殺意
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場面は変わって、エメラルド城に数ある客室の中でも最上の一室────現在はシュバイン・リーズベルトの私室となっている部屋に戻る。
中では結衣とシュバインの静かな戦いが繰り広げられていた。
シュバインの質問にだんまりを続ける結衣に、しびれを切らす。
「女性に手荒な真似は控えたいのだがな……いい加減、素直に質問に答えてはどうだ?」
「……殺されるのが分かっていて、冥土のみやげに証拠の在りかを吐けと?冗談でしょう」
椅子に座っている結衣を、赤い瞳が上から見下ろす。
心を読まれているようで、結衣は思わず目をそらしそうになる。
拘束はされていないのだが、逆にそれが周りの護衛達の優秀さを物語っていた。
「……お前はあまり、状況を理解出来ていないようだな。クラインにまだ証拠を渡せていないのだろう?ならばここに助けが来ることは、絶対に無い。ここまでどれだけ皆の信頼を得るのに、尽力したと思ってる?」
「やっぱり……慈善活動や兵への挨拶は、上辺だけの行動でしたか────確かにそうかもしれないですね。助けなんて、来ないかもしれない」
「そうだ、たとえお前が居なくなったと誰かにバレても、所詮お前は一介のメイド。一人減っても誰も気にしないし、気にしたとしても動きはしない」
(うん、確かにシュバインの言うとおりだ。しかもこの人は知らないだろうけど、そもそも私はメイドですらない。私が居なくなっても、本当に誰も気付くことはないだろうな……でもそれは)
「……たった一人を除いて、ね。私は彼を信じてますから。絶対に証拠を見つけて、ここまで助けに来てくれるって!」
結衣の漆黒の瞳が、シュバインから目をそらすどころか、強く見つめ返してくる。
シュバインはその意志の込められた両目に、飲み込まれるような錯覚を覚えた。
(な、何なんだこいつは!今一瞬、引きずられたのか?この、私が?!)
彼の潜在意識が、目の前の少女は危険だと告げる。
しかし頭ではそれを理解していても、なぜだか目が離せない。
彼女のペースに引きずられないよう、シュバインは結衣を問いつめる。
「お前はなぜ、私の思惑に感づいた?この城の────いや、この国の全てが今まで私を疑うことはなかった。にも関わらずお前は、疑うどころか確信を持っていただろう」
「……そうですね。確信がなかったら、部屋にまで忍び込む勇気は湧いてきませんよ。でもそれは────その理由は……」
シュバインは思わず息をのむ。
ある意味で会話の流れを、結衣に掴まれていることにも気付かずに……
「企業秘密です!」
「き、きぎょうひみつ、だと?何だそれは。意味が分からん。……だが、馬鹿にされていることは分かったぞ」
その言葉と共にシュバインは、キィンという音を立てて、腰に差してある剣を抜いた。
スラリと抜かれた刀身に、今まで気丈に振る舞っていた結衣の身体も震え出す。
剣先を向けられて初めて感じた“殺意”に、結衣は椅子から離れることが出来ずにいた。
少しでも身体を動かせば、一瞬にして命を奪われてしまう────そんな、感覚。
イノシシの時には感じなかった“殺意”に身がすくみ、逃げることすら叶わない。
「もう、良い……お前に用はない。理由は分からなくなってしまう上に、証拠の在り処も知りたかったが────仕方ない、証拠はこちらで探し出す」
「あ……あぁぁ────ぁあ……」
声が、出せない。
助けを呼ばなきゃいけないのに、恐怖で声がでないのだ。
抵抗しようにも足はすくんで、立ち上がることすらままならない。
結衣の焦る気持ちを余所に、シュバインは……
「死ね、ワタリ・ユイ」
無情にも、剣を彼女の頭上にゆっくりと振り上げたのだった……