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第二王子

 他国の王子の名前は、シュバイン・リーズベルト。

 白色の髪に赤色の瞳を持った、隣国リーズベルトの第二王子である。


 シュバインとフローラは所謂いわゆる、政略結婚というやつらしい。フローラ曰く、第一王子はもう結婚しているとのことだ。

 ゆえに兄は次期国王としてリーズベルト国を治めることになり、第二王子であるシュバインは隣国に嫁いで友好をはかりに来たのだ。


(で、やってきた王子はこれですか……クライン派の私から見れば、ただのうざそうな王子なんだけどな)


 しかし意外なことにこの王子、国民や兵士たちからの人気は高いようだった。

 聞けば兵士たちへの挨拶を忘れなかったり、孤児院に物資を提供したりしているのだとか。


(今の段階ではようするに、これから嫁ぐ先の国民たちに悪評たてられたくなくて色々やってるだけの気もするけどね……結婚後もこの行動が続行されれば本物だよ、うん)


 結衣が心の中で彼の行動を分析していると、王子の視線がフローラから結衣へと移った。


「おやフローラ、そちらは新しいメイドかな?」


「ええ、私の専属メイドなの。名前はユイよ」


 名前が紹介されたところで結衣は、王子にお辞儀をした。最敬礼のお辞儀についても、先程フローラから予習済みである。


「結衣と申します。以後、どうぞよろしくお願い致します」


 結衣の礼儀正しい挨拶に、王子は満足気な顔になる。ここで気分を害されては困るため、結衣は心の中でホッとした。


「シュバイン王子、彼女もバルコニーに入れて構わないかしら。私の専属メイドだし」


「ふむ……私の愛しいフィアンセの頼みだ。構わないよ、君も一緒に入ると良い」


(きっっっも!!!……まぁよし、あとは王子の護衛が誰なのかを聞き出せば任務完了だね)


「ご配慮感謝いたします。シュバイン・リーズベルト様」


 シュバインに礼を述べた後、小声で結衣はフローラを呼ぶ。

 メイドの方からいきなり王子に話しかけるわけにはいかないからだ。


「なぁに、ユイ」


「王子に一つ、質問があって」


「構わないわよ。王子、ユイが何か聞きたいみたい」


「何だい?」


案外すんなり聞けそうだと、結衣は歓喜する。


「明日のバルコニーに入る王子の護衛というのは、どなたですか?」


 護衛の方にも挨拶しておきたいので、と適当に理由も付け足す。


「ああ、それはね。分からないんだよ」


(……ん?分からないってどゆことだ?)


 結衣が怪訝そうな顔をしていると、シュバインが理由を教えてくれた。


「明日の護衛が誰なのかは、当日の朝に発表されるんだ。フローラの専属騎士である、クラインによってね」


「えぇっ!?クライン!?」


曲がりなりにも王族の専属騎士である彼の名を、呼び捨てにしていることも気付かず結衣は叫んだ。


「本当は私が決める予定だったんだが……先程クラインがここに来てね、自分に決めさせて欲しいと言ってきたんだよ」


「え!クラインがここに来たのですか?!」


 結衣とフローラの二人は、思わず顔を見合わせる。


(でも何で急に……というか、お城に戻ってたのかクライン。これは早急に彼のところに行かなくちゃ!)


「教えて下さりありがとうございました、王子。それでは失礼致します」


クラインが何を考えているのか、早く聞きに行かなければ明日の対策がたてられない。

そう結衣は焦り、フローラと2人で王子の元を去ったのだった。


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