快斗と西の魔女
新たにブクマ、評価、感想を下さった方々、ありがとうございます♪
そしてレビューを頂きました!ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
本当にありがとうございます(//∇//)
気が付けば、渡 快斗は自身の姿すら見えぬ程の暗い闇の中に立っていた。
「……ん、ここは一体ーーーどこだ?俺は確か家を出て、会社に行こうとしていたはずじゃーーー」
自分の行動を思い返してみる快斗だったが、家を出て、歩き始めた後の記憶が無い。
どうしたものかと立ち尽くしていると、突然近くに誰かの気配を感じた。
「……誰か、いるのか?」
『ーーーこの空間への移動は成功したようね。でも……』
「っ!!誰だ?!どこにいるんだ!」
確かに気配は感じるのに、なぜかその見知らぬ声は暗闇のどこからともなく聞こえてきて、その者の居場所は掴めない。
『私は西の魔女ーーー名乗っても居場所がバレていないと言うことは、やはり力の譲渡は……。まずはあなたに謝らなければいけない、渡 快斗よ』
「いや謝るもなにも、まずはこの状況を把握したいんだけどな!」
快斗の叫びもお構いなしに、見知らぬ声は言葉を続けた。
『ーーーあなたはこれから異世界に行く。でも、あなたに与えるはずの力の譲渡は……失敗に終わってしまったわ』
「……は?異世界?力?一体何が言いたいんだ!」
非日常的な空間と、これまた意味不明な事を話す見知らぬ声の存在に、快斗の頭は混乱する。
『ごめんなさい、予想以上にあなたをこの空間へと送るために、魔力を消費してしまったーーーそのせい故か、“正夢”の力を譲渡することは出来なかった……』
「ハ、ハハッ。分かった、これは夢だな。まだ俺は寝ていて、これは夢の世界なんだな!夢なら仕方ない、目が覚めるまで付き合うか」
『……あぁ、本当にごめんなさい!あなたを帰す術を私は知らない!』
嘆くような声で謝り続けるその声に、快斗は笑いながら答える。
「あぁ大丈夫だ、だってこれは夢だからな。目が覚めれば勝手に俺は、現実世界に帰ることができる」
楽観的にそう言う彼に、見知らぬ声は悲しそうな声で、
『いいえ、いいえ…………あぁ、時間が来てしまった。力無きあなたとは、再び会う術は無いでしょう』
「そうかもな。こんな可笑しな夢なんて、もう見ないだろ。そろそろ俺も早く起きて会社に行かないと、遅れちまうしな」
そう呟いたのと同時に、快斗の身体が眩しい光に包まれ始めた。
「うわっ、なんだこれ!眩しい!!」
思わず目をつぶった快斗に、焦りを含んだ見知らぬ声が叫ぶ。
『忘れないで下さい!どうかーーーどうか必ず生きて!そうすればきっと、いずれあなたのーーーー』
だが快斗の耳に、見知らぬ声はだんだんと聞こえなくなっていき、最後の言葉までは快斗の耳には届くことはなかった。
『ーーーいずれ、いずれあなたの娘がそちらに行くわ。次こそは、力の譲渡を必ず成功させてみせる』
『……私は絶対に、東の魔女を止めなければならない。そのためならば、何度でもーーーーーー』
以前正夢の力で暗闇に結衣が戻った際、西の魔女は言いました。
『次こそは、失敗しないといいのだけれど』
この言葉が指す本当の意味は、実は以前快斗に力の譲渡を失敗してしまったことから来ていたのです。
使命を与えられることなく、快斗は10年間異世界で生きてきました。
そして、ようやく報われる日がやってきた。
快斗、本当にお疲れ様でした。