留守中の訪問者
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見透かされる────すべてを見透かされてしまう。
あの両目が、目が合ったその瞬間から、結衣に目をそらすことを許さない。
フローラと一緒に初めて会ったときには、笑顔の裏に巧妙に隠されていた、人を恐怖させる鋭い目つき。
今はそれが姿を現し、嫌というほど彼女の恐怖心を煽っていた。
彼が持つ、白い髪に赤い瞳。
その対照的な色合いと血の色を連想させるその色が、よりいっそう無意識に結衣を緊張させている。
(まさかもう気付いたとでも言うの?!証拠を盗んでから、まだ一時間程しか経ってない。私の顔だってバレるはずが────そうだよ、顔はバレてないはず。なら動揺するな、臆するな、私!!)
今結衣の正体がバレれば、クラインに証拠渡せなくなってしまう。
それだけは────それだけは阻止しなければと、心に固く結衣は誓う。
意を決して彼女は、目の前の彼の名前を呼んだ。
「……失礼致しました、この部屋の者に何か御用でしょうか?────シュバイン・リーズベルト様」
「………」
彼────シュバインの、結衣の質問に対する答えは無い。
代わりに彼の目つきだけが、徐々に柔らかくなっていくのが分かった。
それに連れて、結衣の恐怖心も若干和らぐ。
「────君は新しいメイドかな。失礼だが、名前を聞いても?」
「……渡 結衣と申します」
「ふむ。そうか、良い名だね。それで君は、クラインの専属メイドか何かかな?」
(何だろう、なぜ急にそんな笑顔を向けてくるの?そもそもシュバインは教会に行ったはず、それがどうしてクラインの部屋に……)
「い、いえ。私はただ、紅茶を淹れるように頼まれただけで!……あの、申し訳ありません。今、クライン様はお留守なんです」
「そうか、それは良かった。謝ることは無いよ、私はむしろ、それを望んでいるのだからね」
「……え?」
パチンッとシュバインの指が鳴らされる。
それと同時に、彼の背後からリーズベルト国の護衛達が、クラインの部屋になだれ込み、中を捜索し始めた。
「お、王子!!何を?!今すぐに彼らを止めてください!」
「おや?君はすごいな。メイドの分際で私に意見するか。よほど困ることでもあるのかな?……おい急げ、いつ帰ってくるか分からないからな」
「「はっ!」」
そう護衛たちに指示をすると、シュバインは呆気に取られている結衣の方を向き直る。
「さて、君は一体何者なのかな。悪いが少し、寝てもらうよ」
シュバインの不穏な言葉と共に、結衣は首筋に痛みを感じた。マズいと脳が警鐘を鳴らすも間に合わず、彼の手刀で彼女の意識が強制的に手放される。
(ヤバい、このままじゃ意識が……)
「く、クラインっ!!助け────」
トサッと倒れかけた結衣をシュバインが支え、意識が無いことを確認した。
結衣を護衛の1人が抱え、部屋の外に連れて行く。
その拍子に彼女の手から、一枚の紙が滑り落ちた。
「ん?何だこれは……メモのようだな、まぁどうでも良い」
それに気付いたシュバインは中身を確認し、興味をなくして床に放る。
そして護衛達に先に部屋に戻ると伝え、彼はクラインの部屋から姿を消したのだった。
クラインが部屋に戻り、異変に気がついたのは、このわずか五分後のことである。