後ろの席には
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「ではカイト、留守は任せたぞ」
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ、デヴィール様」
アクマデス家の屋敷から、当主を乗せた馬車が城下町の教会を目指して出発する。
それをお辞儀をしながら見送ったカイトは、馬車の姿が見えなくなるのと同時に行動を開始した。
「さて、と。これでしばらくは帰ってこないな」
今日はまもなくアルベルト家次期当主と、ハーヴェイ家次期当主との結婚式が執り行われる。
王家の結婚式のように貴族が全員参加する義務は無いが、彼らの貴族位の高さや社交的な性格が相まって、ほとんどの貴族が招待に応じ、若い彼らを祝福するべく教会へと集まっていた。
アクマデス家当主、デヴィール・アクマデスもその一人である。
「よし、探し始めるか」
周囲にメイド達がいないことを確認し、カイトは静かに当主の執務室へと入る。
不在時には鍵が掛けられるこの部屋も、その鍵は信頼されているカイトに預けられた。
それを想定していたのか否か、昨日シリウスからカイトは、結婚式で当主が不在の間なら探すことが可能だろうと提案されていたのであった。
内側から鍵を掛け、まずは一番怪しい執務机から探し始める。
「こういうときは、たいてい机の引き出しが怪しいよなーーーっと、それらしきものも二重底も無いか」
残念ながら、外れのようだ。
そこからは、ベットの下や中、ソファの隙間などの隠されていそうな場所を一つ一つ丁寧に洗っていく作業が続いた。
「残りはあの本棚ぐらいだな。あれから約2時間、あまりゆっくりもしてられないか」
端から順に本を調べて行くのでは、あまりにも時間が掛かってしまうに違いない。
そこでカイトは、ザッと本の題名だけを見ていくことにする。
「歴史書とかもあるけど、やっぱお金に関する本が多いな。さすがはデヴィール……」
彼の出世欲と金への執着が見て取れる本の種類の並びに、呆れざるを得ない。
するとそんなとき、彼の目に一冊の本が写った。
「ん?なんだこれ。“各国紅茶の茶葉辞典”?」
他の本の内容に比べて、これだけが異様に浮いている。その上貴族に転売しているものは、紅茶の茶葉である。これは明らかに怪しいと、カイトはゴクリと息を飲んだ。
やや緊張しつつその本を手に取り、パラパラとページをめくっていく。
「ーーーあ」
おそらく本の間に挟まれていたのだろう。
めくる拍子に、パラリと床に紙が落ちた。
高鳴る鼓動を落ち着かせながらそれを手に取り、中を開いて見るとそこにはーーー
「ーーー見つけたぜ、デヴィール!」
シリウスの推測通り、転売先の貴族の名前と売った日付、値段が書かれていたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そしてカイトが転売の証拠を探している頃、教会では大勢の貴族が見守る中、シリウスとレオナの式が始まろうとしていた。
晴れて貴族となった結衣も、先日仕立ててもらったあのドレスに再び身を包み、結婚式に出席している。
爵位の高い順に前の列から座っているため、結衣の席は侯爵家の一列後ろだ。
席には爵位の低い順に案内されるため、子爵家の後に案内の声が掛かった。
(この爵位のおかげで結婚式に参加できるんだもの。今回ばかりは、貴族で良かったって思えるよね!)
「こちらのお席にお座り下さいませーーーワタリ・ユイ様」
「あ、はい!ありがとうございます」
案内された席に座ろうとしたとき、後ろの列の貴族と偶然目が合う。
「ーーーあ」
「お、お、お前はあのときのっ!!!」
(待って……マジかこんな偶然。そう言えばこの人も貴族だったな)
結衣の後ろの列には、子爵位についている貴族達が座っているが、そのちょうど結衣の後ろに座っていた子爵はーーーあの、デヴィール・アクマデスであった……。
(正体バレたぁーーーっ!!)
結衣の正体、バレちゃった(*´Д`*)