普段とのギャップ
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互いに予期せぬ再会で、結衣もデウィールも一瞬硬直する。
が、我に返ったかのようにデウィールが声を荒げた。
「お前、あのときはよくもっ!!」
興奮しているのか、ガタッと席を立ったデウィールに、結衣は焦りを覚えた。
(えっ、どうしようこれマズいかも!)
結衣は以前城下町のとある店で偶然、無理やり連れて行かれそうになっている少女をデウィールから助けた。
プライドの高そうな彼のことだ。
少女如きに恥をかかされたと、根に持っているに違いない。
助けたことを後悔することは全く無いが、こんなに大勢の貴族の前で面倒事を起こすのはマズいと結衣は危惧する。
その上今日は今からシリウスとレオナの結婚式なのだ。そんな一生物の、大切な思い出に傷を付けるような揉め事は起こしたくない。
しかし、今いる場所は結婚式の始まりを待つ比較的静かな教会内。
そんな中、デウィールの声はよく通った。
「で、デウィール殿……」
「なんだっ!」
デウィールの隣に座る子爵が、恐る恐る彼に声をかける。
彼の目線に誘導されて、デウィールも釣られて目
をやるとーーー
「デウィール子爵、今の発言は少々ーーーいや、かなり聞き捨てなりませんが?」
公爵家に続き、教会内に姿を現した王族。
クライン・アルベルトが立っていた。
(クライン!)
「あ、あ…、あぁ……こ、これはクライン様!」
クラインはチラリと結衣の方に目を向けると、再びデウィールに向き直る。
「この教会の席が、前から貴族位の高い順に座っていることはご存知ですね?」
「は、はい!存じ上げておりますとも!」
突然の質問に、デウィールは即座に返答する。
「では彼女が子爵よりも前に座っていることが何を意味するかーーー分からないとでも?」
「いえそんな!存じ上げておりまーーーーー!!」
クラインの言葉に慌てたように頷くデウィールの顔が、サッと青ざめた。
そして自身の失言に今更ながら気が付いたような表情になる。
「彼女に対し、貴殿は“お前”と発言されていた」
「そ、それは……」
「まもなく式が始まる。後ほど、お話を伺わせて頂く。良いよな?」
有無を言わせぬクラインの迫力に、子爵は頷くしかない。
「くっ……畏まりました」
その返事を聞くと、クラインは結衣の方を向いた。
いつもとは全く雰囲気の違う彼の様子に、結衣は戸惑いを隠せない。
「ワタリ・ユイ伯爵、貴殿もそれで構わないか」
「はっ、はい!」
結衣も慌てて頷くと、クラインは止めていた歩みを再開し、王族の席へと進んで行く。
それに続くように、フローラやクラウディア、そして国王が姿を見せた。
そして皆が席に着いた頃、新郎の入場を告げるファンファーレが、軽快に鳴り響いたのだった。
(にしてもクラインのおかげで助かった……んですけども!)
普段結衣と接するときのクラインとは、似ても似つかないほどの違いに、結衣は本当に驚いていた。
(あれが、クラインの王族としての本来の姿なんだねーーーうん、ギャップありすぎだわ!!)
また一方で、驚くと同時に嬉しさもあった。
自分を仲間と認め、信頼してくれているからこそのあの普段なのだろうと、結衣は思ったのだ。
(改めて、クラインには感謝しなきゃね)
そんなことを思いながら、シリウスの入場を祝うべく席を立ち、心からの拍手を送ったのであった。
普段とは一味違ったクラインでした((((*゜▽゜*))))