決闘ーシリウスvsレオナー
新たにブクマ・評価・感想して下さった方々、ありがとうございます!
すっごく嬉しいですε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
その言葉と共に、5年前と同じくレオナが先に動いた。
それは過去の決闘を見ていたシリウスも予測していたようで、慌てずゆっくりと剣を構える。
(くっ、やっぱり隙なんて無いわよね!)
身長差を考慮した足狙いの攻撃を繰り出すレオナだったが、それが届かない位置を見切ったシリウスの回避によって失敗に終わった。
「5年前よりもまた速度が上がっているね」
「えぇっ!でも届かなければ意味がない!!」
ガッという音と共に、シリウスとレオナの木剣がぶつかり合う。
しかしやはり力の差は歴然で、シリウスは顔色一つ変えていない。
(ここはいったん距離をーーー)
次の手に移ろうと剣の力が緩んだその一瞬。
「キャッ!」
シリウスがレオナの剣に打ち勝ち、そのまま剣を前へと繰り出した。
その剣先を、身体にあたる寸前のところで回避したレオナだったが、体勢は崩される。
その隙を狙ったシリウスの剣が、再びレオナに襲いかかる。
「させないっ!」
「ーーーすごいねレオナ、これもかわすのか」
そこからはしばらく、剣の打ち合う音が場内に響いた。
互いが互いの速さと、剣の重さを確かめ合うような打ち合いが続く。
だがシリウスの重い剣撃が、レオナに得意の剣撃を打たせるのを許さない。
もともとレオナの剣撃は、近距離での激しい打ち合いにはあまり向いていなかった。
距離が近ければ近いほど剣を繰り出す勢いは衰え、また彼の重い剣撃を受け止めれば、手にある程度の付加がかかり、速い剣撃は打ちにくくなる。
だからこそ、初手と距離を取ることがとても大切だったのだ。
しかしそのどちらも、シリウスの重い剣撃が許さない。
「はぁぁーーっ!!」
「ーーーおっと、危ないなぁレオナ」
レオナは渾身の一撃を繰り出した後、シリウスがわずかに後ろに引いたのを見計らって距離を取り、体勢を立て直す。
そして、ゆっくりと一つ深呼吸をした。
(危ない、完全にシリウスさんのペースだわ。自分のやり方を思い出さなきゃ)
「レオナ、きみは確かに5年前よりも強くなっているし、腕も良い」
まっすぐに彼女を見つめながらシリウスは言う。
「……ありがとうございます」
「でも僕に勝つことは不可能だ。僕の剣撃を受け止めながら攻撃をするにはーーーその細い腕では力が足りない」
「……」
彼のもっともな指摘に、レオナは軽く唇を噛む。
10年前から憧れて、彼こそが剣士のトップだと確信してきた。
にも関わらず今、レオナはその彼を超えなければならないのだ。
「ーーーそうですね。確かに一本の剣でシリウスさんの剣撃を受け止め、そのまま攻撃に転じることは女の私には難しいでしょう」
「なら、引くのかい?」
ゆっくりと、でも一歩一歩確実に距離を縮めてくるシリウスを見ながら、レオナははっきりと首を横に振った。
「私はあなたに勝つと、10年前から決めてますから!」
その言葉に、シリウスはふっと微笑む。
「じゃあ僕も、そろそろ本気を出すよ」
そう言いつつ立ち止まると、シリウスは両目を閉じた。その突然の行動に、レオナは驚きを隠せない。
「まさか……」
「きみの速い剣撃に、もっとも素早く反応するために僕はーーー視覚を、捨てよう」
(シリウスさん、あなたはいったいどこまで強くなっていくのーーー?)
レオナが過去に比べて強さを増しているように、シリウスもより一層強くなっていることを実感する。
すでにこの戦いで本気を見せていたなら、彼女はきっと絶望していただろう。
(でもまだよ!それにシリウスさん、今回はその行動が仇となる!!)
「クライン!!」
突如、レオナがクラインの名を叫ぶ。
シリウスにはその意図が分からず、目を閉じながら僅かに眉を寄せたが、変わらず冷静さを失ってはいなかった。
(さぁレオナ、僕の今出せる最高の剣技できみを倒そう)
場内になびく風の強さや向き、レオナの存在感などを、シリウスは体全身で感じていた。
パシッと軽い音が聞こえると同時に、レオナの気配が動いた。
(ーーー来る!!)
ヒュンッと風に乗って、レオナの殺気を帯びた容赦のない剣が向かってくる。
ガッという音が響いて、レオナとシリウスの剣がぶつかった。
(……ん?先ほどよりも、レオナの剣の支えが軽い)
そう、シリウスが違和感を覚えたときだった。
突如再び生じた、殺気に似た気配。
だが、それはぶつかり合う剣のそれではない。
もはや剣士としての感だけで、とっさにシリウスは距離をとろうと判断し、身体を後ろへ下がらせようとしたーーーが。
「行かせないっ!!」
レオナ得意の速さによって、シリウスが後ろに下がるよりも速く。
「ぐっ」
一瞬シリウスには、何が起きたのか理解できなかった。
自身の剣とレオナの剣は、確かにぶつかり合っている。
ーーーが、今自分の首筋に感じる気配は、剣の存在。
ゆっくりと目を開いてみれば、首筋の剣はレオナによって寸前で止められている。
確実に今、勝敗は決したのだ。
「ーーーなるほど、双剣使いだったんだね」
「……えぇ、切り札は最後まで取っておかないとですから」
互いに見つめ合いながら、2人はお互いの剣を引いた。
こうして10年がかりの決闘は、レオナの完全勝利によって終結したのであった。
次回、決闘編が終わります('◇')ゞ