フローラの専属騎士
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そこに立っていたのは、銀色の髪に水色の瞳を持った、皆がよく知る凄腕の剣士。
「改めてここに紹介しよう。フローラの専属騎士第ー候補であり、ハーヴェイ家令嬢。レオナ・ハーヴェイーーーいや、もうレオナ・アルベルトだったなぁ」
ニヤリとしながらそう言う国王に、シリウスは耳を赤らめ、気恥ずかしそうな顔になる。
今日は専属騎士候補として来たからか、レオナの服装は貴族としてのものではなく、女剣士としての方であった。
「れ、レオナだったんだね」
「えぇ、今までずっと内緒にしてきてごめんなさいシリウスさん、皆さん。国王様に私の剣の実力を見て頂くまでは、明かすことはできなかったのよ」
レオナの謝罪に同意するように、国王も頷いている。
「彼女が剣を学んでいることは知っていたからな。先日ハーヴェイ家宛てに手紙を出して、諸事情と専属騎士を探していることを伝えたのだよ」
そしてその手紙は国外にある修行の場へと秘密裏に届けられ、彼女の知るところとなった。
その後レオナが修行の場から帰国したのは、結衣と初めて出会ったあの日。
予定では数日後、極秘で国王に剣の腕を披露する手筈となっていたのだが、シリウスとの決闘が決まり、それが披露の代わりとなったのだ。
「さてクラインよ、不満を述べても構わぬぞ?確か以前、“男は嫌だ”と言っていたなぁ」
レオナは正真正銘どこから見ても、男性ではなく女性だ。クラインが最も不安に思っていた、性別に関する問題は解決。
「他にも、“俺と同等以上の実力者を!”とも言っていましたね、主」
「ぐっ……」
5年前の決闘で、クラインはレオナの実力を十二分に実感しているし、先日の決闘ではあのシリウスに勝利した。
彼女の剣の実力は、フローラの専属騎士として申し分ないことは明白である。
専属騎士候補には必ず文句を言ってやろうと構えていたクラインだったが、国王とシリウスの正論に反論の余地も無い。
(おぉーー、凄いな。何気に両方とも叶えられてるし)
国王の最適な人選に、結衣も思わず拍手を送りたくなる。
まだ仮であるが故に、“第一候補”とされているものの、フローラの専属騎士として相応しい人物は、おそらくレオナを置いて他に居ないだろう。
異論などあるはずもないクラインの様子を見て、国王は再度彼に向けて口を開いた。
「前任者として、認めるか否かはお主が決めると良い。決定権は、お主にある」
国王の言葉に、皆がクラインの方を見る。
「ーーー俺は結婚を決意したとき、たとえどんな事があろうとも、必ずこの手でフローラを守ると誓った」
クラインの言葉に、フローラは嬉しげに頬を染めている。
「だけど、それでもずっと側にいられるわけじゃないからな。だから俺と一緒に、彼女を守って欲しい」
そこまで言うと、クラインはレオナと目を合わせた。
レオナも顔を引き締めて、クラインを見返す。
「どうかこれからよろしく頼むーーーレオナ」
頭を少し下げながらクラインが口にした言葉は、レオナがフローラの専属騎士になることを認める言葉。
その言葉に安堵して、レオナもコクりと頷いた。
「はい、喜んで」
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「さて、朝食にする前にクラインとシリウスよ。2人はまだ残ってくれるか?」
どうやらまだ国王は2人に用事があるらしく、クラインとシリウスを呼び止める。
「「はい」」
「じゃあ先に食事の間へ行っていますね!」
「え、おい結衣。まさか、食事まで王族ととっているのか?!」
「ん?うん、そうだよお父さん」
結衣や快斗の話し声もだんだんと謁見の間から遠ざかり、やがて声は完全に聞こえなくなった。
「よし、もう良いな」
「はい。ご用件は何でしょう?主」
シリウスの問い掛けと共に、不意に国王の威圧感が増す。
先程までの、ほのぼのとした朝の穏やかな表情とは打って変わった国王の顔つきを見て、2人は察した。
(主がこういった顔をなさるのは、“裏”の話をするときだ)
「ーーーなるほど、例の件ですね」
「2人とも察しが良くて助かる。クライン・シリウス共に結婚式を終え、一段落ついたからな」
そこまで言うと国王は言葉を切り、クラインとシリウスを交互に見つめた。
クラインは、出来ればこの後に続く言葉を聞きたくないようで、苦い顔を隠さないでいる。
一方シリウスは、恐らく務めと割り切っているのであろう。感情を表に出さず、無表情で主の言葉の続きを待っていた。
「今宵。0時の鐘が鳴ると共に、元シュバイン・リーズベルトの密殺を命ずる」
「「ーーーーーー御意に」」
チュンチュンと朝鳥が優しげな音色を奏でる中。シュバインの命を絶つ命令が、今ーーー下されたのだった。
次回、恐らく第4章エピローグ!