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マスコットの意味

新たにブクマ、評価、感想を下さった方々、心からありがとうございます!!


また、ネット小説大賞様より感想を頂くことができました♪

時刻は正午、少し前。

カタカタと車体を揺らしながら、一台の馬車が通りを走る。

豪華な装飾が施されたその馬車には、3人の貴族が乗っていた。


アルベルト家長男シリウスとその次男、クライン。

そして、もう一人の名はーーー。


「シリウスさん、本当に私もついて行って構わないのですか?」


「勿論だよ。見合いのときにも話したけれど、ユイさんは立派な当事者だ。僕とレオナの決闘を見届ける権利は十分にあるよ」


「フローラ様の側を離れるのは気が引けましたけれど。くっ、すみません私の中の野次馬精神がーーーあ、やば失言。何でもないです」


結衣の発言に、クラインは軽くため息を尽く。


「……まぁそれは、フローラに決闘を見せたくないっていう、俺の我が儘のせいだけどな」


いくら木剣での戦いとはいえ、フローラには本気の戦闘で、しかも知り合い同士のものを見せたくなかったらしく、クラインの強い希望によりフローラは王妃と共に城に留守番となったのだ。


(もう過保護だなぁ、クラインは。フローラ、愛されてますねぇ!)


プププッと笑う結衣をクラインは軽く睨みながら、目的地の王国闘技場が見えたことを伝えた。


闘技場内に入るとまだ他に人はおらず、どうやらレオナよりも先に到着したようだった。


サァァァと軽く風が吹き抜けて、場内を土埃が舞う。

初めて感じた異質な空気に、結衣は無意識のうちに身を震わせた。


「うぅ、何だかこっちが緊張してきたよ」


「俺は審判だから場内に残るが、国王とユイは観戦席から見ることになるぞ。まぁ、安全だから安心しろ」


「大丈夫だよユイさん。試合自体は木剣で行うからね、例え剣を受けても打ち身程度さ」


戦う当事者よりも緊張しきっている結衣を、安心させるようにクラインとシリウスは言う。


(まぁ場所と強さによっては気絶もするし、打ち身で済まされるなんて保証はまったくないんだけどね)


そんなことを思っていると、闘技場の入り口から人影が現れ、レオナが場内にやってきた。


「お待たせしてごめんなさい、皆さん。改めて今日はよろしくお願いするわね、シリウスさん!」


「ーーーっ?!や、やぁレオナ。体調は万全かい?こちらこそ今日は、手加減は無しで行かせてもらうよ」


レオナとシリウスが挨拶を交わす中、結衣はレオナの服装に見覚えがあることに気が付いた。


「その服装って、以前お会いしたときのーーー」


膝丈ほどの冒険者のようなマントを羽織り、レースなどが所々につけられた洋服は彼女の身体にフィットして、ボディラインが強調されている。

無意識にレオナの“ボンッキュッボンッ”なそのラインと自身のそれを比較して、結衣は軽くため息を付いた。


短いワンピースのような服装であるがゆえに、レオナは下に黒のアンスコのような物を履いているようであった。

チラッとクラインを横目に見れば、案の定顔を真っ赤にさせて目をそらしている。


(って、シリウスさんもよく見れば耳真っ赤じゃん!ふふーん?シリウスさん、これは内心平静じゃないな!)


「えぇそうね。あのときはちょうど修行の場から帰って来た時だったから。これは私の剣士の服装、軽装でとっても動きやすいのよ」


「いやぁ、根っからの貴族にしては随分意外な格好だったので驚きました」


「あぁそれはわざとよ。剣士でいるときの私は、貴族ではなくてただの自由な一人の女剣士でありたいの」


「な、なるほど」


ちなみにマントはレオナが修行に出る当日に、シリウスがくれたものらしい。


「れ、レオナ。その服装で決闘をするのかい?」


内心を顔に出さないように気をつけながらシリウスが聞くと、レオナは“もちろんです!”と頷いた。


「あ、でもこのマントだけは外すわ。これは、とても大切な物だから」


そう言いつつレオナが外したマントの裏を見ると、案の定そこには大量のマスコットが付けられている。

そんな結衣の視線に気が付いたのか、レオナは“かわいいでしょう?”とでも言うように微笑んだ。


「このマスコットはね、私が今まで倒してきたもの達そのものなのよ」


「え、どういう意味ですか?」


「剣士なら、誰もが感じ取ったことがあるもの。それは、命の重さよ。人を殺したことは無いけれど、魔物だって生き物だもの。その命を絶てば当然、その命を背負う責任があるわ」


「命の、重みーーー」


それは剣士ではないが、フローラ達を幾度も死なせてしまったという負い目を感じている結衣にも、少なからず共感できる話であった。


「そう。私は倒した魔物の形をしたマスコットを作り、それを常に身につけることでその責任を忘れることなく背負い続けているってことよ」


クラインとシリウスは既にマスコットの意味を知っていたらしく、同意するように頷いていた。


「なるほどーーーあれ、でも見間違いでなければ人型のマスコットもいるような……」


いや、見間違いではなく確実にいる。

しかもよく見ればそれらの一つに、金色の髪に水色の瞳をした男の姿のマスコットもいる。


(ーーーあれ、クラインに似てるんですけど……)


「あぁ人型の方は、私が勝った証みたいなものね。そっちはただのーーー趣味よ!!」


「……レオナ、やっぱりお前俺のマスコットまで作ってたのか」


はぁぁ、と半ば諦め顔でクラインは言う。


「もちろんよ!そして今日ここにーーーー」


そこまで言うと、改めてレオナはシリウスを見た。


「必ずシリウスさんのマスコットを加えてみせます」


「ハハ、それは余計に僕が勝たなければいけないね」


2人が互いに意志を固め合ったそのとき、闘技場の入り口から、国王が現れた。


「みな待たせたな、お互い準備はよいか?」


「「はい!」」


シリウスはクラインから木剣を受け取り、自分の決めた位置につく。

その後レオナもクラインにマントを預ける代わりに木剣を受け取った。


「あ、クラインちょっとお願いがあるの」


「ん?なんだよレオナ」


どうやら何か頼みがあるようで、クラインにしか聞こえない声でレオナは何かを話した。


「まぁそれくらいは別に不正にもならないし構わないが……レオナってそうだったか?」


「ふふっ、5年前とはまた違うってことよ!」


試合開始の正午まで、あと一分。

結衣と国王は観戦席へと移動し、クラインは2人から距離をとったところに立った。

当事者たちは互いに見つめ合いながら、開始の合図を待っている。


そしてーーー。


ゴーン


試合開始を告げる鐘が、大きく一つ鳴り響いた。

その鐘の音と共に、クラインが大きく息を吸い込む。


「ーーー決闘、始め!!」



先週はお休みしてしまって、ごめんなさい(..;)

来週はとうとうレオナとシリウス決闘開始!!


レオナがクラインに頼んだこととは一体ーーー?

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