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第4章 エピローグ

新たにブクマ、評価、感想書いて下さった方々、ありがとうございます!ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ


そして、お待たせしました!

第4章エピローグです。

国王にシュバインの密殺を秘密裏に命じられてからの1日の時間は、クラインにとって、かつて無いほど足早に過ぎて行った。


他のことに集中していなければ、今夜の任務のことですぐに頭が一杯になる。

だからだろうか、こんなにも早くに今日の仕事が片付いてしまったのは。


「……あと2時間か。あー、憂鬱すぎる」


日もとうに落ち、静まり返った城内にある自室で、クラインは一人仕事をこなしていた。


いつもならば終わりそうにない量の雑務も、今日に限って見当たらない。

本当ならば時刻のギリギリまで仕事をして気を紛らわせる計画だったのだが、これはどうやら他の案を考えねばならないだろうと、クラインは深くため息をついた。


「本当は、フローラの所に行きたいけどなーーー仕事とはいえ、これから人を殺すってときに彼女の顔は見たくねぇよ……」


彼女は、闇を知らなくていい。

彼女を心底愛しているからこそ、フローラには今のままで、王国の光でいて欲しいとクラインは切に思う。


「だからこそ、俺が強くならないとな」


闇を引き受けるだけの精神的な強さも、国王は兼ね備えていなければならない。

現国王、アイヴァントから下された密殺命令を聞いてクラインは、心底それを実感したのであった。


「……よし。こんなときはやっぱ、剣を振るのが一番だろ!」


腰にある剣に手をあてて頷きながら、クラインは練習場へと歩いていった。



「ーーーで?考えることは同じってわけかよ、シリウス」


誰もいないだろうと思って開けた練習場の扉の先には、剣を振るう先客がいた。

名前を呼ばれたシリウスは、ククッと笑いながら手を止める。


「クラインと同じことを考えていたなんて、何だかお兄ちゃん照れちゃうなぁ」


「お、俺はただ剣の腕を確認しに来ただけだ!シリウスと違って、落ち着かないからじゃねぇよ!」


「おや?僕は一言もそんなこと言っていないんだけどなぁ。クククッ」


こんなときでも、自分と違って気持ちに余裕のあるシリウスが、クラインには少しだけ羨ましく感じられた。


「……チッ、勿論相手をしてくれるよな?シリウス」


「あぁ、久し振りにやり合おうか。クライン」


その返事の言葉を合図として、2人はそれからの一時間と半分の時間、ひたすら無心で剣を交えていたのだったーーー。


そして、国王から命じられた午前0時15分前。

どちらからともなく、剣をゆっくりと鞘におさめる。


「ふぅ、そろそろ時間だね。行こう」


「ハァ、ハァ……ッあぁ、行くか」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


練習場を出て地下牢の最奥に辿り着くまでの間、2人は終始無言だった。

しかし彼らの醸し出す威圧感を恐れ、起きている他の囚人達も、罵詈雑言を浴びせることが出来ずにいる。


そして薄暗い牢の最奥に着き、そこに投獄されている人物と目があったとき。

クラインは長い沈黙を破った。


「……よぉ、久し振りだな。シュバイン」


「お前っ!! お、お前が何故生きている!! 」


この世にいるはずもないクラインからの挨拶に、心底驚いたのだろう。

赤い両目を見開かせ、シュバインは叫んだ。


「お前にはこの私が確かに傷を付けたはず!ま、まさか東の魔女が失敗したのか!」


「いいや、違うな。俺はお前に呪いを掛けられ、死を覚悟させられた」


「ならば……なぜ!何故お前は生きているのだ!!」


「黙れ!」


静かにシュバインとクラインの会話を聞いていたシリウスだったが、耐えていた何かがはちきれたのだろう。

その様々な感情が込められた一言は、シュバインの口を黙らせるのには十分すぎた。


「お前ごときに、僕の弟が容易に殺されると思うなよ」


「こいつ……全然反省してねぇな」


ギラギラとこちらを睨むシュバインを見て、シリウスもゆっくりと頷く。


「殺して楽にしてしまうのが、口惜しくなるほどの反省の無さだ。大切な弟を苦しめた罪、もっと贖って貰いたかったね」


その言葉に、シュバインがビクリと反応する。


「お、おい……今、“殺す”とか言ったか……?」


「それがどうした?お前の犯した罪を思えば、当然の処罰だろ」


クラインにまで“殺す”と言われた途端、シュバインは一気に牢の鉄格子をガシッと掴み、慌て始めた。


「私は元王子だぞ!!たとえ存在を消されようとも、王族の王子であったのだぞ!それを殺して良いはずがない!」


「は?その件はもう解決済みだろ。お前はもはや、ただの囚人だ」


“王子”という肩書きを出しても、たいして動じないクラインに、シュバインは焦る。


「ひ、東の魔女は私の味方なのだ!私を殺そうとすれば、彼女が黙っていないぞ!」


「へぇ~、僕はてっきり君は“用済み”扱いかと思ってたけど。それが“本当”なら、怖いなぁ」


もちろんシュバインを殺そうとすれば東の魔女が助けてくれるなど、全くの嘘だ。

しかしこうでも言わねば即殺されそうな彼らの雰囲気に怯え、苦肉の策でそう言ったシュバインであった。


「さて、どうしたものかな」


「もしシュバインの言うとおりなら、東の魔女の加勢は避けたいところだしな」


しばらく策を練って唸る2人を見て、シュバインはにやりと笑った。


(ふん。やはり魔女の名を出したのは正解だったみたいだな。これで無謀にも私を殺そうとすることはないだろう!)


「あ、俺名案を思い付いたかもしれないんだが」


「ん?何だい」


シュバインに聞こえぬよう、クラインはシリウスの耳に手をあて、こっそりと話す。


「“魔女の嘲笑”を利用するんだ。あれがどういった物なのか、シュバインは知らないからな。そうすれば、シュバインは東の魔女の元へ行く。俺らが殺すわけではないから、助けに来ることもないだろ?」


「あぁ、なるほどね。クラインの意図は分かったよ。けれど、果たして口伝通りに行くのかどうか……」


「大丈夫、俺を信じてくれよ“兄上”。これが最善の策だと思うんだ」


「……ならばその役、僕がやろう。大事な弟を、危険な目にあわせたくはない」


口伝の信憑性が無い以上、下手をすれば使われた方の存在が消えてしまう可能性も無くはない。

それを心配してのシリウスの発言に、クラインは耳元から手を離してにやりと笑う。


「嫌だね。俺なんかより、シリウスの方が俺への愛は大きいだろ?だからもしものときは、任せる」


何か言い返そうとするシリウスだったが、クラインの真剣な表情に、何も言えなくなってしまった。


「……ったくもう、どうせ止めても聞かないんだろう?クラインは。分かったよ、お兄ちゃんに任せなさい!」


その言葉を聞いて頷くとクラインは、シュバインの方を向き直る。


「おいシュバイン、本当に東の魔女が味方なんだよな」


「あ、あぁそうだ!だから私に手出しは……」


「なら、会ってみるか?東の魔女に」


「……は?」


封印されているはずの魔女に会うかと問われ、シュバインは困惑する。


「方法は一応あるんだよ。東の魔女に“好かれている”奴が、“王子”を指差しこう言えばいい。“姿暴かれし東の魔女よ。永久とわに眠れ”ってな」


クラインの作戦はこうだ。

シュバインに魔女の嘲笑を使わせる。もちろんクラインは東の魔女ではないのだから、ペナルティーが発動するだろう。

そのペナルティーとは、主に2つ。


一つは間違えて使った者の存在が、使われた者以外の記憶から消えてしまうこと。

二つ目は、間違えて使ってしまった者は、その魔女の元に飛ばされるということだ。


これにより成功すれば、シュバインの存在を覚えているのはクラインだけ。


(忌まわしい奴の記憶が、フローラからも消えるんだ。俺としては、願ってもない事だからな)


「ほ、本当にそんなことで東の魔女が現れるとでも言うのか?」


「あぁ、保証するよ。もしもお前の味方だと言うなら、きっと力になってくれるだろうぜ。それに、この牢獄からも逃れることができる」


“牢獄から逃れられる”と聞いた途端、半信半疑だったシュバインの目がギラリと輝いた。


「……ふ、ふん!やるだけやってみようじゃないか。“王子”にというからには、お前にやれば良いのだな?」


「あぁそうだ、俺に向かってやればいい」


クラインが肯定するや否や、シュバインが右手を上げてクラインを指差す。

よほどこの牢獄から逃れられることが嬉しいに違いない。


「姿暴かれし東の魔女よ!」


「……シリウス、後は任せた」


口伝通りに言い始めたシュバインを横目に、クラインはシリウスへ言い残す。


「っ、やっぱり僕が代わりに……!!」


その瞳を見て決心が揺らいだシリウスの叫びも虚しく、シュバインが最後の言葉を紡ぐ。


永久とわに眠れ!」


そのとたん、強い光が牢を包んだ。

あまりの眩しさに、皆が等しく目をつぶる。


そしてしばらくして光が収まり、牢にいる者達が目を開けるとーーー


シリウスの目に飛び込んできたのは、“誰もいない”地下牢の最奥の部屋。


ゴーン、ゴーン、ゴーンーーーと、午前0時を知らせる全部で六回の鐘の音が、小さな鉄格子の窓の外から聞こえて来た。


「……あれ、ここは牢屋の最奥かい?」


なぜ自分はこんな所にいるのだろうと、不思議そうに首を傾げる。


そんなシリウスの様子を横で見ていた彼は、嬉しそうに笑った。


「ハハッ、どうやら成功したみたいだな!」


「え、クラインもいる。こんな時間に、一体何しに来たんだ?僕は。ごめん、なぜだか用件を忘れてしまったみたいなんだ」


目の前の牢にシュバインがいないことと、シリウスが何がなにやら分からず、首を傾げているのがその証拠だろう。


「一応確認だが、シュバイン・リーズベルトって知ってるか?」


「いや、知らないな。リーズベルト国名が入っているということは、王族のはずなんだけど」


「あぁ、なら良い。今はとにかく、国王のところだな。そこで全てを話す」


こうして、“シュバイン・リーズベルト”という存在は、この世界から完全に抹消された。


またそれによる事象の変更点は、翌日の朝に国王を交えて照らし合わせることとなったのであった。





最初、シュバインはクラインたちの剣により、バッサリやられるストーリーを執筆してました。でも、なんか違った。

シリウスだけなら割り切ってバッサリやりそうだけど、クラインいるし、魔女関連絡みだしなぁと思い直し、シュバインにはこういった結末を迎えて頂きました。


きっと今頃はあの小人達に迎えられ、あちらの住人となっていることでしょう。

ある意味殺されるより辛い仕打ちかなぁと思い、飛んで頂きました( ´艸`)


それでは、第5章も宜しくお願い致します!

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