シリウスの見合い話
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窓から見える空の色が徐々に赤らみ、太陽が顔をのぞかせ始める。そんな朝焼けの空を見つめながら国王であるアイヴァントは、重苦しい空気の中で口を開いた。
「ところでシリウスよ…そなた、また見合い話を断ったそうではないか」
「っ!な、なぜそれを…」
見合い話という単語に、シリウスの顔色が見るからに悪くなる。反対に部屋の重苦しい空気は、自然と霧散していった。
「え、また断ったのかよ!!これで一体何十回目だ?」
「お前の両親がぼやいておったぞ?“あぁ…とうとう弟に先を越されてしまった…”とな」
「うっ…」
口ごもったシリウスに、アイヴァントとクラインは揃って深くため息をつく。
そう、普段はブラコンの印象が強すぎて忘れられがちであるのだが、シリウスは名高き剣豪アルベルト家の長男だ。そして、年齢は現在なんと23歳!
いわゆる、結婚適齢期をとうに迎えた良いところの坊ちゃんである。しかも職も安定しており、顔立ちも良い。
これだけの高物件のシリウスがモテないはずもなく…成人である18歳の誕生日から、彼の元には幾十枚もの見合い写真と縁談、パーティーへの招待状が絶えることなく届けられていた。
しかし、シリウスがそれらの話を承諾したことは一度も無い。パーティーには出席しても、そこで投げかけられる告白の数々を断り続ける彼の態度に、若き淑女の間で流れた噂は、既に想い人がいるのではないかというもの。まぁ、数年はそれで納得されていたのだが…
何年過ぎても彼の見合い話を聞かないため、噂は徐々に尾ひれが付きまくっていき…仕舞いには、
1、ブラコン過ぎて、弟と結婚したいと思ってる
2、男好き
3、熟女、もしくは幼女趣味
ちなみに1が最有力候補であるのは言うまでもない。
「いい加減諦めたらどうなんだ?あれからもう5年、連絡すら無いんだ。これ以上待っても帰って来るのかすら分からねえだろ」
「そうだぞシリウス。わしは理由をよく知らぬが、せめて理由だけでも公開せねば…既にお主の間違った性癖が、一人歩きしておるぞ」
アイヴァントとクラインがそう言うも、シリウスはただ首を横に振るばかり。
「…申し訳ありません主。僕の待つ女性は、いつ帰って来るのかも分からず、帰って来たとしても“ある約束”を果たさない限り、彼女とは結婚しないと決めております。主にはその時がやってきましたら、彼女と共にご紹介したいのです」
意味深な言葉の真意を知るのは、シリウスの横にいるクラインだけだ。最も彼がそれを知っているのも、そのシリウスと女性との“ある約束”に関与しているからなのであるが。
決して譲れないという意志を持った瞳を見返して、アイヴァントは再度深いため息をつく。
「ならばそれを黙認する代わりとして、代案を飲んでもらうとしようか」
「代案、ですか?」
アイヴァントは頷くと、執務机の上に置かれた数十冊の束をシリウスに渡した。
「これらは…見合い写真?!」
「その中から一人を選び、見合いをせよ。なに、形式上の見合いをすれば良いだけだ。相手には何か適当な理由でも付けて、見合いの後に断れば良い」
「僕が“誰を選んだか”という事実だけでも、十分に影響を及ぼすことを知っておられながら…主もお人が悪い」
興味なさげに束を読み流していたシリウスの手が、突然止まる。そして、ハッとした表情でアイヴァントを見た。
「…本当に、この中から一人を選んで見合いをすれば、今後僕の見合いに関して黙認して頂けるのですね?」
「あぁ、勿論だとも。わしは確かにそう言ったからな」
アイヴァントがニヤリと笑う。その顔を見てシリウスは、フッと軽く息を吐いた。
「お心遣い、感謝致します。やはり、主はお人が悪いようですね」
「何だよシリウス、どういう事だ?」
一人頭にハテナマークを浮かべているクラインに、笑いながらシリウスは束の中からその一枚を取り出す。そこに写る顔を見て、クラインも即座に理解した。
「なるほどな!確かに彼女なら問題ねぇわ。だって
…」
その見合い写真に写る見知った顔に、クラインもニヤリと笑い返したのだった。
(きっと…いや、必ず彼女は約束を果たしに帰って来る。そうだよねーーーーーレオナ)
12月、1月は更新頻度が下がります汗
都合により申し訳ありません。でも週1は必ず更新しますので、気長にお待ち頂ければと思います♪よろしくお願いします!