私にできること
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それからしばらくして後、食べ物とは別に食器の毒の有無を調べていた者が食事の間へと姿を見せ、結果を伝えに来た。
「クライン様、御命令通りに毒の検証を行った結果、こちらの食器類に毒は付着しておりませんでした」
「そうか、急がせて悪かったな。助かった」
「いえ!こちらこそ対してお役に立てず、申し訳ありません!それでは失礼致します」
「あぁ、また何かあれば頼む」
彼の持ってきた結果により、残る可能性は食べ物のみとなった。
そちらの結果もまもなく出そうだと、侍女達の方を見ながらクラインは思う。
「ねぇねぇ、クライン。私にも何か出来ることはあるかな?」
「ユイに出来ることか?ーーーそうだなぁ」
正直に言えば、今の段階で結衣に出来ることはあまり無い。
しかし皆が大変なときに、自分だけじっとしていられないのだろう。
そんな彼女の気持ちを思うと、何か頼めるものはないかとクラインは考える。
すると、それを見ていたシリウスが名乗りをあげた。
「だったら、僕からユイさんにお願いしても構わないかな?」
「はい、もちろんですよ!私は何をすればいいですか?」
「国王の様子を見てきて欲しいんだ。今朝、あまり体調が優れない様子だっただろう?今は大事をとって、休んで頂いている。本当は僕が行きたいんだけど、ご覧の通りまだここを動けそうに無くてね」
「なるほど、分かりました!」
「ごめんねユイさん。これは信頼できる人にしか頼めない。君だからこそ、頼むんだよ」
専属騎士がそばを離れ、国王も体調が優れない今など、暗殺するには好都合。
シリウスのことだ。警備は万全だろうが、よほどの信頼が無い限り、そばに行かせることなどさせないに違いない。
だからこそ今のシリウスの言葉に、結衣は心底嬉しい気持ちになったのだった。
「それでは今から行ってきますね。また後ほど、報告に来ます!」
「うん、悪いけど頼むよユイさん」
シリウスとクラインに挨拶をして、結衣は食事の間を後にする。
そしてアイヴァントが休んでいる彼の寝室へと、歩き始めたのであった。
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国王の寝室の扉の前には、4人の衛兵達が立ち、部屋の外を警護していた。
結衣が部屋の近くまで行くと、それに気付いた衛兵の1人に止められる。
「おいそこのお前、止まれ。この部屋は許可なくメイドの立ち入りを禁止されている」
「あ、えっと。シリウス様から国王様の元へと伺うように頼まれておりまして」
結衣が用件を言うと、衛兵の1人は馬鹿にしたような顔で笑った。
「ふっ、一介のメイドに頼むわけが無いだろう。つくならば、もう少しマシな嘘をつくんだな」
「えぇ……本当の事なんだけどなぁ」
(っていうか私、一応貴族なんだけど。貴族にそんな態度していいの?ーーーあ、今の格好はメイド服だったわ)
困ったなぁと結衣が悩んでいると、やり取りに気付いた他の衛兵が慌てたように衛兵に声を掛ける。
「おまっ、気付かないのか?!そのメイド服、専属メイドの物だぞ!」
「なにっ?!ほ、本当だ。他のメイド服とは確かに違うな」
ようやく結衣が何者であるか気付いたのだろう。
指摘された衛兵は、慌てて結衣に頭を下げる。
「も、申し訳ありません!存在は聞いていましたが、実際にお見かけしたことが無く……」
「あーーー、普通のメイドに比べて人数少ないですからね。仕方ないですよ」
(まぁ信じてもらえなければ、まだ専属メイドの証である腕時計もあったしね)
「本当に申し訳ありませんでした。どうぞお通り下さい。国王様は、中でお休みなさっておられると思われますが、中には王妃様もおられます。扉を叩いて、問題ないかと」
「えっ、王妃様もおられるのですか?!……そうですか、ありがとうございます」
(マジか、何も起こってないといいんだけど……よし、とりあえず入らなきゃ)
トントン、と部屋の扉を静かに叩くと、中から王妃が来訪者の名を訊ねるが聞こえた。
「フローラ様専属メイドの、ワタリ・ユイです」
「あら、どうぞ入って構わないですよ」
「失礼致します」
許しをもらい、結衣は部屋の扉を開ける。
そして、王妃ーーーもとい東の魔女の待つ寝室へと、足を踏み入れたのであった。
王妃、何もしないでね?(*^-^*)