番外編 4 “はじめてのともだち”★
今回で番外編ラストです。
また、千岩様よりファンアートを頂きました!(//∇//)
ありがとうございます♪
デカバチを倒したのを見届けると、シリウスが窓から二人とも謁見の間に来るようにと叫んできた。
「じゃ、行くか」
「そうね。でもその前にクライン、その顔の血洗い流しましょ?あっちに井戸があるわ」
案内された井戸で顔を洗い終えると、フローラが何かを差し出した。
「はいこれ、顔拭くのに使って?綺麗だから大丈夫よ」
渡してくれたハンカチを有り難く受け取って、クラインは丁寧に顔を拭く。
「ありがとな、後で返すから」
「じゃあ、お父様の所に行きましょうか」
「あぁ、そうだな」
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そして、謁見の間に戻って来たクラインは、突然親子喧嘩の渦中に巻き込まれていた。
「フローラ、勝手に城を抜け出すなと何度も言っているだろう?護衛も連れずに……。そなた、もしクラインがいなかったら、どうなっていたことか」
「だ、だってお花が綺麗だったんだもの!ほんの少しのつもりだったのよ?お父様。そんなに心配なら、早く専属騎士が私も欲しいわ!!」
そう、現在フローラは専属騎士を付けていない。
なぜならそれは王家のしきたりで、専属騎士を付けるのは10歳の誕生日という決まりだからだ。
それまでは国王の選んだ精鋭達が、密かにフローラを見守っている。
ちなみに今回も事前に国王に言われていた通り、クラインの実力が伴わなければ、フローラの護衛をしに現れただろう。
「しきたりは知っているだろう?なら、我慢なさいーーーさて、クラインよ」
唐突に親子喧嘩が終わりを迎え、予期せず自分の名前が呼ばれたことに驚いて、おもわず返事の声が上擦る。
「此度はフローラを守ってくれた事、深く感謝する。その幼き身体でよくぞ傷一つ負わずにやり遂げた。礼に何でも一つ、褒美をやろう。何が欲しい?」
「クライン、私からも改めて感謝を言うわ。ありがとう」
二人の王族からの感謝の言葉に加え、何でも褒美を与えると言われたクライン。
しばらくクラインは考えていたが、どうやら何かを思いついたらしい。
「何でも良いのですよね?ーーーでは」
シリウスの、何か国王を困らせるようなものを頼むのでは無いかという不安げな顔が見える。
反面に国王とフローラは、にこにことして、クラインの言葉を待っていた。
「俺に、フローラのともだちにならせて下さい。呼ばれればいつでもそばに行くことの出来る、そんな権利を」
その言葉にフローラは唖然として、何も言っては来なかった。
一方、さすがは国王。片方の眉を少しあげた程度の驚き方で、クラインを見ている。
「本当にそんなことで構わないのか?考えている最中なら、あとででも良いのだぞ」
「いいえ、今俺が一番欲しいものは変わりません」
その言葉にニヤリとして国王は、
「ならばそなたに権利はやろう。だがそれを受け入れるかはフローラ次第。フローラ、どうする?」
“そんなもの、聞かなくても分かるでしょ”とでも言いたげに、フローラはクラインに微笑んだ。
「私もクラインと、本当のともだちになりたいです!」
ほんのりと顔を赤らめて答えたフローラに、クラインの胸が再びドキリとする。
でもそれが何なのかを彼が知るのは、まだだいぶ先の話ーーー。
これは、姫に本当のともだちがはじめて出来たときのお話。
これは、姫と未来の騎士の、出会いの物語ーーー。
ーーーーーfin
次回からは第三章突入します!
どうぞお楽しみに♪