お小遣いの使い道
明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします♪
そして…
新たに感想を書いて下さった方、本当にありがとうございますε=ε=(ノ≧∇≦)ノ新年早々、ものすっごく嬉しいです!
朝食が終わり、それぞれが食事の間を後にし始めたとき、アイヴァントが結衣に声を掛けてきた。
「ユイよ、今日の午後に予定は何か入っておるか?」
「いえ、午後は特に急ぎの用事もありませんが…」
今日の午後フローラは勉強の予定が入っているため、お昼過ぎからの予定は特に無い。普通のメイドであれば仕事が無いなどということは起きないのだが、何せユイは専属メイド。他のメイドと同じような雑務をこなす義務は無いのだ。
それに、と結衣は思う。
(この前ちょっと手が空いたときに忙しそうなメイドさんのお手伝いをしようとしたら、顔を真っ青にして拒否されちゃったし…私、怖がられるようなことしたかなぁ)
そう思いちょっぴりショックを受けた結衣だったが、実は別に結衣を恐れた訳ではない。
皆、結衣に手伝ってもらうことでフローラ姫の身の回りの世話に支障をきたすことを恐れているのだ。
まぁ何はともあれそんな訳で、午後の結衣はこの上なく暇なのであった。
「それは良かった。ならば今日の午後に、城下町にあるこのお店を訪ねてみなさい」
そう言ってアイヴァントが渡してきた紙には、“仕立て屋ミュトス”というお店の名前と、そこまでの地図が書かれている。
「…え、これどう考えても服屋ですよね?!私、洋服買うようなお金も予定も無いのですが…」
「やれやれ、お主も晴れて立派な貴族の一員となったのだ。きちんとした服の一着や二着、持っておらねば後に困るぞ?金に関しては心配無用、貴族になった祝として贈るつもりだからな」
ニコリと良い笑顔で微笑んで来るアイヴァントの様子に、どうやら拒否権は無さそうだと結衣は察した。
(こうなったらお店で一番安い服、選ぶしかないな…)
ここで一番高い服を買おうとしないのは、結衣の貧乏性故なのであろう。
結衣は一つ大きくハァと溜め息をついて、浅くアイヴァントに頷くが、このときアイヴァントとシリウスが、互いに目を合わせてニヤリと不敵に微笑んだことには、全く気付くことができないのであった…。
そして時は過ぎて昼食後。お金を持って行く必要は無いからと言われ、結衣は手ぶらで城下町へと向かうことにする。フローラの部屋にいた結衣だったが、まもなく勉強の時間となるため、少し出掛けることをフローラに伝えて部屋を出ようとした。
「あらユイ、どこかへ出掛けるの?」
「うん、なんかアイヴァント様に言われてちょっと服屋さんにね」
「そうなの、じゃあちょっと待ってくれる?」
そう言ってフローラは自分の机の引き出しから何かを取り出し、結衣の所に戻ってきた。
「はいこれ、少しだけどお小遣いよ!ユイはまだお給料日が来てないから、お金持っていないでしょう?」
「え、でもこれフローラのお金じゃ…」
「ううん、これはお父様から預かっているユイのお小遣いなのよ。せっかく城下町にお出かけするんだもの、好きなものを買ってきたら良いと思うわ」
(うーん、申し訳ないなぁ。で、でもこのお金があれば果物が買える!!果物があれば、そうーーークレープが完成する!!)
あのふわっふわなクリーム巻きの生地と甘くて美味しいクリームの間に、色とりどりの季節の果物がプレスされる。
そしてその完成したクレープをパクッと一口かじればーーー想像しただけでよだれが出そうになる。
自然と結衣の喉がゴクリ、となった。
「じ、じゃあお言葉に甘えて頂いて行くね。ありがとう、フローラ!」
クレープ完成という魅惑に負けて、結衣はお小遣いを受け取ったのだった。
「じゃ、行って来まーす!フローラも勉強頑張ってね!!」
「えぇ、行ってらっしゃい!」
パタリと扉が閉まり、部屋にはフローラだけが残る。
「うふふ、あんなにウキウキするなんて。ユイったら、よっぽど買いたいものがあったのね!」
そう笑いながら、フローラも良き王妃となるための勉強を、気を引き締めて始めたのだった。