第二章 エピローグ
新たに評価してくださった方ありがとうございます!
ものすっごく嬉しいです(≧∀≦)!!
第三章も頑張る気湧いてきました!!
結婚式が無事に終わり、バルコニーに移動するまでの間、クラインはフローラの質問攻めにあっていた。
移動しているメンバーは全部で三人。
クラインとフローラ、そして結衣だ。
「一体どういう事だったの?クライン。どうして新郎が、いきなりシュバイン様からクラインに?」
「……嫌、だったか?」
「べ、別にそんなこと言ってないわ!嬉しかったわよ────って、誤魔化さないの!!」
(何だろう、前で交わされているこの甘々な会話は。ものすごぉく私、邪魔者な気しかしないのですが)
二人とも、両想いだったことがよほど嬉しかったのだろう。
聞いていて、恥ずかしくなるような会話は尽きない。
「そんなことよりも、まだ紹介していなかったな」
そう言ってクラインは後ろを振り返り、結衣を指差す。
「彼女はワタリ・ユイ。今回の結婚式で、まぁ色々と世話になった。あ、ちなみに今日からお前の専属メイドだからよろしく」
「い、色々と?曖昧過ぎてよく分からないわ。いいえ、それよりも聞いてないわよ。専属メイドなんて、そんな話」
それはそうだ、だってその称号を結衣が授かったのは真夜中。
そのまま朝が来て結婚式が始まり、今に至るのだから。
「勝手で申し訳ありません。国王様から昨夜、頂いた称号なのです」
「え、お父様の?……驚いたわ、私への顔合わせも無しに決めるなんて、初めてじゃないかしら────そういえば教会でも、お父様やお母様、それにシリウスと同じ位置にいたわよね。ユイ、あなた一体……」
「まぁまぁ、事情は今度説明するから。今は取りあえず落ち着けよ、フローラ。少なくともユイの存在は、俺とシリウス、国王に認められてるぜ?」
(改めて聞くとすごい面子に認められたものだね。国の最高権力、ほぼ勢揃いしてるし……)
でもそれは同時に、結衣が頑張った成果の証でもある。それが彼女には素直に嬉しかった。
「ほらバルコニーに着いた。覚悟は良いか?────国民が、待ってる」
バルコニーの扉の前にたどり着き、クラインがフローラに問う。
「みんな驚くでしょうね。だって旦那様がいきなり、シュバイン様からクラインに変わっているんだもの」
「そうだな────それに、俺が未来の国王としてみんなに認められるか……正直不安なんだ」
(国民にとってあの隣国の王子は好印象だったはずだ。それに比べて俺は……いきなりしゃしゃり出てきた、ただの貴族の息子。悔しいが、あいつとは階級も信頼度も違うだろうな)
いくら騎士をやっていたとはいえ、それは姫の専属騎士。国民とはシュバインほど深く関わりを持っていない。
フローラに覚悟の是非を聞きながら、今一番それを問いかけたいのは自分自身に対してだった。
幾分か暗くなったクラインの表情を見て、フローラはクラインを励ます。
「大丈夫、私もついてるわ。それに、そんなことで悩む暇など無いのよ、未来の国王様?────私達はどんなときでも、国民に笑顔で接するの。国のトップが不安そうな顔をしていたら、国民だって不安になるでしょう?」
「それは、そうだが……」
自信のないクラインを、フローラは優しい言葉で励ました。それに同感するように結衣も頷く。
「そうだよクライン。自信を持って────そして、笑おう?」
二人からの励ましで、クラインにもようやく笑顔が戻った。
「────そうだな、悪い。柄にもないこと言った気がする。ありがとな!二人とも」
バルコニーの扉が、内側からゆっくりと開かれる。
出てくる気配を感じたのか、ワアッと花畑から歓声が聞こえた。
そしてクラインとフローラがバルコニーの手すりの近くまで進み、その姿を国民が目にすると……
一瞬の静寂、そしてざわめきが花畑から聞こえた。
フローラがクラインの手を、安心させるようにギュッと握る。
その温かさに感謝して、クラインはざわめく国民のいる方を向き直った。
「驚かせてすまない。フローラの隣に立っているのが隣国の王子ではなくて、動揺している者も多いだろう。だが俺は────クライン・アルベルトは、先程の結婚式でフローラ・エメラルドに求婚し、無事に式を済ませて来たことをここに報告する」
そこで一度言葉を切り、クラインは国民を見回す。
ざわめきは最早どこにもなく、誰もが彼を見上げてその言葉を聞いていた。
「勝手だとは、思っている。皆にとって彼女の夫は未来の国王。それを勝手に変えるなと、そう意見する者もいるだろう────だからどうか今は俺を、“未来の国王”としてではなく、ただの“フローラの夫”として見てほしい。だが将来、皆の期待に応える国王に、俺は必ずなってみせると約束しよう」
“どうか今は見守っていて欲しい”と述べて、クラインは話を終えた。
そしてその国民の気持ちを考えた真摯な願いは、彼らの心を動かしたのだろう。
彼の言葉が終わるとともに、ワアッと盛大な歓声が湧く。そして彼らは口々に、幸せな二人を祝福し始めたのだ。
その声を聞いて、ホッとしたようにクラインはフローラと互いに目を合わせ、笑ったのだった。
少しだけ……ほんの少しだけ、夢の内容が違う形で実現するのではないかと、二人の背後で心配していた結衣もその表情を見て、あぁもう大丈夫だと確信が持てた。
(このループを抜けるためのハッピーエンドは、
“クラインがフローラの夫になる”ことだったんだね)
相思相愛の彼らにとって、これほど幸せなハッピーエンドはないだろう。
幸せそうな二人を見て、結衣も自然と笑顔になる。
『おめでとう』
聞き覚えのある声で、賛辞がどこからともなく聞こえたような、そんな気がした結衣だった。
そして、結衣が現世に帰れないと気付くのは、それから少し後のこと。
それはまた、次のお話───────
明日から、“番外編総合ポイント50達成記念エピソード”入ります。
内容はフローラとクラインの出会いの物語。
どうぞお楽しみに♪