライ───ンっ!!』
クラインの名を呼び続けるが、それに対する反応はない。
それどころか私は、自分の意識が薄れていくのを感じていた。
あぁ、視界がぼやけてく……ダメだ、意識が途切れてしまう───────
『クライン────』
彼の名を呟いたのを最後に、私の意識は暗闇に消えてなくなったのだった。