ハーヴェイ家のご令嬢
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アルベルト家。
そこは幾代にも渡り剣豪を排出してきた名家であり、その爵位は王族の次に並ぶ“公爵”の地位を国王から授かっている。その公爵の地位を持つ家は、このエメラルド国で2つだけ。
一つは言うまでもなくアルベルト家、そしてもう一つの家の名はーーー。
「こんにちはぁ!遊びに来たわよ、クライン!!」
屋敷の外に一台の馬車が止まるやいなや、馬車の扉が内側から勢い良く開いたかと思うと、中から一人の少女が姿を現した。そして屋敷の玄関の扉をこれまた勢い良く開いて、中に向かってそう叫ぶ。
「お、お嬢様!いくらご親戚の屋敷とは言え、もう少しハーヴェイ家のご令嬢らしく振る舞われて下さいませ!!」
その後ろから慌てるように馬車から降りてきた執事が、彼女の行動をすかさず注意している。
ちなみにこの一連の流れは日常茶飯事であるため、玄関で来客を出迎えているメイド達は、顔をしかめることなく微笑ましげに見守っていた。
元気良く屋敷にやってきた彼女の名は、レオナ・ハーヴェイ。ハーヴェイ家はアルベルト家と同様に“公爵”の地位を持つ家であり、なおかつ親戚でもある。そして彼女は、シリウスとクラインのいとこでもあるのだった。
そうこうしているうちに、屋敷の奥からクラインが姿を見せる。
「あっ、レオナじゃんか!また俺の剣技を見に来たのか?」
「コラッ、レオナお姉さんでしょ?私の方が2つも年上なんだからね!」
その言葉と共に、ピシッと軽い音がクラインの額に響く。
「ッテェーッ!!」
「ふふーん。私のデコピンに涙ぐんでるようじゃ、まだまだだわ!」
「な、涙ぐんでなんかないし!痛くなんかねぇもん!」
ガウガウと言い合う2人の後ろで、先ほどの執事がハァ、と深い溜め息をついた。
「お嬢様…今日はクライン坊ちゃまにお願いがあったはずではないですかな?それなのに喧嘩などなされては…」
その言葉に、レオナはハッとしたような顔になる。
「わ、分かったわよジィ」
2人が落ち着いたところで、立ち話も何だからと場所を客間に移動した。
「で?俺にお願いって何だよ」
クラインの問いかけに、レオナは指をもじもじとさせながら話し始める。
「あ、あのね。もうすぐクライン、修行のために国外へ行ってしまうでしょう?その前に、思い出作りがしたくって…」
「あぁ。明後日には初めての登城を済ませて、その翌日には出発だったかな」
一度修行に出てしまえば、最低でも2年間は顔を合わせることは出来なくなってしまう。修行の場所は国外にあるため、安易にレオナの方から会いに行くことすら不可能であった。
(詳しくは、第2章後の番外編をどうぞ!)
「それでね、明日は感謝祭の日だから…えと、クラインがお祭りに興味が無いのは知ってるんだけど…その…」
レオナの言葉に、クラインは彼女の心情を察してポリポリと頬をかく。
「ーーーわかったよ、俺も行く」
クラインの返答を聞いた途端、レオナの表情がパァァッと明るくなった。
「ほんと?!本当なのね!!約束よ、クライン!!」
「…まぁ、会えなくなるのは寂しいしな。思い出作りも悪くない」
レオナの気持ちを思い、そうクラインは呟いたのだった。
しばらく2人で話していると、コンコンと部屋の扉を叩く音が響き、扉からシリウスが姿を見せた。
「あっ、シリウスさん!」
「やぁレオナ、来てたんだね。いらっしゃい」
シリウスが現れた途端、レオナの声が軽く上擦る。
「あの、実は明日の感謝祭にクラインと行く話をしてて…よければシリウスさんも一緒にどうですか?」
「明日?ごめんね。僕は感謝祭の間、街の見回りを任されているから…」
申しわけなさそうなシリウスの声に、レオナは慌ててぶんぶんと手を横に振った。
「ううん、大丈夫です!何も考えずに誘ってしまって、私こそすみません。お仕事頑張って下さい!!」
「ありがとう、レオナ。明日は楽しんでね」
「は、はい!」
仕事があるからと言って、シリウスが部屋を立ち去った後もしばらく、レオナはポワワーンとしていた。
なぜならレオナにとって、シリウスは憧れの存在であるからだ。
容姿端麗、優しくて他人想いの性格。そして、剣豪と呼ばれるに相応しい剣の腕。
彼の全てが、レオナには輝いて見えていた。
しかし、その思いに恋愛感情は微塵もなかった。彼女にとってシリウスは、言わば神様のような存在であるからだ。
神様に対して恋愛感情を抱かないそれと同じである。
(シリウスさんが剣で負けるところを見たことが無いし、彼に出来ないことなんて、きっと何も無いに違いないわ!だってシリウスさんは、私の神様なんだもの!!)
こうしてクラインと一緒に感謝祭へ行く約束をしたレオナは、満足そうな表情でアルベルト家を後にしたのだった。
一話に収まらない気配を感じ取ったので、次回に続きます!
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