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子供のままで

新たにブックマーク登録して下さった方々、ありがとうございます!


前回が短かったので、今回はやや長めです♪

「フェリナさんが、お父さんにそんなことをーーー」


快斗の話を静かに聞いていた結衣の呟きに、快斗はゆっくりと頷いた。


「正直、今もその言葉の意味を全て理解出来ている訳じゃない。もしかしたら、“正夢”とかいう力が何なのか分かれば、元の世界に帰れるのかもしれないな」


「……あー、それは無いかも。“正夢”の力は、そんなものじゃないから」


「え?」


まるで力の内容を知っているかのような結衣の発言に、快斗は驚く。

顔に曖昧な笑顔を浮かべながら、結衣はフェリナの言った内容について考えた。


(そっか。私が喚ばれたのは、お父さんに上手く力の譲渡が出来なかったからなんだね)


そして、快斗と結衣で喚ばれる期間が10年間も空いてしまったのは、おそらく必要な彼女の魔力が再び貯まるのに、それだけ時間が掛かってしまったからだろう。


「ーーー今度は私が話す番だよね。私がどうして異世界に来たのか。そして託された力、“正夢”のことを」


「ーーーっ!!」


結衣は話した。ゆっくりと時間をかけて、自分の身に起きた不思議な全ての出来事を。


最初はフローラ姫を助けるために。

次はクラインを助けるために奔走し、しかし彼らを何度も死なせてしまったことを。

そしてその過程で知ってしまった、東の魔女の正体についてもーーー。


辛そうな表情をして語る娘の言葉を、快斗はただ黙って聞き続けた。


知らない世界で10年間も生き続けた快斗の苦労だとて、計り知れない程のものだ。

快斗は異世界で暮らしてきた先輩として、娘に掛けてやる言葉を探した。

だが、それ以上に短期間で何度も親しい者の死を体験していた娘の心情を思うと、慰めの言葉や励ましの言葉は、何一つ浮かんで来なかったのだったーーー。


オレンジ色に輝いていた夕焼け空も、話が終わる頃にはとうに暗くなっていた。

気が付けば微かに聞こえていた貴族たちの話し声も、いつの間にか聞こえてこない。


「……私の話もこれでおしまい。アハハ、すっかり暗くなっちゃったね!」


結衣が、無理に明るい声を出しているのは見え見えだった。


(気遣いなんてものまで覚えて……いつの間にこんなに大きくなったんだろうなぁ)


10年ぶりに出会った娘の成長に、快斗は嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ちになる。


そして、ゆっくりと結衣を抱き締めた。


「お父さん?」


「ーーー焦らなくていい。まだ、子供のままでいいんだ。少なくとも、俺の前ではまだ、子供のままで……」


快斗にとって、結衣との思い出は5歳で止まっていたのだ。

10年もたてば、成長の早い子供は特に大人へと着々と変わって行く。

そんな父の想いを感じ取ったのだろう。

結衣も広い父の背中に回した腕に、ギュッと力を込めた。


「……大丈夫。私はいつまでたっても、お父さんの子供だよ」


「……あぁ、そうだな」


空白の時間を埋めるように、お互いの存在を感じるようにーーー2人はいつまでも互いに抱きしめあっていたのだった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「で?どうして俺まで国王様に謁見しているんだ!」


シリウスとレオナの結婚式から、一夜が明けた翌日の朝。

デヴィール子爵が拘束されたことによって、快斗との約束通りシリウスは、そこで働いていた全員の使用人たちに別の就職先を紹介することを約束した。


一方手柄の一部だと言われ、昨夜から快斗はエメラルド城に客人として招かれている。

他の使用人たちと違い、帰る家の無い快斗としては、本当に有り難い申し出であった。


そして、国王から朝食の前に呼び出しを受けた快斗は今、国王の謁見の間に立っていた。

他にも王妃、クライン、フローラ、シリウス、結衣が集まっている。


「なぁに、フローラがどうしてもユイの父に会ってみたいと言うのでな。発表のついでに呼んだまでだ。恩人であるユイの父なのだ、そんなに畏まらなくても良いぞ?」


国王の言葉に続けるように、フローラが快斗の方を向く。


「昨日は時間も遅かったので、ご挨拶が遅れてごめんなさい。フローラ・エメラルドと申します」


「ーーーっ!ご、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、私からご挨拶に伺うべき所を、申し訳ありません。結衣の父の、渡 快斗と申します」


そう言って快斗も、フローラに綺麗で整ったお辞儀をする。


「ーーーほう」


快斗の礼儀正しい挨拶と姿勢を、国王は気に入ったようだった。


(まぁ、お父さんは元社会人だしね)


そして、フローラとの挨拶が済んだ頃。


わたくしも挨拶がまだでしたわね。エメラルド国王妃、クラウディア・エメラルドです」


「お、王妃様!!」


(あ、ヤバい!お父さんが正体知ってること知られたら、何されるか分かんないよ!)


黒幕の登場に動揺を隠し切れていない快斗に焦り、結衣は思いっきり力を込めて、彼の足を踏む。

周りの皆が、驚いてギョッと結衣の方を見た。


「いっだ!結衣、何すんーーーっ!!」


思わず結衣を振り返った快斗だったが、痛みで我に返ったのだろう。

結衣の言いたいことを察したのか、快斗はゆっくりと一つ深呼吸をした。


「ん、んん。お見苦しい所をお見せしました。改めて、宜しくお願い致します王妃様」


「え、えぇ……宜しくお願いしますね」


「さ、さて本題に入ろうか。今回は、以前より申していたフローラの専属騎士が決定したため、集まってもらった」


予想外の発表の内容に、今度は事情をあまり詳しく知らない快斗以外の、全員が驚く番だった。

特に前任者であったクラインは、その驚きも大きい。


「こ、国王!俺は何も伺っていないのですが……」


「まぁ、落ち着きなさい。不満は当人に会ってからでも遅くは無かろう?」


何か言おうとするクラインを片手で制し、国王は扉の近くで待機していた衛兵に合図を送った。

その合図とともに、静かに謁見の間の扉が開かれていく。


「入られよ」


国王の言葉に答える代わりに、開かれた扉から人影が現れる。


「「えっ!!」」


そして、その登場した予想外の人物に、その場の誰しもが再び驚きの声を上げたのだった。





扉から現れた、フローラの専属騎士(予定)とは?!

第4章はあと2話くらいかなぁ(*´ω`*)

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