新たな可能性
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厨房で昼食の準備をしていたメイド達にフローラが部屋で食べたいと望んでいることを伝えると、快く了承の返事が返ってきた。
「あ、ついでに私の分は今自分で運んじゃいますね!」
「畏まりました、ありがとうございますユイ様」
その言葉に結衣は自分の分の食事をワゴンに移す手を止め、ふぅーと息をついた。
「……相変わらず私の事を呼び捨てで呼んではくれませんよね皆さん。何度も言いますが、私も同じメイドには変わりないんですけども!!」
メイドとして新参者にも関わらず、結衣が様付けで呼ばれる理由は、勿論専属メイドという立場にあるからだ。
それでも一部古参のメイド達は、ぽっと出の結衣に嫉妬して、わざと呼び捨てで呼んだりもしていた。
また城に務めるメイドには、位は低くとも貴族である者も多い。
平民風情にへりくだるなど、プライドが許せないという理由もあっただろう。
しかしそこに追い打ちをかけるかの如く授かった、結衣の貴族位は、彼女たちをも黙らせるのに十分であった。
そんなわけで今城内のメイドの中で、結衣を呼び捨てで呼ぶ者はもういないのである。
「ご謙遜を。メイドの最高位につかれている方に対し、様付けをするのは自然かと」
「分かりましたよ、もぉ────」
ため息をつきながら負けを認めて、結衣は自分の分の食事をワゴンに乗せ、フローラの部屋に戻ることにする。
その間も目の前のワゴンからご馳走の香りが漂ってくるのだからたまらない。
「ヤバい今日のお昼ご飯も美味しそう。また太るぞこれ…」
(この世界に長く滞在するうちに、豚になってたらどうしよう…)
それは考えすぎである。
言わずもがなその心配は、料理長の腕の良さから彼女の杞憂に終わるだろう────
「フローラただいまぁ!」
「あっ、おかえりなさいユイ。待ってね、今テーブルの上を片付けているの」
「分かった、私も手伝うね!」
フローラがテーブルの上に広げていた植物の本を、結衣は1冊ずつ閉じて邪魔にならない場所に移動していく。
「ん?これもしかして全部、植物の毒に関する本?」
「えぇ、私も何か役に立てたらなって思って。毒殺の可能性が高いのでしょう?だから、私が持っている本の中で毒に関するものを集めていたのよ」
「でもどうしてこんなに植物の毒に関するものだけ持ってるの?」
彼女の疑問にフローラは、満面の笑みを結衣に向ける。
「ふふっ、だって私は植物が大好きなんだもの!たとえ毒であっても、様々な種類の花を知りたいじゃない?」
「そ、そういうものですか、、、」
ちょっと分かり合えそうにないなと思った結衣であった。
(でも──何か役に立ちたいと思っていたのは、フローラも同じだったんだね)
自分だけではなかったのだと、結衣はなんだか少し嬉しい気持ちになる。
「ふふっ、そっかそっか!」
「ど、どうかしたの?ユイ」
「うふふっ、なんでもなぁーい!」
そう言いつつ、若干にやけながら笑いかけてくる結衣の姿に、フローラは困惑しつつもテーブルの上を片付けるのだった。
それから何分かして、フローラの食事が美味しそうな匂いと共に、彼女の部屋に届けられた。
綺麗に片付けられたテーブルに、次々と料理が並べられていく。
いつもはコース料理の様に、ひと品食べ終わると次の料理が目の前に運ばれてくるのであるが、今回は部屋で結衣と2人だけで食べる予定のため、こうして全て並べられているわけである。
メイドであるがメイドの仕事をあまりさせてもらえない結衣もソファに座り、料理が並べ終わるのを待っていた。
(それにしても、毒を持つ植物かぁ。それは考えてなかったな)
そう、例えば部屋の中に飾っておくと、何らかの条件を満たせば毒を発生させる植物があったとする。
あの貴族の食卓の上には花は飾られていなかったが、部屋の中に飾られていたかどうかまでは把握できてはいない。
それならば、食事の中から毒が検出されなかったのも頷けるというものだ。
しかしこのような植物が存在するか否かは、さほど大きな問題ではない。
問題であるのは、この世界の植物に関する知識はもちろん、この世界に存在する毒の知識を結衣が持ち合わせていないことなのだ。
「ねぇフローラ。さっきの本全部、後で読ませて貰っても構わないかな」
「えぇ、もちろん良いわよ」
「それからこの世界に存在する毒の知識も、できれば頭に入れたいんだけど……」
「それだけ聞くと、傍から見たら物騒ね……でもユイの気持ちは分かるわ」
「じゃあ!」
「……でもね、それを了承するのは私ではないの。一般的な毒の本は王室図書館に置かれているけれど、レアな毒や猛毒に関する情報は厳重に他の場所に保管されているわ」
考えてみれば当たり前のことと言えるだろう。
王室図書館は城内にあるとはいえ、城内にいる者ならば誰でも閲覧可能な場所だ。
そんな所に危険な猛毒や、解毒剤の少ないレアな毒に関する知識が置かれているはずもない。
「私も以前、それらの毒の知識を一応頭に入れておこうと思ってお父様にお願いしてみたことがあるけれど、必要ないと断られてしまったわ」
だから保管場所も知らないのだと、申し訳なさそうな顔でフローラは言う。
(まぁそうよねー、国王の言うことは最もだわ。フローラには毒の知識なんて与える必要ない、いや、与えたくない!なんか、うん……穢れる気がするし!)
「気にしないでフローラ!それよりご飯、冷めちゃう前に頂こう?」
いつの間にか食事は全て並び終えられ、メイド達も部屋を後にしていた。
目の前に並べられた豪華な食事に目を輝かせながら、結衣はフローラにそう促す。
「えぇ、そうね!頂きます」
「頂きます!」
徐々に週一ペースに戻していきます(ノ*ˇ∀ˇ)ノ♪




