真夜中の謁見
新たにブックマーク登録してくださった方ありがとうございます!これからもよろしくお願いします♪
そして、ごめんなさい!今回で第二章完結予定だったのですが、回収してたら長くなってしまいました笑
もう少しお付き合い下さい♪
チュンチュンと鳥のさえずりが窓から聞こえ、あぁもう朝かと実感する。
昨夜は色々な事がありすぎて、あまりよく眠れていないクラインは、ガシガシと頭をかきながら、ふぁぁと一つ大きな欠伸をした。
あの騒動のすぐあと、クラインとシリウス、そして結衣は国王に謁見を申し込み、夜中だというのに様々な報告を彼にした。
(初めての国王との謁見で、その迫力にユイは気圧されていたっけなぁ)
主にシュバインの陰謀に関する報告が長く、捕らえたシュバインからの聴取と、ミシェル・フレデリスからの手紙を照らし合わせて説明を行った。
口を割らせるのは困難を極めると思われていた陰謀の内容については、案の定シュバインの護衛達は全員口を割らなかった。
だが結局それは、彼らの主の自白によって意味をなさない事となる。
王子である彼にとって、“牢”などという汚く薄暗い場所に入れられたことがよほど堪えたのか、ものの数分で全てを吐いたのだ。
これが自国の王になる予定だったのかと思うと、呆れて気が滅入りそうになるクラインであった。
「……ユイがいなければ、俺達は取り返しのつかないことをしてしまうところだったんだよな」
そう。王族にとって、結婚はとても重い意味を持つ。
夫に選ばれた者はいずれ自国の王となる者であり、また王族は離婚を決して許されない。
王族の名誉に関わるうえに、国家の中枢を────国の機密事項を知ってしまった彼らが他国に放たれれば、それは自国の内部情報をそのまま流すことに繋がるからだ。
「昨日会ったばかりだというのに、何故だか知らない仲には思えないのが不思議だな……メイドだからか?」
ループによって、結衣との出会いはクラインにとってまだ2日目。
にも関わらず感じる親近感に、クラインは首をひねる。
そして、今日はフローラの結婚式当日。
昨夜の騒動を何も知らないフローラは、今頃どうしているのだろうかと、クラインはフローラに思いを馳せた。
余談だが、今のフローラの部屋の内装は、すべてシュバインが用意した。
“妻の部屋の内装は自分が用意しよう”と告げられ、部屋は何から何まで変えられた。
(正直俺は、あの部屋が好きじゃない。あの部屋には、フローラの趣味が反映されていないからな)
初めて入ったときにひどく違和感を持ったが、特に気にはしなかった。
だが今なら理由が分かると、彼は思う。
あの部屋はフローラのための部屋としてではなく、紛れもなく“シュバインの妻”のための部屋なのだ。
ようするに、ミシェル・フレデリスのための部屋だったのだから、フローラの趣味ではなくて当然だろう。
「それにしても、昨日のユイの願いには驚いたな……まさか、あそこまで欲の無いやつがこの国にいたなんて!」
昨夜結衣は国王からこの件に関する功績を称えられ、ひどく感謝された。
それもそのはず、彼女は一人娘の命を救ってくれた恩人なのだから。
「ワタリ・ユイよ。此度は本当に感謝する。そなたがなぜメイドと偽りこの城にいるのかは、この際不問としよう。それ以上の働きを────我々を信じさせるほどの働きを、そなたはしてくれたのだからな」
「……ば、バレてましたか。でもその理由は紛れもなく、フローラ姫様のためです。それ以上でも、それ以下でもありません、国王様」
いつの間に自分がメイドではないとバレたのだろうと不思議に思っていると、結衣の隣で主に膝をついているシリウスが、ニコリと微笑んだ。
(ああ……やっぱりと納得ですね。恐るべし、シリウス兄の仕事の早さ!)
「さて、そなたにはそれ相応の褒美を出さなければな。いくら出しても、我が娘の命の価値には及ばぬ。何でも申してみると良い」
「そうだぜユイ、こんな機会めったに無い。金か?地位か名声か?この件がいずれ露見すれば、お前の名を広める事など簡単だぜ」
国王とクラインの言葉に、結衣はしばらく考え込む。
そして、何かを思いついたのだろう。
にっこりと、それはもう良い笑顔で彼女は口を開いた。
「そうですねぇ……では、明日の結婚式に出席できる権利を。あ、あとバルコニーに私も入れればそれで!」
結衣のまさかの申し出にクラインは絶句した。
「────っ!お、お前……欲ってもんはねぇのか?!金でも地位でも名声でもなくて、明日の結婚式の出席権?!」
一方、国王とシリウスは、ククッと楽しげに笑っている。
「そなた本当に欲がないのう。まぁ良い、その申し出はもちろん許可しよう。此度は本当に感謝する」
「何ならまだ貰い手のいない弟を、貰ってくれても構わないよ?オマケさオマケ」
こんなときでさえ弟をいじるシリウスに、結衣は笑わずにはいられない。
だがその冗談のネタにされた本人は、ムッとしたような顔になる。
「……悪いがそれだけは出来ねぇよ。俺には好きなやつがいるからな」
「まったく……お兄ちゃんがせっかくクラインが切り出しやすいように、話振ってあげたんだから、利用しないのかい?」
「感謝する、兄上。俺もどう切り出そうか迷ってたからな────改めて、国王様」
改めて国王様に膝を付き、真剣な表情で上座を見つめる。そしてこの謁見のもう一つの目的を果たすべく、クラインは口を開いた。
「私に────このクライン・アルベルトに、フローラ姫を頂きたくお願いに参りました」
クラインは国王に、フローラ姫への求婚許可をもらうため、今回の謁見をシリウスに頼んだのだ。
その言葉を聞いた途端、国王の目つきが鋭くなり、クラインを見つめた。
この眼光にさらされると、まるで己のすべてをさらけ出しているかのような錯覚に陥る。
それでもクラインは、国王から目を離すことなく見続けた。
これは、試されているのだ。
次期国王としての素質を────この国を統率することの出来る人物か、否かを。
「何故、お主はそのような事を申す。欲しいのはこの玉座か?それとも……」
「“フローラ姫”が欲しいのです。ですが、彼女を守るための力ならば……国王にだって何だって、俺はなってみせる!」
その言葉を待っていたかのように、国王はニヤリと笑う。
この微笑みをもって、クラインの求婚の申し出は、無事受諾されたのだった。
「朝にはメイドがシュバインの部屋にやってくる。婚礼衣装を着せにな。わしからメイド長に話しておいてやろう。あぁ、それからシリウスよ」
「はい、主」
「リーズベルト国の王族を、このあとここに連れて参れ……なに、逃げるようなら多少の手荒は許そう」
「御意に」
「それからユイよ、今後のためにもそなたに称号を与えよう。この城にいるために必要なものだ。持つだけ持っておれ」
「は、はい!」
(いやでも私、この件が無事解決したら、きっと元の世界に帰ることになる気が……まぁいいや、貰うだけ貰っておこう)
「ワタリ・ユイ、そなたにフローラ姫専属メイドの称号を与える。いついかなる時も、フローラの側につく権利だ」
(そ、そんなにすごいものだったのかこの称号。さすがは親子、考えることが同じだね)
「謹んでお受け致します、国王」
こうして、真夜中の内密な謁見は幕を閉じた。
お知らせです!
「目覚めたら異世界にいました」総合ポイントが50ポイント超えました(≧∀≦)!ありがとうございます!
日頃の感謝とその記念に、第二章完結後、番外編ストーリーやります!ぜひお読み下さい♪