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ビックイベントの勝者は…

 王子の部屋をあとにしたクラインが自室に戻ったのは、そろそろ夜になるという頃だった。


「はぁ……今日は色々なことがありすぎて、さすがに疲れたな。早く寝ないと明日に響く。専属騎士の仕事ももう終わる。最後までフローラをしっかり守らないとな」


 クラインがそう呟いた矢先、外から遠慮がちに扉をノックする音がした。


(……誰だ?今日会う予定のやつなんて、もういないはずだが。まさか刺客か?!)


 音をたてずにクラインは、そっと腰にある剣のつかに手を添える。


「開いてるぞ」


 クラインが返事をすると、キィーっと音を立てて扉が静かに開かれた。


「わっ」


 来訪者の短く驚く声がする。その声の主の顔を見て、クラインはゆっくりと剣の柄から手を離した。


「……なんだ、ユイだったのかよ」


「なんだ、じゃないよ!扉を開けたらいきなり臨戦態勢のクラインが現れて、ビックリしたじゃない!」


「仕方ねぇじゃねぇか、刺客かもしれないと思ったんだから。いやそれよりも、どうして俺の部屋を知っているんだ?」


「あぁ、それはここにいるのが私だけじゃないからだよ」


 結衣に言われてよく見ると、彼女の背中にもう一人誰かが隠れている。


「姫様、クラインいましたよ」


 結衣の“姫様”呼びに、クラインは驚く顔をした。


「……っ!フローラなのか?」


 名前を呼んだ途端、背中に隠れている方がビクッと肩を震わせる。


(……マジかよ、あんな気まずい別れ方をしたのに、何て声かければいいかわかんないじゃねぇか)


 黙ってしまったクラインと何も言わないフローラに、結衣は軽くため息をつく。


「まぁつもる話は置いといて、とりあえず私の用件を済ませてもいいかな?」


「……あ、あぁ」


 彼女の言葉にクラインは、まだ結衣が何故この部屋を訪れたのか知らないことを思い出した。


「あのね、さっきシュバイン王子のところに行ったんだけど……」


 結衣はクラインに王子の部屋を去るまでのことを、順を追って説明する。


「それでね。どうしてクラインが突然、王子の護衛を選ぶ気になったのかが知りたくて……」


 そう、これはすごく大切な質問なのだ。

 バッドエンドの物語の中で、王子とクラインどちらが護衛を選んだのかは定かではない。

 でもクラインの理由によっては、それが分かるかもしれないのだから。


(おそらくバッドエンドを避けるうえで大切なキーは、王子の護衛。だからその護衛を決める役目の変更は、物語を進めるうえで見落としてはならないビックイベントだと思うんだよね)


「……お前からフローラが明日狙われると聞いて、気が変わったんだ」


 クラインは覚悟を決めた様な表情で、語り始めた。


「え、ほんと?」


「自分がそばにいない唯一の場所の、たった一人の護衛。俺の居場所を任せるんだ、俺が選ばなければと思い直した」


 ただそれだけだ、とクラインが目をそらしながら結衣に話す。


(……つまり私の一言が、護衛を選ぶ人物をシュバイン王子からクラインに変えた?ならこのイベントの勝者は私だ!物語の進む流れが、バッドエンドを阻止する方に傾いたってことだよね?!)


「王子が選ぶ予定だった護衛は知ってるんだが、俺としては同じやつを選びたくねぇな」


 同じやつ選ぶとかなんか腹立つ、と理不尽なことを言っているクラインに呆れた結衣だったが、彼女にとって正直それは、願ってもないことだった。

 なぜなら同じ護衛を選ぶという、最悪の事態を避けることができるからだ。


「うん、それがいいと思うよ!」


 笑顔でそう言うと結衣は、後ろに隠れているフローラに話しかける。


「私の用件は終わりました。次は姫様の番ですよ?」


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