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結衣の3分クッキング

“またお使い編始まったよ、どんだけお使い好きなんだ作者!”とお思いのそこの読者様!

仰るとおりでございますデス。ですがこれにもきちんと理由があるのでご安心下さい!


↓後書きへ続く

「お・じ・さーん!」


「ん?見かけない服…いや、その顔はこの前のメイドの姉ちゃんか!」


ルンルン気分でクリーム巻きの露店の所まで来た結衣は、果物を持っていない方の手でおじさんにぶんぶんと手を振りながら声を掛けた。

どうやら彼も結衣のことをまだ覚えていたようだ。


「はい、先日のお礼と約束を果たしに来ちゃいました!というわけでおじさん、美味しいクリーム巻き一つ下さいな」


「おおっ、ありがとよ。はい、出来たてだから気をつけて食べな」


銅貨1枚と交換で、結衣の手元にふわっふわのクリーム巻きがやってきた。


(さて、まずは定番のイチゴとバナナでいきますか。あ、でも桃も美味しそうだし…)


クリーム巻きをじっと見ながら動かない結衣の様子に、おじさんは怪訝そうな表情になる。


「どうした、食べないのか?」


「いえ、食べますけどその前におじさん、実は一つお願いがあるんです。調理台を少し貸してもらえませんか?」


「…は?いや、理由にもよるがどうしてだ?」


(まぁそりゃそうか。調理台は商売道具みたいな物だし、理由も無しに貸したくはないよね)


でも言い方に気をつけなければ、このクリーム巻きにケチを付ける人のように聞こえてしまうので要注意だと、結衣は心に留める。


「実はこのクリーム巻き、このままでも美味しいですが、ある物を加えることによって美味しさが格段に増すのです!!」


「そ、そんな物があるのか?!」


結衣の突然の発言に、おじさんは驚きを隠せていない。そして興味を持ったのか、こころよく調理台を貸してくれた。


(結衣の3分クッキング~!チャララッチャラララン)


脳内であの曲を再生させながら、結衣は調理台に立つ。そして数種類ある果物の中から、イチゴとバナナを取り出した。


「実はこの果物を使うんです。今回は試しにイーチゴとバナーナを使いますね」


「果物…まさか本当にそんな物がこのクリーム巻きをより美味しくさせるのか?」


「させるんです!まずはイーチゴとバナーナを適当な大きさに切っていきます。あ、このときなるべくスライスするみたいに切って、高さを低くするのがオススメです」


そうすることによってクレープ全体の厚さが薄くなり、手で持って食べるときにも困らなくなるのだ。


「そしてこうして果物が乗っている部分が見えるように、生地を三つ折りにして…最後に生地の下の尖っている部分を軽く上に折り曲げてあげればーーーはい、クレープの完成です!」


あまりにも早く完成した“クレープ”という食べ物におじさんは戸惑っているのか、しきりに首を傾げている。


「ほ、本当にこれだけでクリーム巻きがより美味しくなったのか?」


「まぁまぁ、じゃあ試しにこれ食べてみてください!」


そう言って結衣はおじさんに、今完成したばかりのクレープを渡した。


「いやだがこれは姉ちゃんのーーー」


「あ、大丈夫です。まだまだ果物はたくさんあるので大丈夫です!」


そう言いながら結衣がかごいっぱいの果物を見せると、よほどクレープの味が気になっているのだろう。おじさんはゴクリと喉をならすと、クレープにガブッと噛みついたのだった。


もぐもぐもぐ、と味をかみしめるように無言でクレープを食べ続けるおじさん。


(え、何なの美味しいの?美味しくないの?何とか言って欲しいんですけどーーつ!)


とうとうおじさんは、最後の一口を食べ終えるまで一言も喋ることはなかった。


「ーーー姉ちゃん」


「は、はい…」


恐る恐る返事をすると、おじさんは結衣にニコッと笑顔になって、


「めちゃくちゃ美味しいじゃないか!新鮮な果物の味と甘いクリームが絡まり合って、甘いだけのクリーム巻きから進化している!!」


「良かった!気に入って頂けたみたいですね!」


ここは異世界であるから、味の感覚が違うことも今更ながら、十分あり得た。そのためクレープを気に入ってもらえたことに、結衣は少しホッとしたのだった。


「あぁ、これはきっとみんな気に入るぞ!クリーム巻き屋からクレープ屋に変更したいくらいだ!!…まぁこれは姉ちゃんが教えてくれた物だから、そんな勝手なことはしないけどな。でも誰が教えてくれたんだ?」


「えーーーっと…私の故郷に似たような食べ物があったので、クリーム巻きにも合いそうだなぁと…アハハ」


「なるほど、そうだったのか」


(嘘は付いてないよ、うん。これ以上突っ込まれたらヤバいけども…)


それに、と結衣は付け足す。


「別にクレープを売っても大丈夫ですよ。故郷でしか売ってはいけないという決まりは無いですし、そもそもそのつもりで色々な種類の果物を持って来ましたから」


「い、良いのかい?!」


驚きと興奮を隠せていないおじさんに、結衣は笑顔でしっかりと頷いた。


(だってそしたらいつでも好きなときにクレープを買いに来られるしね!)


結衣の心中など知るはずも無いおじさんは、早速色々な種類の果物を試してみると意気込んでいる。


「じゃあまた今度買いに来ますね。おじさんのクレープ、楽しみにしてます!」


「あぁ、姉ちゃんならいつでもタダにするよ!またぜひ来てくれ!!」


こうしてクレープを異世界でいつでも食べることが出来るようになった結衣は、ルンルン気分で本当の目的である“仕立て屋ミュトス”へと向かうのだった。



後日このクレープ屋の人気が爆発し、伝授した謎の少女を一目見たいと大勢の人が探し始めることなど、このときの結衣はまだーーー知らない。



え、クレープの下り回収したかっただけじゃないのって?


…そ、ソンナコトナイデスヨ!ちゃんと他にも理由ありますから!(←本当)

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