広まる噂
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今回はいつもより短めです。
そして翌日。昼下がりの城下町の酒場では、とある噂話で持ちきりだった。
「おい聞いたか、とうとうあのアルベルト家の長男が見合いをすることにしたらしいぜ?!」
「マジかよ、あの見合いを断り続けることで有名な長男がか?!相手はどこの令嬢だ?」
「さぁ、俺もよく知らねぇんだわ」
「こりゃあ他の令嬢達が、躍起になって探しそうだな」
“おお、怖い怖い”と言い合いながら、2人の男達は噂話を酒の肴に盛り上がる。
城下町の道端でも、この噂で持ちきりであった。
「ねぇちょっと聞いた?アルベルト家の長男、とうとうお見合いするそうよ!」
「まぁ!一体どこのご令嬢がハートを射止めたのかしら?!」
「それが非公開らしいのよね…」
「非公開?何それ、ちょっと本命っぽい雰囲気じゃないの!!」
キャーキャーと黄色い声を上げながら、奥様方は顔を見合わせ語り合う。
「「男好きじゃなかったのねぇ、ウフフ!」」
一方城下町の貴族街、とある公爵家の屋敷にて。
「ジィ、今日は何か面白い報告はあるかしら?」
「そうですなぁ、最近城下町に出来たという“クレープ屋”なるものが大人気だということなどは、いかがですかな?」
「“クレープ”?何かしら、聞いたこともない言葉だわ。そんなに大人気なら、今度ぜひ食べてみたいわね!他にもある?」
すると“ジィ”と呼ばれた初老の執事は少し考えるような仕草をして、
「そういえば用事を済ませに城下町へと出向いた際、ある噂話を耳にしましたぞ」
「噂話?」
「はい。どうやらアルベルト家の長男が、どこかの令嬢と見合いをするのだとかーーー」
「嘘っ!!」
勢いよく立ち上がったせいか、ガタッと音を立てて椅子が倒れる。
「どうかなされたのですかな?お嬢様。いきなり取り乱されるとは珍しい」
「…ジィ、その噂は本当なのかしら」
「あくまで噂話ですからな。やや信憑性には欠けますが、恐らく本当のことではないかと」
「…お相手はどちらのご令嬢なの?」
静かな声で尋ねる彼女に、執事は申し訳無さそうにして、
「どうやらお相手の名前は伏せられているようでして…」
「…そう、なのね。ごめんなさい、少し一人にしてくれる?」
「ーーーかしこまりました、お嬢様」
一礼をして、執事は部屋から立ち去る。
彼女はそれを見届けると、静かに窓の外を眺めた。
窓から見える景色はどれも、数年ぶりに帰郷した彼女にとって、久しぶりに見る街並みだ。
だが数年前と何ら変わり映えのしない景色に、彼女は少しため息をつく。
「街並みはこんなにも変わっていないのに、人の心は変わってしまうものなのかしら…」
そう寂しげに呟く彼女の脳裏には、思いを寄せる一人の青年の笑顔が、映し出されているのだった。
最後のご令嬢の名前はきっと…(*^^*)
次回、結衣のお見合いがスタートです!
どうなるどうなる?((((*゜▽゜*))))




