銀食器の使い道
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改めてテーブルの上を見てみると、乗っているのは大きなボウルに入れられたフルーツポンチと、人数分の皿が5つ、そして食後に飲んでいたであろう紅茶の3種類であった。
「これは、どれに毒が入っていたのか案外早くに分かるかもしれないね」
「あぁ、そうだな。候補はフルーツポンチの中、デザート用の食器自体、スプーン、紅茶、ティーカップってところか?」
「かなぁ。あ、そうだ食器と言えば、ここのは銀食器じゃないんだね」
「ユイの言っているのは、魔女の術がかかっている銀食器のことだよな」
クラインの言葉に、結衣は頷く。
以前クラインの死因を毒だと疑ったとき、クライン達とそんな話をしたのを思い出したのだ。
「あれは王族しか持っていないぜ、一応貴重な物だから数は多くないんだ。耳の痛い話だが、替えのきく貴族よりも替えのきかない王族が優先されるからな」
「そっかぁ。銀食器だったら、もっと絞り込めると思ったんだけど……」
結衣がそう呟いた瞬間、クラインは何かを閃いたのだろう。
「それだ!」
驚く結衣に、クラインはニヤリとする。
「え、どういうこと?」
「幸いにも、ここにはまだ食べ物が残っている。そして、銀食器は“毒の混入の有無”を知ることができるんだぜ?」
「あっ、そっか!食べ物を銀食器に移してみて、毒入りなら反応があるわけだから……」
「そう、それを見れば一目瞭然ってことだ」
食器に関してはそれは出来ないが、調べる量はグンと減る。
結衣達はすぐに行動を起こし、侍女長を呼んで、ボウルの中のフルーツポンチと紅茶を、それぞれ別の容器に移し替えてもらったのだった。
「よし、とりあえず城に戻ろう。これらの中に毒が発見されればいいが、ダメならまた別の可能性を当たらないといけないからな」
「うん、そうだね」
遅効性の毒の可能性も考慮したクラインは、コックから朝食のメニューと材料の入手経路を聞いた後、結衣と共に再び馬に乗って帰城した。
「おい誰か、銀食器を食事の間へ!」
馬を衛兵に預けるなり、クラインは結衣とシリウスの待つ食事の間へと歩みを急いだ。
食事の間が見えてくると、いつもは閉じられている扉が開かれ、次々と衛兵達が出入りをしている。
おそらく各貴族の使いの者から情報を持って帰ってきて、それをシリウスに報告しているのだろう。
「兄上、今帰った」
「で、どうだった?」
挨拶などは抜きに、本題を問い掛けるシリウスの姿は、いつものそれとは別物だ。
(これが、シリウスさんの王の専属騎士としての姿ーーーうん、どうしてこの兄弟は、こんなにON・OFFが激しいんですかねぇ!見てて飽きないけども!)
「恐らく毒殺だな。これらが、疑わしい食べ物だ。今、侍女に銀食器を持ってくるよう頼んだ」
「ーーーなるほど、そちらも毒殺の可能性が高いか。僕の受けた報告も、毒の可能性を示唆するものが多かった」
毒の疑いが更に濃くなったところで、食事の間の扉から、数人の侍女達が姿を現す。
「お待たせ致しました、クライン様。銀食器でございます。それと、侍女を何人かとのことでしたので、手の空いている者達を連れて参りました」
ワゴンの上に乗せられた銀食器を慎重に運びながら、侍女の1人がクラインに挨拶をした。
「お、ちょうど良いな。よし、これらの瓶の中に入っている食べ物と紅茶に毒が入っているかを調べてくれ。銀食器を使えば有無が分かる」
結衣には気付かれないようにしたが、実はクラインは屋敷で既に、それぞれの食品に軽く指を浸していた。
これは経口摂取以外で毒が拡散した可能性を恐れたからだ。
コックが生きていたことから、素材に毒が混入していた可能性はまず低い。
そうでなければ必ず味見をする彼も、無事ではすまないはずだからである。
同様の理由から、料理が完成する前に入れられた可能性もまず無いだろう。
次期国王自ら可能性を潰す行為は些か……いや、かなり無謀な行為であったが、そうも言っていられないとクラインは行動したのだ。
おかげでクラインは、銀食器に移して調べるだけならば、侍女達に頼んでも危険はないだろうと判断することができたのだった。
「畏まりました。部屋の片隅をお借りして、すぐに始めさせて頂きますーーーあなた達、緊急事態の最中です。手早くやりなさい!」
「「はいっ!」」
果たして毒は見つかるのかーーー?(*・ω・人・ω・)