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他国の服屋

更新が1日遅れてしまってごめんなさい汗

お詫びと言っては何ですが、いつもよりもボリュームは多くなっております(*^-^*)

翌日。エメラルド国創立記念のこの日には、毎年国をあげて感謝祭がとり行われていた。

普段は隣国からの入国は、審査を受け許可が下りなければ原則認められていないが、この日だけはその門が取り払われる。

ゆえに各国の商人や見物人達が、祭りで最も賑わいをみせる城下町に、こぞって訪れるのだった。


「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!隣国リーズベルトで有名な、手品師ネモとは俺のこと!」


「お、そこの奥さん!その洋服にとびきり似合うネックレスがここにあるぜ?!なんとこれ、貝から採れた輝く丸い石で出来てるんだ。珍しいだろ?」


城下町の中央広場では手品師が芸を披露し客を驚かせ、ある出店では自国で採れた珍しい装飾品を売っている。

そして他国だけではなく城下町の各店舗も、他国に商品をアピールする絶好の機会とばかりに熱を入れているようであった。


そんな中、大通りの道端に貴族街方面からやってきた一台の馬車が止まる。


「お嬢様、坊ちゃま、到着でございます」


「ありがと、ジィ!さぁお祭りに行くわよクライン!!」


「分かったから少し落ち着けってレオナ」


今にも外に飛び出していきそうなレオナを引き止め、クラインは言う。


「いいか、あまり貴族アピールすると悪い奴らに狙われる。だからお前の護衛も俺と執事だけで来た」


「うんうん、よぉーく分かってるよ!私は2人から離れるなってことでしょ?だいじょぶだいじょぶ!でもクラインだって貴族だよ。クラインの護衛はどうするの?」


レオナの言葉に、クラインはニッと笑って腰を指差す。


「俺はコイツがあるもん、問題ないぜ!もう8歳なんだ。自分の身くらい、自分で守れなくっちゃな」


(でもシリウスさんには負けてばかりだよね、クライン?まぁシリウスさんは剣の神様なんだから仕方ないけど!)


「…シリウスさんの弟だもんね!さぁ、今度こそお祭り行こうよ!!」


得意げに剣を自慢するクラインに、レオナは心の中でそう突っ込みながら彼の腕を引っ張り、馬車を降りる。

その2人の服装は貴族を連想させる物ではなく、どちらかと言えば庶民寄りの服装であった。


感謝祭の間、他国の者の入国制限を解放すれば、必ず悪巧みをする連中も紛れて入国してくるのが世の条理。

ゆえにこの服装も、少しでもそういった厄介事に巻き込まれないための工夫の一つであった。


こうしてレオナとクライン、執事の3人は、お祭りへと参加するべく歩き始めたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわぁすごい!この通り沿い、出店がいっぱい並んでるよ!!ね、ね、クライン。この通り見ましょう?!」


「はいはい分かったから、まずはーーーん、ほら」


「え、なぁに?その右手」


レオナの少し前を歩いていたクラインが突然立ち止まり、彼女に右手を差しのべている。だがレオナにはその意味が分からなかった。


「何ってお前なぁ…。こんな人混み、はぐれない自信あるのかよ」


「うっ…」


「ほら、早く見に行くんじゃないの?とっとと行くぞ」


そう言うと荒っぽく、でも加減した強さでクラインは、レオナの腕をガシッと掴み、ズンズンと歩き始める。

そしてその数分後。仲良く2人で手を繋ぎながら祭りを楽しむ彼らの姿を見て、後ろから優しく見守るレオナの執事は優しげに微笑んだのであった。


「あ、あそこ!あのお店のスイーツ食べましょう?」


「うわ、甘そう…俺はいいーーーってもう2つ買ってるし!」


「次はそこの髪飾りが売られているお店!ーーーねぇクライン、これどうかな。似合う?」


「レオナに髪飾りなんてまだ早ーーーちょっ、その構えは頼むからやめろ!似合う、似合うから!!」


クラインの返答を聞いたレオナの右手が、静かにデコピンの構えをしたのを見て、クラインは慌てて謝る。そして余程デコピンが怖かったのであろう。

すぐさまレオナが手に取っていたピンク色の可愛い髪飾りを、お詫びの印に自費で購入してプレゼントしたクラインであった…。


プレゼントされて満足したのか、レオナは軽くスキップしながら次のお店へと向かっている。


「あ、見て!他国のお洋服が売られているお店があるわよ!私、あそこ見てみたいっ!!」


「…はいはい」


そのお店は他国から来た商人がやっている即席の店で、色とりどりの珍しい女性物の洋服が並べられていた。


「いらっしゃいませ。お嬢様、坊ちゃま、お付きの方もようこそお越し下さいました。あいにく男性物は取り揃えておりませんが、どうぞごゆっくりご覧下さい」


「うわぁ、この服とっても素敵だわ!」


「宜しければ試着なさいますか?即席で申し訳ありませんが、試着する場も設けておりますので」


レオナの目が輝いたのを見て、店主がすかさず提案する。


「えぇ、ぜひ!」


レオナが頷いたのを見て、店主は彼女を試着のスペースへ誘導した。さすがについて行くことは出来ないので、クラインと執事は少し離れた所で待機している。


「では、ごゆっくりどうぞ」


レオナが中に入ると、静かにカーテンが閉められた。

彼女が試着したいと中に持って入った洋服は、水色の花柄ワンピース。胸元にワンポイントとしてエメラルド国では見かけない、白くて光沢のある丸い石が付けられているのが特徴だ。


「すみません。もうすぐ他のお客様が予約の品を取りに来られるので、準備をして参ります。何かありましたら、このベルを鳴らして下さいませ」


「ん?あぁはい、分かりました」


そう一言謝って店主は店の奥へと消えた。


彼女が着替えた姿を想像しながらクラインは待つ。

しかしいくら待てども、試着室のカーテンが再び開かれることは無かったのであった…。









「ーーーレオナ?」


彼女が試着の場へと姿を消して、すでに15分。

さすがに不審に思ったクラインが、カーテンの近くで名前を呼ぶ。

しかし、中からそれに対する返事は聞こえて来なかった。


「…おいジィ。少しーーーいや、確実にこれはおかしいよな」


「はい、坊ちゃま。お嬢様様には申し訳ありませんが、一度カーテンを開けさせて頂きたく存じます」


冷静さと丁寧な言葉使いは崩されていないが、その端々からは不安げな感情が見え隠れしている。


「悪いレオナ、開けるぞ!ーーーーっ!!」


カーテンを勢い良くシャッと開くと、そこにレオナの姿は無い。代わりに彼女が着ていた庶民寄りの衣服が、綺麗に折り畳まれて残されているだけであった…。


「嘘だろ…レオナ?おい、どこだよレオナ!!」


突如起こった緊急事態に、クラインの思考は停止する。


「坊ちゃま落ち着いて下さい!まだ時間はそれほど経っていません。今すぐお兄様の所へ行って、捜索協力をお願いして下さい。私は店主に用がありますので」


おそらくこういった状況にも幾度か遭遇したのだろう。レオナの執事によって、クラインに的確な指示が飛んでくる。


「わ、分かった!そっちは任せたぞ!!」


それだけ言うとクラインは、全速力で店を飛び出し兄の元へと走って行く。

一方執事は、店主を呼ぶべくベルを幾度も鳴らしてみるが、案の定店主が姿を現すことはなかった。


「私のかわいいお嬢様に目を付けたこと、地獄の果てまで後悔させてやるとしましょうか」


そう呟きながら試着の場に残されたレオナの衣服を回収すると、足早にあるじの捜索へと向かったのであった。


そしてまさかの次回に続く(;゜д゜)

…あっれ~。“過去編なんて一話で終わるさ!”とかほざいてたのは誰だろう(←私…)。


次回、確実に過去編は終結です♪

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